勝負再び(皐月賞)

翌週、JackPotに現れたコウシャクは、開口一番
「俺の実力をみたか!」
と意気揚揚に微笑んだ。
「たまたまじゃないの?」
そういう美和の突っ込みにも一目もくれずにバーボンのボトルを入れる。
6万円が入った封筒をスーツの内ポケットに入れ、変りにマルボロライツを
取り出す。オイルライターで火を着けようとしたら、すかさず美和を火を
差し出した。美和を火を吸い込みひと吹かしする。
「見事だったなコウシャク」
そう黒川が言うと
「さすがコウシャクさん」
と健も続く。
照れた様に笑うコウシャクもまんざらでもなさそうだ。
「まあみんな飲んでくれ」
その一言でコウシャクのボトルを開ける。
「今週の皐月賞も混戦だよな。」
そう健がいう。
「そうだな」
「やるか!倍付けで!」
そう黒川が言うと6万が手元にあるコウシャクは軽く了解した。

渋谷の喧騒から少し遠ざかったここは恵比寿のとあるダイニングバー。
若いカップルもみられるがだいたいは落ち着いた中年カップルや
わけありカップルが多い。
赤ブチ眼鏡の長瀬のマネージャーが田島に長瀬との関係を解消するように諭した。
彼女にヒステリックな声を上げられては困る田島が選んだ場所だ。
「男と女の関係は切っても切れない縁ってものがある。
それを事務所のためだけに切れないよ」
「事務所のためではないわ。彼女のためよ」
「本当に彼女のため?彼女は別れたがっているのか?」
「そうよ。彼女は今絶頂期。仕事が忙しくて恋どころではないわ」
「彼女はそうは言わなかったな」
「週刊誌も気づいてきたのよ。フライデーされてからじゃ遅いわ」
「ばれないようにやるさ」
「いやもう遅いわ・・・ばれてるの。写真を買えって話が来て事務所で買い取ったわ。
これよ・・」
そう言って彼女は写真を差し出した。

そこには田島と長瀬が並んでホテルに入る姿と出る姿の写真が2枚差し出された。
なにも言えなくなった田島に追い討ちをかけるように、
「1000万で買い取ったわよ。あなたに払えて?」
「・・・・・無理だ・・・。」
「だったら彼女と別れることね。今スキャンダルが表に出たらスキャンダル女優として
ヌードにでもなるしかないわ」
「裸になったからって売れる時代じゃないだろう」
「どっちにしても人気が落ちるんだから、そうでもして食い止めないとしょうがないでしょう。
本人気持ちもあるけど・・・」
「わかったよ。別れるよ。」
そう口にする田島だった。
「じゃあこれにサインして」
そう言って彼女は契約書を取り出した。
「まあそう言う硬い話は後にしよう。まあひとつ・・・」
そう言ってワインを勧める。進めらるままに飲む赤縁眼鏡。
「眼鏡を取ると女っぽいのに・・・」
そう言って彼女の眼鏡を外した。一瞬驚いた彼女はキャっと小さな悲鳴をあげた。
間髪入れずに肩を引き寄せ、唇を奪う田島。
「ちょっとなすんのよ。どういうつもり?!」
「あまり君が女っぽいので・・・」
「そう言って誰とでもキスするの?」
「誰とでも?心外だな。俺はきれいな女としかしないよ」
女っぽい、きれいな女、普段言われたことのない言葉とワインに酔いしれて、彼女は
体を預けた。
「あ・・・ここじゃだめ。私の部屋に来て・・」
「ああ・・」
マネジャーと田島は店を後にした。


その頃JackPotでは、コウシャクが「ネオユニバース」を
黒川が「テイエムリキサン」を健が「サイレントディール」を
高橋が「ラントゥザフリーズ」をそして美和が「エイシンチャンプ」を
コースターに書いた。集まった10万とコースターをマスターが金庫にしまう。
「ところで若菜ちゃんの◎は?」
健が尋ねるとマスターが
「ネオユニバースだったかな?・・」
と答えた。
「まあ妥当なところだろうな。」
「相変わらず田島さんは来ないのかい?」
「そうだね・・・」
競馬と田島の話題で今日も更け行くJackPotの夜だった。