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小編成のもっとも規模が小さいものはドゥオ(スペイン語で二重奏。英語ではデュオ)だが、これは気心の知れたミュージシャン二人がその気になれば、原則的にはどんな組み合わせも可能だろう。演奏者自身の楽しみや余興の範囲に留まったものが多いため、意外に残されたレコードは少ないのだが、昔から随分いろいろなコンビが存在した。バンドネオン×2(ペドロ・マフィアとペドロ・ラウレンスなど)、ギター×2(ラス・ギターラス・デ・オロなど)、ピアノ×2(オスバルド・ベリンジェリとオスバルド・タランティーノなど)のように同じ楽器の組み合わせもあるし、バンドネオン+ギター、バンドネオン+ピアノ、ヴァイオリン+ピアノ、ピアノ+ギターといった比較的オーソドックスなものから、ヴァイオリン+オルガンとか、ヴァイオリン+コントラバスのように風変わりなものまで実に多彩である。
コンフントの基本といえば、やはりトリオ(三重奏。スペイン語も英語も同じ)だろう。タンゴのトリオ編成というと、現代ではバンドネオン、ピアノ、コントラバスの組み合わせがまず思い浮かぶが、これはそれほど歴史のある編成ではない。正確な記録がないが、ウルグアイのピアノ奏者セサル・サニョーリ(写真参照)が、ブエノスアイレスでのいくつかのオルケスタ・ティピカでの演奏活動を終えて帰国した1954年にバンドネオンのルイス・ディ・マテオらと組んだトリオが、恐らく最初ではないかと思われる。レパートリーは古典曲が中心で、特にモダンな指向を持っていたわけではないサニョーリ・トリオだが、がっしりと骨太で重心の低い演奏は、それまでの古典指向のコンフントのそれとは明らかに異なっていた。
その後ブエノスアイレスでもこの編成のトリオがいくつも登場するようになったが、技術的にも音楽的にも特に秀でていたのは、1970年に結成されたトリオ・フェデリコ=ベリンジェリだろう。バンドネオン奏者の最高峰に位置するレオポルド・フェデリコ、トロイロ楽団出身でジャズの素養もあるテクニシャンのオスバルド・ベリンジェリにコントラバスのフェルナンド・カバルコスという顔合わせのこのトリオによる凄みのある演奏は、この編成でどこまで音楽的に豊かになれるかという実験のようでもあった。また、演奏と編曲の両面における斬新さという点では、やはり70年代に活躍したバングアトリオ(オマール・バレンテp、ネストル・マルコーニbn、エクトル・コンソーレb)も忘れ難いし、ピアソラ以降のモダンな感覚を追求したトリオとして、モサリーニ=ベイテルマン=カラティーニ(80年代にパリを拠点に活躍)の存在も重要である。
バンドネオン+ピアノ+コントラバス以外にも、バンドネオン+ギター×2(シリアコ・オルティス・トリオ、このトリオは歴史が古い)、バンドネオン+ギター+コントラバス(エドゥアルド・ロビーラ・トリオ)、ピアノ+ギター+コントラバス(タンゴスール・トリオ)、ピアノ+ヴァイオリン+コントラバス(エル・タンゴ・ビーボ+近藤久美子)など様々な組み合わせのトリオが存在するが、どれもあまり一般的とは言えないだろう。
クアルテート(四重奏。英語でクァルテット)となると、組み合わせのパターンは更に増えるが、バンドネオン+ピアノ+コントラバスのトリオにもう1つの楽器が加わるパターンが多い。やはり特に多いのはヴァイオリンが加わった編成で(つまりこれでオルケスタ・ティピカを構成する最低限の楽器が揃う)、エストレージャス・デル・タンゴやレイナルド・ニチェーレ四重奏団などが代表格。また、エレキ・ギターが加わったものとしては、アニバル・トロイロ四重奏団(前回ご紹介したトロイロ=グレラ四重奏団とは別物)などがある。トロイロ=グレラ四重奏団のようにバンドネオン+ギター×2(もしくはギターとギタロン〔大型の低音ギター〕)+コントラバスという編成(フェデリコ=グレラ四重奏団など)もあれば、フルートやチェロなどが加わったものもありと、やはり例を挙げていったらキリがない。また、クラシックの弦楽4重奏と同じヴァイオリン×2+ヴィオラ+チェロという編成の、プリメール・クアルテート・デ・カマラ・デル・タンゴというグループもあった。
(この項続く)

トリオを率いてモンテビデオ大学で演奏するセサル・サニョーリ(1961年) ピアノの向こう側、横顔が見えるのがルイス・ディ・マテオ(バンドネオン)。
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