健の泣き(プロキオンS)
テレビを食い入るように見るマスターと美和は、
ゴールした瞬間、手を取り合って喜びあった。
見事勝利した「スマイルトゥモロー」。
正にビギナーズラックだった。
何と驚いたことに、せっかく応援するんだからと、実際の馬券も2万円
購入していた。後先の10万に実馬券の20万円。たかが2分そこいらで、
30万円を手にしたのだから、美和の変わり様といったら他ならない。
競馬に嵌まる瞬間だ。
「マスター。来週は何があるの?」
それを聞いたマスターは
「ダービーだけど・・・。美和ちゃん・・・たまたまだって。」
そう言うマスターの声は、美和には聞こえてはいない。
「ダービーか〜」
もう目はダービーへ向けて一直線だ。
日曜は休業だというのに、「jackpot」には、いつものメンバーが集まった。
「美和ちゃんの勝利を祝してカンパーイ!!」
そう、コウシャクが音頭をとる。
「まぐれで当たっちゃいました〜」
そういってVネックのニットから張り出したバストが大きく揺れた。
コウシャクの自慢が始まった。
「もち時計ナンバーワンのユウキャラットが残り400mで同じラップを刻めば
負けるはずがないのに。ただ、当日池添に不安を感じてワイドで厚く美和ちゃんの
推奨の馬に貼ったわけよ。」
重馬場を想定していた高橋においては、馬場が良で頭の中が真っ白になったとか。
馬を尻を見て、美和の尻を想像したかは定かではないが、オースクだけに彼女の
買う馬が気になって単勝を1万円買ったとか。
黒川も
「ビギナーの買目は乗っておいて損はない。ビギラーズラックがあるからな」
この男も口には出さないが相当儲けた口だろう。
損したのは田島と健ということになる。2人はしょんぼり肩を並べて飲んでいた。そこへ察してか美和が隣の席に座った。
「田島さんって、競馬記者なんでしょう?。ダービーはどの馬がいいの?」
そういって肩を寄せてくる。
「まあ、記者といっても競馬のことは良くわからないし、美和ちゃんの
方があたるって。」
そういってお茶を濁す。
「健さんはどの馬狙ってるの?」
「俺?俺はね〜武のタニノギムレットさ・・・・・・」
と話術に長けた美和のペースに嵌まり、すかっり負けたことこも
忘れるほど、場が和み笑いか起こる。
「やだ〜〜」
と言っては肩を叩き、胸を腕に押し付けてくる。
理性がなくなったところで、携帯の電話番号聞きまくり、あっという
間に全員の番号をメモリーした。
お開きになって翌週。
店で肩を落とす美和がいた。なんでもダービーで
「ゴールドアリュー」の単勝をしこたま買ったらしい。
美和を慰める健は、こころから彼女の力になりたいと思った。
「ね〜え健ちゃん。今度はどの馬が来るの?」
「う〜・・エイシンプレストンかな?・・・・」
混戦の安田記念。健はまだまだ決めかねていた。
「健ちゃん。お金貸してよ」
そう言って胸を腕に押し当ててくる。
「利子は体で・・・・」
その甘い言葉とVの字に開いた胸の谷間に目がくらみ、
5万円貸してしまったとか。
それから2週間が過ぎても彼女と連絡が取れないと健から泣き
の電話が入ったのは、プロキオンSの原稿をまとめている頃だった。
「田島さん・・・聞いて下さいよ・・・」
「なんだよ、健。今忙しいんだよ〜」
「美和ちゃんと連絡が取れなくて・・・・」
「そういう相談は、コウシャクが黒川さんにしろって」
「いや、もう2人には・・・」
今にも泣き出しそうな健に負けて、その夜会うことにした。
さて、原稿のプロキオンSだが、◎スターリングローズで軸は鉄板だろう。
ここは、相手探し。○サンフォードシチー▲シンコウスプレンダ
△ブラウンシャトレー△ゲイリーイクシード△メイショウキオウ。
◎流し。
グットラックだ。