奮奪(天皇賞)

札の塊に震えの止まらないマスターは、ノーリーズンからの馬券では
増えないような気がした。
コウシャクや健は例によってああでもない甲でもないと言う。
黒川もどうする?と迫る。
パニックたマスターは、黒川の胸倉を掴み
「美和ちゃんは何処にいる!」
そう意気込む。あまりにマスターの形相に驚いた黒川は
「離せ!このやろう!」
と百戦練磨の立ち回りでマスターを投げ飛ばす。
床に叩きつけられたマスターは、キッチンから刃物を持ち出し、
「教えろよ!黒川!」
と叫びながら黒川目掛けて突進した。
不意を突かれた黒川は一瞬よろめき、間一髪交わすと
マスターの腹に蹴りを入れる。苦しさで前かがみになったところに
こぶしを振り下ろした。それだけでマスターは刃物を放し床に転がって、うずくまったまま動かない。
「マスター大丈夫か?」
心配でコウシャクが声をかける。
コウシャクの心配をよそにマスターはうめき泣き始めた。
「急所は外してあるから大丈夫だ」
そう言って起き上がった黒川の腹は薄っすらと血が滲んでいた。
「黒川さん。血が・・・・」
健が声をあげると
「かすり傷だ・・・」
といって微笑んだ。
いい大人が人目を憚らずにワンワンと泣く姿に呆れ果て、刺してまで居場所を聞こうとしたマスターに
すっかり同情した健とコウシャクは、黒川に美和の居場所を教えてやって欲しいと悲願した。
黒川も自分のことは言うなと釘さし、美和の居る場所をしぶしぶ教えた。
それを聞いたマスターは札の塊を握りしめ、タクシーを飛ばし美和の元へ向かった。
あっけにとられた3人も後を追いかけた。

店に入るなり大声で叫ぶ男はあっという間に抑えられた。
「美和〜美和をだせ!」
「なんだおまえは。」
取り押さえる男に
「支配人をだせー!金は持ってきたぜ」
そう言った男はマスターだった。
出てきた支配人に美和の借金の額を問う。
「2000万だ。耳そろえてもって来たか?」
「ここに1000万ある。後は毎月少しづつでも払うから、美和を開放してやってくれ」
そう悲願するマスター。
奥からは美和が心配そうに覗いている。
「半分じゃだめだ!全額持って来い!」
そう言ってマスターをなぐり飛ばす。
そこへ先ほど到着したばかりの黒川が止めに入った。
「待てよ、支配人。2000万は借金の満額だろう?!」
「・・・・・」
「美和は既に5ケ月働いてる。安く見ても500万は稼いでるはずだ。
残りは1500万だろう。」
「ま・・・まあな。」
曖昧に答える支配人。
「ここに1500万ある。借用書と美和を帰しな。」
凄みのある声と睨みですっかりビビッタ支配人は
「わかった。」
と言って奥から借用証書と美和を連れてきた。
「それでいい」
と言ってマスターの1000万の塊と自分のバックから500万を出す。
それを支配人の部下が数え始める。
「確かに」と言って借用証書と領収書を支配人はきった。
それを黒川が受け取り、颯爽と退散した。

「黒川さん。ありがとうございます。なんて御礼いっていいか。」
そうマスターがいうと
「勘違いすんな。500万は俺の金だ。これから返してもらうからな。
利子は10%に負けてやるよ」
そう言ってにやりと笑った。
「それから腹の傷は慰謝料込みで20万だ」
それを聞いたマスターは
「鬼!」
と思わず叫んだ。
「鬼で結構。それが俺の仕事だ」
と言われても美和が帰ってきただけで嬉しいマスターだった。
菊花賞を見送ったマスターは地道に黒川に借金を返すようだ。

週が明けて天皇賞・・・・・
相変わらず当たらず、厩舎を回る田島記者。
JackPotでこんなことが起こっているとはいざ知らず・・・
天皇賞は、◎エアシャカールからの流し馬券。
競馬界は武豊で回っている。菊花賞では波乱の一部を演出し、
今度は主役を演出するはず・・・。さていかに・・・・。