Tanka  

 「種を蒔く」 ─『日月』67号

 

更衣室兼休憩室にアルバイト情報誌二冊捨てられてあり

冬の陽はちらちら揺れる工場の枯草色のテニスコートに

異動してゆきたる人のひと月も経ず異動先で辞めたると聞く

種を蒔くように部品を入れていく二千の箱のひとつひとつに

読み上げて印つけゆく品番の何に使われる物かは知らず

トラックのあまた行き交う構内の隅に小さき鳥居立つ見ゆ

少年は飽かず見ておりフェンス越しにフォークリフトのフォークさばきを

クレームの声静かなり事務室に昨夏の検査記録を当たる

五年間保存の棚に蔵われて遠ざかりゆく春夏秋冬

残照は戸口より深く差し入りてしばらくわれの時間を照らす