熊の足跡 (Footprint)

熊の足跡.jpg  いいキャンプ地を見つけ、くつろいだ夕食を食べ終わり、その後片付けの最中に、テントの横の水辺に黒熊の大きな足跡を発見! あまりにくっきりした足跡だったので最初は絶対誰かのいたずらだと思ったが、続いて、近くでフレッシュな熊の糞も発見! 急いでテントを撤収し、夕闇の迫る中、あわてて再出発となったが、同行の一人は既にお酒が体に回っていて、次のキャンプ地を見つけるまでの道のりは非常に遠かったのだった。


●熊との異常接近遭遇その1●

 カナダ東部の森の中でブッシュキャンプ。朝5時ごろ、1km以上離れたところにある一軒家の犬の必死の鳴き声で目が覚めた。耳をすますとそっちの方から枯れ枝をベキベキ踏み折りながら、何かがゆっくり接近してくる音が。熊だと直感。道路横の林の中を道路に沿って音はなおも接近してきた。テントはその道路から直角に山の方に伸びた廃道を100mほど入ったところに張っていたが、ついにその動物はその廃道の上へ。道路への道はそれ一本なので、完全に退路を絶たれたことになる。

 ここでラジオを最大音量でつけた。電池が少なく音が割れていたが、この音でむこうが驚いたのがわかった。しばらくの沈黙の後、その動物は再び移動を再開。ゆっくりゆっくりベキベキ音が遠ざかって行った。その枯れ枝の折れる音が完全に聞こえなくなるまでじっとしていて、それからテントを緊急撤収。色んなものをテントの中に残したまま一緒くたに丸めて袋に放り込み、急いで道路へ脱出。寒く真っ暗な中、自転車を必死に走らせたのだった。

 熊だと思われる動物がゆっくりと近づいてくる間、「遺書を書かなければいけないかなー」とか、『昨夜コーラを飲んでから歯を磨いてないけど、熊に食べられる時、熊は甘いもの好きだから、口のあたりからバキバキ骨を噛み砕きながら食べられるんだろうか』、など色々頭に浮かんだ。熊と認識した瞬間、心が凍り付くという状態を初めて体験。しばらくは完全に氷付いていていた。昼ごろ気温が上がってだいぶ暑くなったあたりでやっと少し解けた感じになったが、しかしそれからもしばらくの間はその時の事を思い出すたびに、すぐまた凍り付いていた。

 この話には前編があって、熊のやってくる前日、テントを張ってしばらくした時に廃道の入り口に車がやってきて、なにやらそのあたりの木をコンコン叩き始めたということがあった。人から隠れてテントを張っている身として、話をしに行こうかそれともそのまま隠れていようか迷ったが、結局タイミングを逃してそのままに。わたしがテントを張っている時の音を聞きつけて、『わたしを追い出しに来たのかな?』『でもそんな音で人間が追い出されることは無いんだけどなー?』『何しに来たのかなー?』など、その時はのんきに考えていたが、後になって考えれば理由は簡単。あまり熊が来ることはないエリアに、少し前から熊が出没するようになっていたと考えれば。要はわたしが森の中で立てた音を熊だと思って追い払おうとしていたのだった。子供連れだったので、そういう方法を子供たちに教えようとしていたのかも知れない。その時出て行って話しをしていれば、こんな目に会わずにすんだのに・・・。

 これが熊との異常接近の初体験。最初にして最大の恐怖を感じた熊との異常接近の話。以後もっと危険な異常接近はいくつもあるが、恐怖を感じたのはこの時だけ。枯れ枝を踏み折れる大型動物は、熊以外にもエルクやムースなどあるが、歩き方のペースや驚き方を見ても(聞いても)、熊だというのはほぼ確実だったと思われる。


●熊との接近遭遇その2●

 幹線道路(Yellow Head Highway, Prince George より西区間)で前方に1台の車が停車中。車はじきに走り去り、そこに近づいて行くと、かわいい小熊が草の中からちょこんと顔だけだしてこっちを見ていた。小熊というのはむちゃくちゃかわいくて、本当にぬいぐるみそのもの(実際はぬいぐるみの方が小熊に似ているということだが)。しかしどこか近くにいるであろう子連れの母熊というのが最も危険なので、心を鬼にして「あっちへ行け」と声をかけた。しかし小熊は興味深々。相変わらずかわいい顔してこっちの方を見ている。ついにはおもいっきり大声を上げてどなったら、やっとしぶしぶ去っていった。


