八十九人も妊婦のいたことを帰りくるなり真っ先に言う
超音波写真に二つ付けられた小さな印 頭と心臓
十二月十六日と告げられてその日付だけが確かな夕べ
春なれば春に生まれる子のような気がして名前を考えている
なぜ君は嬉しい?などと訊くのだろう今夜は月の色もきれいだ
妊りの不安語りて妹や母と電話をしており君は
「男にはわからないこと」夕映えにわずかに光る急須の丸み
買物のリスト片手に食品を探すさびしさ通路をめぐる
「国産の」「遺伝子組換え不使用の」注意書き多きメモを見ており
すれ違う妊婦の腹をつくづくと眺めてしまう春の坂道
安静の君と一緒に家にいるゴールデンウィークひどくのどかな
悪阻なきわれも黙って皮をむきグレープフルーツともに食べおり
連休を眠り続ける君のため肉じゃがを作りサラダを作る
同性の友と電話で話しいる機嫌よき君の声を聞きおり
大さじと小さじとカップで料理すること楽しくて頁をめくる
出産に女性同士はつながれてわれはその輪の外側に立つ