Tanka  

 「魚屋の息子〈啄木風に〉」 ─『短歌WAVE』2002年秋号

 

公園にひとり座りていし男
立ち去りにけり
傘を残して

かの夜のごとく静かに
雨の降る墨染駅の
自動改札

魚屋の息子なりしが
魚屋のあるじとなりて
ふるさとにおり

夕飯の後に手品を見せてくれし
父を思えば
かなしかりけり

作業場の床を掃きつつ
塵取りに
今日の心を収めゆくかな

わが一度見しことのある
ゾウの死を
伝えて小さき夕刊の記事

アルバムを子どもの写真で埋めていく
限りない未来など
もうなくて