タンゴのアーティスト(5) 「オスバルド・プグリエーセとその系譜」その2

オスバルド・プグリエーセ楽団が結成されてから、その活動を安定させるまでの流れを見てみよう。

 1939年8月、カフェ・ナシオナルにてデビュー
 1941年、エル・ムンド放送局にレギュラー出演開始
 1943年7月、オデオンに初録音

この間にメンバーも固まっていく。当初第1バンドネオンを担当していたエンリケ・アレシオは44年に脱退し(その後自分の楽団を作った)、オスバルド・ルジェーロ(1922〜1994)が後を継いだ。結成当初(17歳だった)からのメンバーであるルジェーロは、1968年に脱退するまで20年以上の長きにわたりプグリエーセ楽団の第1バンドネオン奏者を務め、その後は一緒に脱退した仲間たちと作ったセステート・タンゴ(詳しくは次回以降)で、亡くなる直前まで第1バンドネオンを弾き続けた。ルジェーロはその長い演奏家人生を、二つの楽団のみで過ごしたのである。火の出るような豪快なルジェーロのバンドネオンは、プグリエーセ楽団の大看板だったわけだが、その独特なスタイルは、楽団の中で編み出され、練り上げていったものとしか言いようがない。プグリエーセ楽団の大きな特徴の一つは、内部に有能な作曲家を揃えていたことだが、もちろんルジェーロも例外ではなく、「N.N.(エネ・エネ)」「パラ・ドス」「ボルドネオ・イ・900(ノベシエントス)」「ロクーラ・タンゲーラ(タンゴの狂気)」といった傑作を残している。

ルジェーロをサポートしたバンドネオン陣にも、優秀な人材が去来した。1943年から54年まで在籍したホルヘ・カルダーラ(1922〜1967)は、いずれもPで始まる「パストラル」「パテティコ」「パシオナル(情熱)」といった印象深い作品を残している。カルダーラは、ブエノスアイレスを訪れプグリエーセ楽団の演奏に衝撃を受けた早川真平・藤沢嵐子夫妻に請われて1954年に来日、1年近く滞在して、演奏活動や後進の指導に当たった(石川浩司氏のHP「タンゴの部屋」にあるカルダーラがラジオで演奏したバンドネオン・ソロの曲目表も参照のこと)。帰国後は自己の楽団を率いて、数は少ないながら充実した録音を残していて、その中にはプグリエーセ風の自作曲「プグリエセアンド」も含まれている。ウーゴ・バラリス(vn)、アルマンド・クーポ(p)、キチョ・ディアス(b)と組んだエストレージャス・デ・ブエノスアイレスも忘れ難い。

カルダーラに代わって参加したマリオ・デマルコ(1917〜1970)は、プグリエーセ楽団参加以前に十分なキャリアを積み、傑作のひとつ「エントラドール」は、既に1952年にプグリエーセ楽団に取り上げられていた。デマルコはアルフレド・ゴビ楽団を経て、1951年に自己の楽団を結成している。ゴビやプグリエーセの影響を強く受けたデマルコ楽団は、1954年に解散。デマルコはフリオ・デ・カロ楽団、そして再びゴビの楽団に短期間在籍した後、プグリエーセ楽団に迎えられたのだった。在籍した59年までの5年間に、編曲者としても重要な役割を演じたほか、作曲家として「パタ・アンチャ」を提供している。独立後は歌手エドムンド・リベーロの伴奏などで活躍したが、病魔に襲われてしまった。ほかの作品に、最近小松亮太がオルケスタ・ティピカで取り上げている「ソルフェアンド(音階練習しながら)」がある。

1955年から1960年まで在籍したイスマエル・スピタルニク(1919〜1999)は、オラシオ・サルガン楽団などへの参加経験があったが、それ以上にアレンジャーとして優れ、アニバル・トロイロ楽団やアルフレド・ゴビ楽団に重要な編曲を提供していた。プグリエーセ楽団でも、デマルコ同様に編曲面で大いに貢献した。作品に「ビエン・ミロンガ」「フラテルナル」「プレセンシア・タンゲーラ」などがある。プグリエーセ楽団を抜けた後はほとんど引退状態だったが、1991年に突如カムバック、セプテート・ビエン・ミロンガを率いての録音を行い、ファンを喜ばせた。

この項続く


Osvaldo Pugliese y sus muchachos
リハーサルでマエストロを囲むプグリエーセ楽団のバンドネオン・セクション(1959年)
(左から)ビクトル・ラバジェン、マリオ・デマルコ、オスバルド・プグリエーセ、オスバルド・ルジェーロ、イスマエル・スピタルニク


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