●熊との異常接近遭遇その3●

 Smithersというそこそこちゃんとした町の公営キャンプ場での事。雨のしとしと降る夜、時刻は深夜を過ぎたころ。誰かがわたしのテントをノックする音が。テントを開けてみると、お隣のアメリカ人サイクリスト。彼が言うには、「熊が来て自転車持って行かれた」との事。何ー!ということで、眠いのも吹っ飛び、テントでのキャンパーはみんな起きてきて、てんやわんや。

 しばらくしてワーデンが来て明るいライトで森を照らし、森の中から彼の自転車をなんとか救出。サイドバッグはするどい爪で破られ、チョコレートバーなど食べられていた。『銀紙など包装はちゃんと剥がしてから食べたんだろうか?銀紙も一緒に食べたんではおいしくないし、体にも悪いかも』などしょうもない疑問は置いといて、その後テントでのキャンパーはみんななかなか寝付けなかった。われわれは森に接してテントを張っていたが、彼は森の方から自転車、ピクニックテーブル、テントという配置。わたしは森の方からテント、ピクニックテーブル、自転車という配置。その時わたしは町のキャンプ場ということで、安心してテントの中に食料を入れていたので、熊が彼の方へ行ってくれなければ、どうなっていた事か。

 夜があけて、アンテナを持った追跡担当者と、銃を持った射殺担当者がやって来た。どうもその熊は前科者で、電波発信機を付けられているらしい。一度目の人間の食料への異常接近では捕獲して遠くへ放免されるらしいが、再犯の場合は射殺されるとの事。ちなみに熊に自転車をやられた彼は、一日かけてバッグ修理の為、縫い物などしていた。


●熊との異常接近遭遇その4●

 Cassiar Highwayでのこと。キャンプ地を探し、廃道となった旧道へ進入。川が有り旧道の方の橋は無くなっている場所で、ある程度川に近づいたところで荷物を降ろし始めた時に熊の糞を発見。急いで荷物を積み直し再出発。旧道から本道へ戻る道は少し下り坂になっていて、速度は20km/hほど。本道との合流地点へ向かっていた。そこに前方から赤い車が。なにやらずっとクラクションを鳴らしながら接近してきた。わたしへの激励にしてはいやに長く、『激励ではなくいやがらせか?』などと思いながら合流地点に接近した時、右前方数メートルのところに夕日で金色に輝く大きな物体が。なんと赤毛(茶色)の熊だった。

 わたしが結構なスピードで接近していたせいか、それとも車がクラクションを鳴らしたせいか、熊はお尻を向けて逃げる体制に入ったところだった。その必死に逃げる姿はなんともユーモラスでかわいかった。しかし実際のところ、わたしは熊に退路を絶たれた状態で、そうとも知らずに熊に向かって突進していたのだった。それを見つけた車がわたしへの注意の意味でクラクションを鳴らし続けてくれていたのだった。

 Cassiar Highwayというのは交通量が少なく昼間でも30分以上も車が来ないこともあるような道なのに、そこに、ジャストのタイミングでその車がやってきてくれたというのは本当にラッキーだった。しかしその車のドライバーも驚いたと思う。そこに熊がいることを知っているのかどうかわからないが、荷物を満載した怪しげなサイクリストが結構体格のいい茶色の熊に向かって、自転車で突進している場面に出くわしたんだから。

 ちなみにその合流地点は少し広くして駐車スペースになっていてドラムカンのゴミ箱があった。ゴミ箱に蓋は無く、こういうところは熊の縄張りになっていることが多い。通常、カナダの熊出没エリアにあるゴミ箱は熊には開けられないようなロック式だが、この地域のは、予算の関係か、それともボランティアによるゴミ箱か、ただのドラムカンだった。この遭遇に関してはキャンプ地選択ミスだった。


●熊との異常接近遭遇その5●

 今回はれっきとしたグリズリー。Haines Junctionの北。対向車がいきなりセンターラインを超えてわたしに向かって一直線にやってきた。前方に熊がいるから気をつけるようにとのこと(わたしは熊よりも車がまっすぐこっちに向かってきた方にびっくりしたが)

