jackpotにて
まったく予想が当たらん・・・・。
アンだけ調教で走った馬がなぜ本番で走らんのだ。
上司にもお前の目はどうなってると皮肉られるし・・・
どうもこうも馬を見る眼など最初から持っていない。
調教師のコメント、騎手のコメント幾ら聞いても
当てにならない・・・・。
当てになったら、競馬にならないが・・・。
ムシャクシャして、飲み屋街をうろつくと、
「jackpot」という看板が見える。
掛け金か〜。知らずに足を踏み入れていた。
カウンターとホックス席が数個の小さなどこにでもあるバーだった。
カウンターに腰掛ける。
「ビール」
「お客さん、初めてでしょう?」
マスターらしき男が声をかけて来た。
「そうだけど・・・」
「いや、見ない顔だなって思って。うちは常連客ばかりだから・・・」
「へ〜」
そういってビールを口に運ぶ。
またマスターが声をかけてくる。
「お客さんギャンブル好きでしょう?」
「え、ええまあ」
曖昧に誤魔化す。
「皆さん店の名前見て入ってくるからね〜」
「水割り」
さえぎるようにオーダーする。
「はい、水割りね。ところでブラックジャック知ってる?」
マスターは話し好きらしい。
「ああ、知ってるよ」
「どう?」
「どう?って?」
「やらない?」
こんなところで、トランプをやるつもりはない。
「いいや。ことわるよ」
マスタは「残念だ・・」といって別の客を探し出したようだ。
一番ちかいテーブル席では、競馬の話に花が咲いている。
何でも一番速い馬と一番強い馬の違いについてのようだ。
男の主張は一番早い馬は強くはなく、一番強い馬は早くはないということらしい。
一番強い馬は、最近で言えば引退した「テイエムオペラオー」だろう。
いつも僅差勝ちで、レコードは一度も無い。しかし負けない。
一番速い馬は、レコードホルダーだろう。しかし、レコードを出すような馬は
足に負担がくる。競争馬生命は短い。ファンは速い馬が好きだ。
求めているのは強くて速い馬なのだ。
「お前の講釈は聞き飽きた!」
罵声が跳んだ。
「何だとこら!もう一度、言ってみろ!」
掴みかかる勢いで男が立ち上げる。
酔っぱらいの喧嘩が始まったようだ。
「ガッシャン」
グラスが飛び落ちて、氷とともに割れた。
見かねてマスターがやってくる。
「お客さん、喧嘩なら外でやってよ!」
もうひとりの仲間がなだめる。
「まあまあ、ここは押さえて・・・・」
投げ水が入ったせいか、2人とも落ち着いたようだ。
マスターが自分の所に来て誤った。
先ほど飛び跳ねた氷が私のズボンを汚したからだ。
それを見て、講釈を垂れていた男が
「お客さんすいません。つい取り乱してしまって・・・・」
と頭を深深と下げた。
「何が奢らせてください。」
と言う。見知らぬ人に奢ってもらう筋合いもない。
「たいした事無いですからいいですよ」
そう、軽く断ると、
「いいやそれでは、俺の気がすまねえ。」
「そうそう、そいつが悪いいだから、奢ってもらいなよ」
と喧嘩していた相手が言う。
「何だと〜」
また喧嘩が始まりそうな勢いだったので、
「わかった。わかった。じゃあビールを」
と仕方なく言った。
「カウンターなんて詰まらないでしょう。こっちのテーブル席で飲みましょうよ」
とテーブル席の方に移動させられた。
「俺は、磯垣って言うんだ。」
講釈を垂れていた男はそう自己紹介した。
「そう通称コウシャク。こいつの講釈にはウンチクがあって誰もついていけない。」
そう、喧嘩相手の男は言う。
「俺は、健っていうんだ。」
そう自己紹介した。
最後に仲裁に入った男が高橋という市役所勤めの男だった。
酒の勢いもあってかすぐに彼らと打ち解けた。
それは競馬という共通の話題があったからでもあろう。
「ねえ。田島さん。明日のきさらぎ賞はクラッシクの登竜門でしょ。
狙いの馬とかいる?」
と健が聞いてくる。
「ダンスインザダークにナリタトップロード、エリモブライアンにボールドエンペラー。
確かに活躍馬は多いけど、今年はレベルが高く混戦だな。」
そう言うと、
「そうでしょう。メガスターダムは強いよね」
と健は続ける。
「コウシャクさんがたいしたことないようなこというから・・・」
「スローの展開の恩恵を受けたことは間違いないけど、おり合っていたし、
重賞は弱い馬は勝てないよ」
「今回も間違いないよね」
「デビュー戦以外は常に4着以内と堅実だ。脚質は一本調子だが、一戦ごとに地力を強化している。
2戦前の500万条件戦では、3戦3勝の大物モノポライザーと接戦して2着。
今回は目標とされるだけに展開的にキツイかな」
「なにかいい馬でもいるんですか?」
「マイネルアンブルが坂路で51.5秒でいい動きだった。乗ったのが60キロの調教助手だから
時計的にはもっと価値がある」
「田島さん。なんか見てきたような言い方ですね」
そうコウシャクに突っ込まれる。
「はははは・・・」
笑って誤魔化すが、いずればれるだろう。新聞記者と打ち明けた。
すると現金なもので、彼らの私の対する目が変わった。
人間やはり肩書きで評価されるのだ。
競馬記者=競馬に精通している=馬券が上手い。
競馬記者=裏情報が入る=金が儲かる。
一瞬にして彼らの脳は、私のことを馬券上手で金が儲かる裏情報をしっている男
となったようだ。
やばいな・・・酔った勢いほど恐いものはないな〜。
「ほかには何かないですか?」
今まで聞き役になっていた高橋までもが食いついてくる。
「アグネスソニックも動きは悪くなかった・・・」
といってお茶を濁す。
「コウシャクのダイヤモンドの狙いは?」
と話題をコウシャクに振る。
「俺は本調子ならペインティッドブラックが一番強いと思うけど・・・・まだ調子がもどって
ないよな〜。」
「だから武豊だって。アドマイヤロードがいい」
そう健が口を出した。
「長距離は騎手で買えって言うし・・・。武豊は3000m以上のレースで連対率が6割を超えている
。信頼できる騎手だね。」
私がいうと、健も
「そうか・・・田島さんが言うならやっぱり武か??」
と頷いた。
「しかし、このレースってスター性が無い地味なイメージのレース。私は後藤騎乗のキングザファクト
に魅力を感じます。」と高橋がいう。続けて、
「船橋の石崎はいい騎手ですね。その石崎の乗るロードブレーブ。逃げ残らないかな。」
「逃げるのはメジロロンザンだろう。」
とコウシャクが言う。続けて
「ファロンのトシザブイは?」
と聞いてきた。
「坂路で51.7秒。まあまあいい。」
と私。
取り留めのない競馬談義が続き、気が付いたときは看板だった。
終電がなくタクシーで家路に向かった。そのタクシーの中で明日の予想を考える。
ダイヤモンドS
◎アドマイヤロード
○キングザファクト
▲ロードブレーブ
△シンボリオレゴン
△メジロロンザン
△トシザブイ
◎流し&○−▲
きさらぎ賞
◎メガスターダム
○アグネスソニック
▲オースミエルスト
△マイネルアンブル
△カゼニフカレテ
△メジロマイヤー
△フィールドラッキー
◎流し