コウシャクの講釈
木々が色づき夏の匂いがし始めたこの頃、
コウシャクも相変わらず馬券に奮闘していた。
ここ「JackPot」で最近変わったことと言えば、黒川の姿が見えなく
なったことくらい。
「マスター。黒川さん最近見えないけどどうしたの?」
そうコウシャク。
「なんでも覚せい剤所有者だが、密売者だがを夜逃げさせて、
それで警察に目を付けられたらしいよ・・・」
そうマスターが洗いものをしながら言う。
「ふ〜ん。捕まったの?」
「いや、それでほとぼりが冷めるまでどこかに隠れているらしい」
「あの人も随分危ない仕事してきたな〜。」
「美味しい仕事といえば、危ない仕事だし、そういう仕事の依頼は絶えなかったみたい。」
「ああ、そういえば健から聞いたんだけど、何でも犯罪者の逃亡資金つくり
の依頼とか受けてたらしいよ。例の女子高生拉致の犯人から逃亡資金の依頼を受けて、
犯人が撮影したブルセラビデオなんかも無修正で販売してたとかいってたな。」
「裏本、裏ビデオ業者と同じじゃないか!」
コウシャクが驚いた声を上げた。
「まあ違うところは、自分で作って販売するわけでなく、関西の専門業者
にマスターテープごと売り渡す。上物やハードなものだど結構な値になるらしいよ。」
「よく、ネットで出回ってるあれか?」
「まあそういうものだね。」
「自分で販売したらもっと金になるだろうに・・・」
「そういう足が着き易い仕事はしないのさ」
「ふ〜んそんなもんかね・・・」
「ところでコウシャク、安田記念の見解は?」
そうマスターが話を競馬に変えてきた。
「逃げ・先行馬が多いな。そこにメイショウの参戦。かなりタフな流れが予測される
だけに、差し・追い込み有利の展開が一般的な読みだろうな」
「なるほど。」
「その上、意外と力差のないメンバーだな。ファインモーションはG1を2勝だが、
いずれも牝馬限定戦。テレグノシスとイ―グルカフェのG1勝ちは3歳のNHKマイル。
後者はJCDと異質なG1勝ちのおまけつきだ。」
「ツルマルボーイはG1で2着3回だったな。ローエングリンがG1で2着したのはムーラン
ドロンシャン賞。日本でのG1連対はないしなぁ。」
「そうそう。つまり、ピンとくるG1を勝った馬はいないわけだよ。」
「混戦だなぁ。コウシャクはどの馬からいくのよ」
「俺か・・・。俺はバランスオブゲームを狙ってみたい。」
「え?なに??バランスオブゲーム?」
そうマスターがすっとんきょな声を上げた。
「今週から出現した内ラチ沿いから6メートルのグリーベルトの存在が去年以上だ。
今日の後半のレースでは約4頭分のグリーンベルトに殆どの馬が密集、外をまわった馬の連対はなかったよ」
「先行有利なのか?ハイペースで追い込み有利じゃないのか?」
「昨年を思い出せよ。京王杯を快勝して人気を集めたテレグノシスは、外を通って伸びきれなっかったんだ。18頭立てのフルゲートだけに差し、追い込み馬には厳しい条件だ。」
「なるほど・・・」
「バランスは、毎日王冠レーコード勝ちをはじめ2,3歳時には左まわりの新潟で強い競馬をしているのを忘れたのか。府中1600という条件が最大の魅力だし、雨でこの馬よりキレのある馬の末脚が削がれる今回はチャンスありだ。」
「凄い自信だね。」
「まあね。コウシャクなら負けねぇよ」
「はははぁ・・・」
グラスの氷が解けてなくなり始め・・・コウシャクトマスターの夜は更けてゆく・・・