Tanka  

 「十二月十六日」 ─『塔』2001年7月号 

 

八十九人も妊婦のいたことを帰りくるなり真っ先に言う

超音波写真に二つ付けられた小さな印 頭と心臓

十二月十六日と告げられてその日付だけが確かな夕べ

春なれば春に生まれる子のような気がして名前を考えている

なぜ君は嬉しい?などと訊くのだろう今夜は月の色もきれいだ

妊りの不安語りて妹や母と電話をしており君は

「男にはわからないこと」夕映えにわずかに光る急須の丸み

買物のリスト片手に食品を探すさびしさ通路をめぐる

「国産の」「遺伝子組換え不使用の」注意書き多きメモを見ており

すれ違う妊婦の腹をつくづくと眺めてしまう春の坂道

安静の君と一緒に家にいるゴールデンウィークひどくのどかな

悪阻なきわれも黙って皮をむきグレープフルーツともに食べおり

連休を眠り続ける君のため肉じゃがを作りサラダを作る

同性の友と電話で話しいる機嫌よき君の声を聞きおり

大さじと小さじとカップで料理すること楽しくて頁をめくる

出産に女性同士はつながれてわれはその輪の外側に立つ