企業の基幹業務全般にわたる経営資源を統合的に管理・活用しようというERPの経営概念の原点は、1960年代におけるMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)の考え方にさかのぼることができる(
第2図参照)。MRPは、基準生産計画(MPS:Master Planning Schedule)、部品表(BOM:Bill of Materials)、在庫情報の3種の情報をもとに、部品表の展開から正味所要量を計算することで、製品の生産に必要となる資材の生産・調達を計画する生産管理手法である。1960年代にOliver WightやJoseph Orlickyらによって考え出され、IBM社によりシステム化(COPICSシステム)されて急速に普及した。
その後、MRPの考え方は生産計画のまわりの業務を取りこむ方向に発展していった。たとえば、MRPから得られた製造日程計画や部品調達計画が外注先や社内の生産能力を検討して本当に実施可能なのかを判断する能力所要量計画(CRP:Capacity Requirements Planning)や、現場の進捗状況からのフィードバック機能が追加された。このMRPの発展形をクローズド・ループ(Closed Loop)MRPと呼ぶ。
さらに1980年代にはいると、MRPは資材や生産の計画・管理のみならず、要員・設備・資金といった要素を取り込み、製造財務計画全般や販売計画と連携して、製造活動全般における多様な資源のコスト管理に重点をおきつつ拡張されていった。これをMRP II(Manufacturing Resource Planning II)と呼んでいる。
ERPでは、MRP IIがさらに発展し、人事管理をも含め、調達から物流・販売までのサプライチェーン全般にわたる基幹業務が対象となり、日々の業務をリアルタイムに統合して、高度な意思決定支援を可能にする経営情報システムに発展した。MRPにおける「製品生産活動のために資材の投入を最適化する」という管理概念は、ERPにおいて「企業経営のために経営資源の投入を最適化する」という経営概念に置き換わっている。
(注)事実、最初の代表的なMRP IIシステムは上述のMRPシステムCOPICSを発展させたIBM社のMAPICSシステムであり、後にその販売権がマーカム社に移管されてERPパッケージ製品MAPICS XAとなっている。
ただし、ERPパッケージ製品自体は、必ずしもこのようなMRPから発展した経緯を持つ生産管理系パッケージ製品のみではなく、むしろ会計システムから発展した会計管理系製品が主流である。第1表にあげたERPパッケージ製品の中では、BPCS, GLOVIA, R/3, One World, Oracle Applications, PeopleSoft, SCAWが代表的な会計管理系のERPパッケージ、Baan IV, CONTROL, GEMPLANET, IFS Applications(AVALON), SYMIXが代表的な生産管理系のERPパッケージである。
ERPパッケージ製品には、それぞれ個性があり、得意とする業界、企業規模、機能が異なっている。
国産のERPパッケージ製品については、当初、欧米でのブームを受けて、営業上の配慮から既存の単機能製品や過去の特定企業向けシステムを組み合わせて急遽取り繕った感が否めないものが含まれていた。しかし、その後は、国産ERPパッケージも中堅企業を中心に多くの導入実績を積み、製品・機能体系の整備が急速に進んでいる。
ERPパッケージ製品市場と、ハードウェア、コンサルティング、導入・開発などを含むその関連市場、および、その動向は以下に述べるような状況にある。
調査・コンサルティング会社AMR Research社による1998年8月時点での予想では、1998年のERPベンダーのパッケージ売上高合計は148億ドルとなり、ERP関連市場全体は420億ドルとしている。また、1997年から2002年の今後5年間の年平均成長率は37%に達し、2002年には520億ドル市場(関連市場全体では1470億ドル)に拡大するとしている。
一方、ガートナーグループによると、同期間の日本のERPパッケージ市場は年平均36%で成長し、2002年には1700億円(約15億ドル)規模に拡大すると予測している。
(注)日本のERP市場は、上記の予測に反して1998年の成長が鈍化し、算出方法によってはマイナス成長と報告された。2000年問題やSCM(サプライチェーン・マネジメント)ソフト台頭の影響があるといわれている。しかし、今なお長期的には成長傾向にあるとの見方が一般的である。
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