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最近のタンゴ・ファンに最も親しまれているコンフントと言えば、やはりアストル・ピアソラ五重奏団(五重奏団はスペイン語でキンテート、英語ではクィンテット)にとどめを刺すだろう。いくつものアンサンブルを作っては壊したピアソラにとって、バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、エレキ・ギター、コントラバスという五重奏団(1960年結成)は最も理想的な編成となり、長い期間にわたって安定した活動を続けることになった。ピアソラは五重奏団結成後も、八重奏団(ヌエボ・オクテート、1963年)や九重奏団(コンフント・ヌエベ、1971〜72年)など、より編成の大きなコンフントを率いての活動も行っているが、これは五重奏団に楽器を増やしたものである。逆に五重奏より少ない編成では活動することはなかった。このことからも、五重奏がピアソラにとっての基本だったことが判る。
ピアソラ五重奏団の登場以降、ピアソラの後を追って、いくつもの同じ編成の五重奏団が登場し、今日に至っている。最近のものでは、モサリーニ=アントニオ・アグリ五重奏団(ギターはエレキではなくアコースティック)や小松亮太&ザ・タンギスツ(彼らも自由自在にその編成を変えるが、やはり基本は五重奏にあると見るべきだろう)などがお馴染みだろう。だが、この編成の五重奏は、ピアソラが最初に始めたわけではなかった。ピアソラ五重奏団の結成に先立つ1年前の1959年に誕生したキンテート・レアル(現在はヌエボ・キンテート・レアルとして活動中)が、その先駆である。
同じ編成といっても、キンテート・レアルとピアソラ五重奏団とでは、その音楽的構造がかなり異なるのが面白い。そもそもキンテート・レアルは、オラシオ・サルガン(ピアノ)とウバルド・デ・リオ(エレキ・ギター)のデュオをベースに生まれたグループなので、五重奏になっても、あくまでもサウンドの要はピアノとギター。そこに他の楽器が絡んで来る感じで、例えばバンドネオンはさほど前面に出て来る感じではない。一方ピアソラ五重奏団は、バンドネオンを中心に各楽器が自己主張し合い、緊張感を保ちながら演奏を展開していくが、その中でギターだけは縁の下の力持ち的な役割を担っている。
これまでにご紹介して来たように、バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバスはいずれもオルケスタ・ティピカ以来使われてきた基本的な楽器だが、エレキ・ギターはそうではない。ピアソラが1955年にブエノスアイレス八重奏団を結成した時に初めて導入され(奏者はオラシオ・マルビチーノ)、物議をかもしたのがこの楽器。ピアソラによる伝統破壊の象徴とすらみなされたのである。だが、「すべて異なる楽器の五重奏」によるアンサンブルを組み立てる上で、エレキ・ギターが極めて有効に機能することを、ピアソラやサルガンは証明してみせた。この編成は、コンフントの一つの理想とすら言えるだろう。ただ、サルガンもピアソラも類稀な個性の持ち主であるが故に、この編成による五重奏の新たな在り方を提示できる才能がその後現れていないのも、また事実である。
彼ら以外の編成というと、やはり第4回で紹介したピリンチョ五重奏団のような、バンドネオン+ヴァイオリン×2+ピアノ+コントラバスという古典的な編成のものが多いが、それ以外にもヴァイオリンではなくバンドネオンが2台のもの(キンテート・グローリアなど)、フルートなどが加わった古典復興傾向のもの、弦楽器のみのもの(キンテート・アルヘンティーノ・デ・クエルダス)など、様々なタイプの五重奏団が存在する。
(この項続く)

アストル・ピアソラ五重奏団(1966年頃) (左から)オスバルド・タランティーノ(ピアノ)、アントニオ・アグリ(ヴァイオリン)、アストル・ピアソラ(バンドネオン)、キチョ・ディアス(コントラバス)、オスカル・ロペス・ルイス(エレキ・ギター)。
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