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これまでドゥオ(二重奏)、トリオ(三重奏)、クアルテート(四重奏)、キンテート(五重奏)とご紹介して来たが、セステート(六重奏、英語ではセクステット)になると、様子が変わって来る。様々な種類の楽器の組み合わせによるものは少なく、多くの六重奏がバンドネオン×2、ヴァイオリン×2、ピアノ、コントラバスという編成に落ち着くのである。つまりそれは、《「オルケスタ・ティピカ」その1》でご紹介した、1920年代のフリオ・デ・カロ楽団(六重奏団)と同じ編成ということである。そのデ・カロ自身の楽団をはじめとして、オルケスタ・ティピカ編成が大型化していった1930年代以降も、この編成の楽団は実際に存在していたのだが(例えばピアソラに多大な影響を与えたエルビーノ・バルダロ六重奏団など)、ここでは比較的新しい時代のものに話をしぼることにしよう。
この編成の楽団で特に有名なのが、セステート・タンゴ(1968年結成)とセステート・マジョール(1973年結成)の二つである。オスバルド・プグリエーセ楽団の主力メンバーたち(オスバルド・ルジェーロ、ビクトル・ラバジェン、フリアン・プラサ、エミリオ・バルカルセほか)が独立して作ったセステート・タンゴは、プグリエーセ譲りの豪快さと緻密さが交錯する音作りに定評があった。一方、バンドネオンのホセ・リベルテーラとルイス・スタソを中心に結成されたセステート・マジョールは、現代的な感覚をエンターテインメント性豊かにアピールすることで、幅広い人気を獲得してきた。彼らに共通していたのは、演奏と編曲の両面で特に優れた技術を持ったメンバーが集まっていたことで(両方とも、特にリーダーは定めていない)、たった6人でもかつてのオルケスタ・ティピカに匹敵する、重厚で迫力あるサウンドを奏でることができることを証明してみせたのである。つまり彼らは、コンフントというよりもむしろ、オルケスタ・ティピカの縮小現代版と呼ぶ方がふさわしく、実際にこの編成であればオルケスタと名乗ることが多い。
現在活躍中のこの編成の楽団には、セステート・スール(音楽的にはちょっと納得できないが)、オランダのセステート・カンジェンゲなどがある。また、この編成にキーボードを加えたオルケスタ・コロール・タンゴや、エレキ・ギターを加えたオルケスタ・エル・アランケは、いずれも七重奏団(スペイン語でセプティミノもしくはセプテート)ではあるが同じ流れに属するものと考えて構わない。コロール・タンゴは、セステート・タンゴ同様にプグリエーセの流れを汲む楽団、一方のエル・アランケは成長著しく現在最も注目すべき若手楽団のホープである。
もちろんこうした編成以外の、オルケスタではなくコンフントと呼ぶにふさわしい六重奏団にもいくつかあって、例えばバンドネオン1台でチェロを加えたもの(エンリケ・フランチーニvnの六重奏)、ヴァイオリンを1本にしてエレキ・ギターを加えたもの(オマール・バレンテpやホセ・コランジェロpの六重奏)などがある。短命に終ったアストル・ピアソラ六重奏団(セステート・ヌエボ・タンゴ、1989年)は、バンドネオン×2、チェロ、ピアノ、エレキ・ギター、コントラバスという変則的な編成だった。また、重要なコンフントのひとつであるマリアーノ・モーレスpのセステート・リトゥミコ・モデルノ(モダン・リズム六重奏団、1963年〜)は、その名に反してピアノ、バンドネオン、オルガン、エレキ・ギター、ヴィブラフォン、コントラバス、ドラムスという七重奏である。
六重奏よりも編成の大きなコンフントにも様々なものがあり、一つ一つ紹介することは困難だが、その中では1950年代後半に画期的な方法論を打ち出した2つのグループが極めて重要である。ひとつはピアソラが1955年に結成したオクテート・ブエノスアイレス(デ・カロ型の六重奏にチェロとエレキ・ギターを加えた八重奏団)、もうひとつは卓越した編曲家であったアルヘンティーノ・ガルバンが音楽監督を務めた七重奏団、ロス・アストロス・デル・タンゴ(ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、バンドネオン、ピアノという編成)で、いずれもそれまでにない斬新な編曲と演奏でセンセーションを巻き起こした。彼らは、オルケスタ・ティピカの時代からコンフントの時代へと移り変わる過渡期を象徴する存在とも言え、タンゴ史上に果たした役割は非常に大きかった。オクテート・ブエノスアイレスにおけるピアソラの実験は、やがてピアソラ五重奏団の結成で実を結び、ロス・アストロス・デル・タンゴのようなバンドネオン+ピアノ+弦楽セクションの組み合わせによるコンフントは、エドゥアルド・ロビーラのアグルパシオン・デ・タンゴ・モデルノ(現代タンゴ集団)などに引き継がれていったのである。
(この項終わり)

セステート・マジョール(1980年頃) (左から)ホセ・リベルテーラ(バンドネオン)、オスカル・パレルモ(ピアノ)、ルイス・スタソ(バンドネオン)、キチョ・ディアス(コントラバス)、マウリシオ・ミセ(ヴァイオリン)、マリオ・アブラモビッチ(ヴァイオリン)。
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