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【全国紙における記事】
全国を漂泊していたフリーターによる第一歌集。どこか諦念をもって移りゆく場所を見つめる目に、哀愁と機知が同居する。「忘れ物しても取りには戻らない言い残した言葉も言いに行かない」「あなたとは遠くの場所を指す言葉ゆうぐれ赤い鳥居を渡る」(朝日新聞[2001.11.19]「風信」より)
20代後半の作品からなる第1歌集。幼少期の悲しみを負った青年は、就職や定住を拒んでフリーターとして各地を点々とする。現代的な軽さと寂しさの中に、独特の人間味がにじむ。〈あなたとは遠くば場所を指す言葉ゆうぐれ赤い鳥居を渡る〉(毎日新聞[2002.3.10]「新刊」より)
【吉川宏志さんの言葉】
起承転結のはっきりした歌集である。一首一首の簡潔な描写やめりはりの効いたリズムも、味わっていただきたい。軽い口語調で思いのままに歌っているように見えながら、したたかな定型意識を明確に持っていることにきっと驚かされるはずである。(『駅へ』の「帯文」より)
【松村正直からの言葉】
この歌集は、一九九六年九月から二〇〇〇年八月まで、年齢で言えば、私の二十六歳から二十九歳までの四年間の歌の中から、四一五首を選んで一冊にまとめました。
二十二歳の時に「いろいろな町に住んでみたい」と、生まれ育った東京を離れて以降、岡山・金沢・函館・福島・大分と、フリーターをしながら各地を転々と移り住んできました。その間、コンビニ、本屋、ファミリーレストラン、映画館などで働いたり、住宅地図の調査をしたりして暮らしてきました。
函館に住んでいた頃、たまたま函館ゆかりの啄木の歌集を読んだことをきっかけに、短歌を作り始めました。知り合いもいない町のつかみどころのない日々の不安や焦りを、ともかく毎日三十一文字の形に変えていくことで、自分自身を支えてきたように思います。結婚に続いて、今年末には初めての子どもが生まれる予定で、歌を作ることと生きることとが互いに影響しあって、次第に変化していくのは不思議なことだと感じています。(『駅へ』の「あとがき」より)
【森元之さんの言葉】
環境問題のあるNGOの会合に出席し、二次会でその会の事務局をしている男性が、「自分の弟が出した本です」ということで紹介されその場で買った本です。なんとそのお兄さんは弟の本を常に数冊持ち歩いて売り歩いているとのことでした。
中を読んでみてその感性の鋭さにびっくり。いろいろな町に住みたい、という希望から20代の後半の4年間を岡山・金沢・函館・福島・大分とフリーターをしながら転々としてきた著者が作った400首ほどの短歌が収められています。
定住しない人間の視点、定職についていない立場への世間の目や自分の中の不安、そんな暮らしの中での恋愛、過ぎ去ってゆく街の風景と心象風景などが斬新な視点で切り取られています。俵万智さんの『サラダ記念日』のような華やかさはないけれど、独身男性の持つ弱さや社会との距離感などをうまく表現している点では、日本の伝統的私小説の流れの中に位置付けられる作品であるとも感じました。(「科学と社会を考える土曜講座」MLより)