 その先の国道の反対車線の路肩に車の列。見ると路肩に一頭のグリズリーがいて一生懸命何か食べている最中。車の中の人間はみんな気楽に写真など取っていたが、こっちは生身の体むき出しなので、だいぶ手前で停止。熊は匂いを嗅いでいるのか、それともこっちを見ているのか、時々立ち上がってわたしをうかがうそぶり。こっちは気長に待っていたが、しかしいくら待ってもその熊は移動しないので、こちら側の車線にも車の列が出来たのを機会に、それらの車を盾にして、カメラを準備して一気に通過を決行。丁度熊の横に来たときに両サイドの車の列が切れて、熊とご対面。シャッターを押し、そのまま走り去ったのだった。

 ちなみに熊の種類と色というのは結構はっきりしない物らしい。Black Bearと言っても完全な黒では無く、灰色っぽかったりするのもいるらしいし、グリズリー並に大きなのもいるらしい。グリズリーという呼び名もちょっとはっきりしない場合があり、Brawn Bear全体を指す場合と、Brawn Bearの中の一部を指す場合があるみたい。それとは別に、鮭を取るのとベリーを食べるので分けるのもあるみたい。色も灰色だったり茶色だったり、黒っぽいのまで色々あるらしい。その8でキャンプ場の管理人に報告したが、『Brawn Bearが来た』と言ったら『何色だった』と質問され、ちょっと『ううー』となった。ブラウンって色じゃないのか?というのは置いといて、Brown Bearも外人さんの金髪の種類並に色々あるんだと思う。最もはっきりした見分け方は、『背中に力こぶみたいなのがあるのがグリズリー』ということ。


●熊との異常接近遭遇その6●

 The Icefield ParkwayのSaskatchewan Crossingの東、国立公園を出たすぐのキャンプ場でのこと。前日キャンプ場到着時、キャンプ場の1kmほど手前でやけにフレッシュな熊の糞を発見。感じからすると数時間前というようなレベル。到着後、管理人にその話をし、熊が来ることは無いかどうか聞いてみた。返事は『全然無し』と自信の答え。その場はまあ『ふーん』ということで、2,3日休養の予定でテント設営。

 隣のサイトはちっちゃい男の子と老犬を連れたエドモントンからの夫婦。管理人は『熊なんかここでは見たこと無い』ということではあったが、前日熊の糞を見ていることもあって、食料はまとめて少しだけ距離を取って保管しておいた。

 午前中、散歩していたら、インド人風のキャンパーが、『熊を3頭みた』と言って来た。最初は『ふんふん、見られてラッキーでしたね。いつのことですか?どこで?』などとやっていたが、よく聞くと、『今さっき、このキャンプ場の中で』ということだった。

 急いでサイトに戻り、お隣さんと会話。隣も既にその情報は入手していた。お隣さんは今日出発予定だったということで、こっちは連泊の予定をキャンセル。食料をテーブルの上に置き、お互いぼちぼちと出発準備をしていた(熊はもう立ち去ったのではないかなどと期待していた)。しばらくして隣のぼうやが、緊張感も無く、ニコニコしながら「あ、パパ、熊!」との事。見ると、道をはさんで向かいのサイトになんと黒熊が。ピクニックテーブルの上に乗って、キャンパーの落としたパン屑などをあさっていた。

 子供は熊が見られてニコニコしているものの、親はそんなこと言っておられず、青ざめて子供を小脇にかかえ、急いで車の中に強制連行した。こっちも食料満杯の袋を持っているので、急いでその袋をお隣の車の中に保護してもらった。熊が接近してくるようだとわたしも保護してもらわなければいけない。

 熊はそのテーブルに飽きると、こちらでは無く違う方向に歩いて行った。『熊なんか全然見たこと無い』と言うキャンプ場で、『なんでそれを聞いた次の日に3頭もの熊が同時にキャンプ場の中を散歩したりするんじゃー!』とか思いながら急いで荷造りし、休養日無しでの出発となったのだった。

