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近年の企業情報システムは、企業を取り巻く社内外の環境のめまぐるしい変化のもとでさまざまな課題を抱えている。
市場に商品が溢れ、顧客の要望が多様化し、企業は国境を超えた競争(メガ・コンペティション)にさらされている。企業が取り扱う製品やサービスの種類は増え、サイクルは短くなっている。製品・サービスそのものの品質・コスト・納期とともに、顧客の求める製品やサービスをいち早く見つけて創り出すことが重要になってきた。
このような環境において、情報化投資の期待成果は多岐にわたり、情報システムの投資対効果がとらえにくくなってきている。事実、P.A. Strassmannによる1970年代後半からの継続的な企業情報システムの調査・研究(1990)[1]では、企業の利益率と情報化投資に相関関係が見られないという調査結果が報告されている。また、「企業情報システムは経営の舵取りに必要な情報や競争力の源泉となるような情報・機能を提供できているのか」という疑問が出てきている。
M. HammerとJ. Champyは、著書『リエンジニアリング革命』(1993)[2]で「情報技術は、すべてのリエンジニアリングに不可欠な要素」であると述べるともに、「情報技術の役割」という1章を割いて、情報システムの役割の変容について、いくつかの企業事例とともに考察した。企業情報システムは、業務(ビジネス・プロセス)と密接に結びつき、業務生産性・顧客サービス・企業競争力の向上において、新しい業務ルールを生み出す可能性を持っている。企業情報システムの有効活用とは、適切な役割を見つけることだということもできる。
さて、企業の基幹業務を対象に、ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージ(統合業務パッケージ)と呼ばれる情報システム・パッケージ製品が登場し、欧米で、そして、日本国内で、その市場が急成長しているのは周知の事実である。ここで注目すべき点の1つは、このERPパッケージが企業情報システム変容の新たなステージを創出する可能性を持っていることである。
本稿ではERPパッケージによって、企業の基幹業務システムの役割や位置付けにどのような影響が見られ得るのかについて議論する。
以下では、まずERPパッケージの概要を紹介し、その発展の経緯を述べる。次に、企業におけるERPパッケージの特徴、導入のねらい、課題を明らかにしていく。その上でこれまでの作りこみ型情報システムや従来型パッケージ製品との相違点を整理し、企業における基幹業務システムの役割変容の可能性について議論する。
企業情報システムの世界では、これまでにMIS,DSS,SISなどと多くの概念が流行しては消えているが、ERPは既にERPパッケージという出来あがった製品が存在しているという点が今までと異なっている。
本稿では、ERPシステムの特徴・ねらい・課題を踏まえて、ERPシステムの登場によって、企業の基幹業務情報システムの位置付け・役割に新しく生まれた可能性について議論した。
ERPパッケージと導入の方法論はまだ完成されたものではなく、いまもなお成熟の道半ばにある。企業がERPをどのようにとらえれば良い成果を生むのかは、個々の企業の状況により様々であり、必ずしも新しい位置付け・役割の変容が望ましい(または、実現できる)ということではない。しかし、企業情報システムの発展史において、ERPシステムの存在が重要な節目となることは間違いないだろう。
(注)この記事はシステム制御情報学会誌「システム/制御/情報」誌(2000年1月号)用に寄稿した原稿から抜粋しホームページ用にアレンジしたものです。