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収穫の悦楽

遠路はるばるやってきたおたまじゃくし

そのおたまじゃくしは、パレス ハウステンボスの宮殿の後ろ側にある、
噴水で暮らしていた。
噴水では、宮殿をバックに記念写真を撮る人が多くいるが、
その水の中におたまじゃくしを発見する人は稀であると思われる。
が、我息子たちは違った。
生きもの万歳!と云わんばかりの千里眼。
草が生えていればバッタを、木が生えていればセミを、歩いていればカナブンを、
探さずにはおれないカラダと心。
彼らは当然のごとくおたまじゃくしを見つけたのであった。
見つけたとあらば、捕まえずにはいられない。
腕まくりをし、這いつくばって手を入れた。

この庭園は、18世紀、フランスの造園家ダニエル・マローが
オランダの宮殿のために設計したものの実現しなっかた「幻の庭園」。
保存されていた図面をもとにハウステンボスに甦らせたという。
ヨーロッパの造形美を極めた、広大なオランダ・バロック式庭園なのだ。
その美しいお庭の噴水に、やんちゃな子どもがひたすらおたまじゃくしを捕まえようとやっきになっている。
あまり観光客がいなかったのをいいことに、彼らのおたまじゃくし捕りは過熱していく。
時々来る観光客の写真に入らないよう、捕獲を中断させながら、
チット(長男)は2匹捕まえた。
わたしはというと、日陰の芝生でひと休み。
しばらく一緒にくつろいでいたうぱ(夫)は、ちょっと行って来るとお城の中へ消えていった。

2人とも腕まくりはしていても、長袖Tシャツはびしょ濡れ。
とうとうTシャツを脱いで上半身はだかになってしまった。
なんでこんなところまで来てこんなカッコウしてるの?とあきれてしまう。
「もうおしまい。行くよ」と言ってもなかなかきかない。
仕方なく観念してチットはビニール袋に入れていた2匹のおたまじゃくしを放してやった。
がんばってはいるが、どうしても捕まえることができないみい(次男)。
もうちょっととねばって、とうとう1匹捕まえた。
そこでパッとひらめいたわたし。
空になったペットボトルに入れて家に持ち帰えることができるかも!
そのアイディアは子どもたちにオオウケ。
その後、根性でチットも1匹捕まえて、2匹のおたまじゃくしを家に連れて帰ることに。

そうしてパレス ハウステンボスの噴水で暮らしていたおたまじゃくしは、
我家の飼育ケースに無理やり引っ越すはめになった。
2匹はカルーセル(回転木馬)にも乗ったし、飛行機にもバスにも電車にもタクシーにも乗り、
無事我家へ到着した。
ザリガニのエサをもらってごきげんに泳いでいる。
名前は、「おたま」と「ジャック」だ。
緑に囲まれた優美な宮殿からちっぽけな我家へと居を移されたおたまじゃくし。
後ろ足が生え始めた。
ぼよんとまるくて、ちょろんとしっぽが生えていて、
とぼけた顔をして、お口をパクパクさせている。
子どもたちに可愛がられて、結構しあわせかもしれない。


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