 隣のサイトに犬がいるので、熊が来たら吠えてくれるだろうと期待していたのに、その時その犬は全く吠えずに車の中にいた。『熊への番犬として期待していたんだけどねー』と隣のだんなさんに言ったら、『うちのは都会の犬だし、年とってるからねー』とのこと。熊が来たのに吠えない犬がいるなんて考えたことも無かったのでちょっと驚いた。


●熊との接近遭遇その7●

 BanffのTwo Jack Lakeのキャンプ場。季節は秋。行って見るとキャンプ場の前に大勢のワーデンが。聞いてみるとキャンプ場内にグリズリーがいっぱい来てるので、キャンプ場閉鎖との事。キャンプにやってくる車を全て追い返していた。隣のキャンプ場は満杯だったが、自転車ということで紹介してもらって特別にそちらへチェックイン。すぐ近くなので、『こっちは安全なんだろうか?』などと思ったりもしたが、とりあえずシャワーと洗濯を終え、夕食も食べ終わってくつろぎのひととき。散歩で自分のサイトの近くの湖に行ってみたが、なんとそこには大きなグリズリーの糞が。

 『なんだかなー』と思いつつもテーブルで書き物などしてゆっくりしていると、ワーデンが各サイトを回ってくる。聞いてみると、グリズリーが近くまで来ているので、こちらも明朝閉鎖との事。近くのテントは無人で食べ物など置いてあるところもあり、食料をきちんとしまうよう伝言を頼まれたりもした。当然ではあるが既にこっちの食料はロッカーの中。

 隣が帰ってきたので、伝言は伝えた。しかし明朝閉鎖って言われたって、『今晩は安全と言えるのか?』ということでこっちは撤収開始。わたしが撤収しているのを見て、その不安が伝染したのか、近くの中国人系のキャンパーなど何組かも今晩の撤収を決めた模様。いい追い風だったので、少し遠いけど隣の町のキャンプ場まで移動して一件落着。今回は直接は熊の姿は見ていないけど、まーこれも一応熊との接近遭遇ということで


●熊との異常接近遭遇その8●

 Jasper国立公園、Jasperから数十kmのところのキャンプ場でのこと。シャワーと洗濯を終え、くつろいで静かに夕食中。前菜のラーメンを食べ終わり、ご飯が炊き上がるのを待っていた時になにやら違和感のあるへんな感覚が。そこで左を見ると、「げ!」なんとそこには茶色の熊が。熊がいるところはわたしのサイトの駐車スペース。距離にして5,6メートル。

 熊は赤ちゃんではないが、たぶん2,3歳の子供。赤毛ではあるがグリズリーかどうかは不明。ちょうど犬のように地面に鼻をくっつけながらクンクンしていた。推測するに、『なんかおいしそうないい匂い。どこから匂ってくるのかな、クンクン。うん、これは近いぞ、クンクン、クンクン』と言った感じ。そこで、『こらこら、あっち行け!』とそれほど大きくない声で注意。で、熊は初めて顔を上げこっちを見た。お互いの視線が合ってその次の瞬間、わたしもびっくりしたが、むこうは「ひえー!、人間だー!」というような調子でこれまたびっくりし、必死になって逃げていったのだった。

 その姿は無茶苦茶かわいらしく、すれてない純情な熊だというのがわかる。しかしその年齢でも、向かってくれば充分危険なちゃんとした熊。もしその時やってきたのが大きなグリズリーだったら、相当危険な状態だったはず。逃げる姿がかわいくて恐怖は感じなかったが、でもやはり至近距離だったので相当驚いた。一応危険回避ということで、ご飯を炊き終えてからテント、洗濯物を撤収。料金を払い戻してもらって、より町に近いキャンプ場に移動したのだった。

 この話には失敗談があって、熊が去った後すぐ、まだ封を切っていなかったベアースプレーを開け、ちょっとだけの発射テストを行った。発射OK!。しばらくして荷造りの為、テントの中に入りかけた時。突然、目と喉に強烈な痛みが。そう、ベアースプレーの成分がテントに流れ込んでいたのだった。

 よく考えるとそのサイトは周りをマウンドに囲まれた、ちょっとした盆地になっていて、無風。テントの入り口を開けていたので、発射したスプレーのうちの少し重い気体成分が戻ってきていたのだった。急いで目と喉を何度も洗ったが、痛みはしばらく続いた。ほんの一部の成分でもこうなるのだから、液体、固体成分も含めてこのスプレーの直撃を受けたりしたら、人間ならもしかしたら呼吸が出来なくて死ぬこともあるかもしれない。そう思えるくらいの威力だった。


●熊との異常接近遭遇その9●

 幹線道路(Yellow Head Highway, Prince Georgeより東区間)で、その日はいいキャンプ場/キャンプ地が見つからず、夕暮れの中を走行。これも少し下りで20km/h以上で走行中に右路肩に黒い物体発見。最接近時には1m台の距離しか無かったと思われる。そこそこ大きな黒熊だった。道路の舗装部分すぐ脇の路肩で、路肩に生えている木の実など食べていたのかも知れない。

 この熊も一応驚いて路肩から林と道路の間にある低い部分まで逃げた。しかしこれまでの熊とは違い、そこで止まって、こちらを見ている。なにやらふてぶてしい感じで、想像するに『くそー、どんなやっちゃ、俺様を脅かしたのは。なんか弱そうなやっちゃなー。逃げて損した。本気でやれば負けへんでー』という感じだった。

 こちらの自転車は荷物重装備の巨大物体でこれが結構なスピードで、夕暮れの闇の中突然接近してきたら、どんな熊でも驚いて逃げて当然だとは思うが、この熊は逃げる時も必死という感じでは無く、『条件反射的に少し距離を取っただけ』と言う感じだった。熊に異常接近した場合の対策は色々言われているが、熊は相当に知的な動物で、それに従い性格も千差万別で、全ての場合に有効な対処法は無いと言われているが、それを実感した接近となった。これは距離的にも最も接近したケースで、一瞬ではあったが数ある接近の中では最も危険な個体だったかも知れない。この黒熊に夜やってこられたらまずいので、暗闇の中、更に数十km走って距離を取ったのだった。


●熊との接近遭遇その10●

 これは大した接近ではないが、同じくYellow Head Highway, Prince Georgeより西区間。反対車線の路肩と林の間は丘になっていてその上に黒熊発見。真横に来た時に停車してしばらく観察。(とても安全な距離とは言えないが、交通量が多く、道路を横断して来れないだろうというのに期待して)。やはりむこうもこっちが気になるのか、お互いに観察し合いという状態。一種の『ガン』の付け合いみたいだったが、まあそれだけ。


●熊との接近遭遇その11●

 ユーコン下りの最中。季節は秋に近づき、どの島にも熊の足跡がある場合が多く、比較的安全と思われるキャンプ地を選択出来ず、そのキャンプ地でも熊の足跡を確認した。しかし夕暮れまでに時間的な余裕がなく、そこでしかたなくキャンプに入った。

 次の日の早朝、早起きした一人が、距離を取って置いてある我々の食料に接近する黒熊を発見。皆で起きて声や音で熊を脅し、なんとかしぶしぶではあったが熊を近くの森に帰すことに成功。その熊の立ち振る舞いは、「その9」の熊よりはだいぶ素直、でも「その8」のかわいい熊ほど純真でも無い、というレベルかと思われる。


●熊との異常接近遭遇その12●(2004/07/01)

 アラスカのCrow Creek Mine、近くに熊がいると言うことで小屋の中で寝ていた。前日、オーナーと話していて、「熊が来ても犬が吠えるから大丈夫」と言うことだった。わたしは「その6」で犬が全く吠えないと言うのを経験しているので、「本当に吠えてくれるでしょうね」と念押し。朝、車の中に保管してもらっていた食料を小屋に持ってきて朝食。ローテーションの都合で朝からラーメン。”ラーメン・ライス”ならぬ”ラーメン・パン”。

 食べ終わってふと横の窓から斜め後ろを見ると、何やら黒い動物が・・・。落ち着いた状態で「あれ?犬じゃなく熊みたい?」、まだ少し頭が起きてなかったが、徐々に状況を認識。「げ、熊だ!」。熊のいる場所は鍵のかからないドアの前。カメラをつかみ、ドアを押された場合の為に反対側のドアの方に少し移動。

小屋の写真  熊は小屋の周囲を回る形で次の窓の方に移動。こちらは少し後退していた状態から、写真撮影をしたいと言う気持ちが強くなり、熊の進行方向の、更に次の窓に接近。熊は回ってきて短時間シャッターチャンスはあったものの、構図などで一瞬迷ってタイミングを逃してしまった。熊は小屋を半周後、藪の中に消えた。せっかく熊撮影の為に普段持たない大きなカメラを持って来てるのに、チャンスを逃してしまった。「デジカメなんだからとりあえず連写しておけよな〜」と反省しきり。熊は写真の左側から右側へ歩き、ピクニックテーブルと小屋の間を奥へ抜けて行った。わたしがいたのは真ん中の窓付近。

 後は、ちょっとだけ小屋を出て、そのあたりにいる人に熊がいると警告。他にも2人ほど熊を目撃していたが、どうやら違う個体みたいだった。前日の情報では近くに3頭いると言うことだったので、少なくとも2頭は来ていたと思われる。

 しかしまたしても犬に裏切られてしまった。犬の鳴き声なんか全く聞こえず、熊は静かな朝の空気の中、悠然と散歩していた。犬はやはり萎縮してしまったんだろうか。オーナーに話したところ、「そう、あいつ、全然吠えなかった」とのこと。熊はオーナーのベランダも散歩していたらしい。しかし犬ももうちょっとがんばって欲しいもの。

 最接近距離は2〜3メートル。その8の時もラーメンを食べ終わった直後に熊がやってきたが、熊ってラーメンのにおいが好きなのかもしれない。


●熊対策●

 その他にも、単純な熊との接近はたくさんあり、全部で数十回くらいかと思われる。こんなに熊に接近している人もめずらしいのではないかと思うが、まあ旅行形態が自転車+キャンプということで、最も遭遇しやすいということかもしれない。

 北米でキャンプする場合の熊への対策として、「テントに食料を入れない」、「テントの中で食事しない」、というのが最大の原則。これを雨の日にもやるのはなかなか大変で、この点が北米でのキャンプの最大の問題点ではある。ある程度近くの範囲に熊がいた場合、キャンプ地までやってくる可能性は排除出来ないので、近くまでやって来た場合を考えて、出来るだけ危険を少なくするように、『食べ物の匂いを自分やテントに付けない』ということと、『食べ物や匂いの出るもの(石鹸、化粧品、歯磨きセットなど)と人間との距離を取る』ということが原則となる。

 これに加えて、食べ物を熊が入手出来ないように、木の枝につるしたり、車や食品用ロッカーに入れたりしておく、ということもあるが、これは人間を守るということではなく、熊を守るためにやること。国立公園内と言えども、人間に異常接近した熊は習慣性が出来る(安易に食べ物を入手できるというのは癖になる)ので、やむを得ず殺されることになる為。いい枝ぶりの木が無いキャンプ地では食料との距離を取るということしか出来ない。

 わたしが相当な自然の中でキャンプする場合にやっているのは、夕食を食べる場所と寝る場所を変えるという方法。川下りの場合でも同じで、時間があるなら、夕方からゆっくり食事し、食器をきちんと洗ってから再び出発し、10kmとかそれ以上移動してキャンプ地を探せば、炊事による匂いの影響からは逃れられる。


●食料の吊るし方●

 ロープとバッグ2個、それと棒、を使用。バッグは同じような重さになるように中身を配分しておく。木の枝の条件は、地面から届かないようなそこそこの高さ(熊が届かない高さの倍以上必要?)と、幹から届かないように、横に充分伸びた枝。それから適度にテントから離れた木であること。

 (1)ロープの先に何か重りを結び、それを投げて枝に掛ける。
 (2)ロープが掛かったら、ロープの片方に1個のバッグを結びつける。
 (3)そのバッグを枝の近くまで引っ張り上げる。
 (4)その状態で、ロープの反対側の出来るだけ高い位置にもう1個のバッグを結びつける。
 (5)低い方のバッグを棒で押し上げて、2つのバッグを同じ高さにする。

バッグの位置は人間が手を伸ばした位置と、枝の位置の中間になるはず。例えば人間が手を伸ばした高さが2.2mなら、枝の位置を4.4mとすれば、荷物の位置は3.3mと言うことになる。熊はここまでジャンプ出来るだろうか?

たまにカラスがいる場所もあるが、その場合、カラスに破られない丈夫なバッグが必要かも知れない。


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