東京の北の玄関口,上野駅は1932(昭和7)年に開業した.
「玄関口」ということなら東京駅だってそうだが,どうもぼくには東京駅より上野駅の方がなじむ感じがする.それはぼくの生まれが札幌,育ちが盛岡のせいもあるだろう.どうも北方指向が強いらしく,帰省は当然として,旅行に行くのにもなんとなく東北や北陸方面を選んでしまうことが多い.だから上野駅を利用する機会も自然と多くなるのだ.
それに東京駅の周りは皇居や丸の内のオフィス街,かたや上野駅の周りは上野公園やアメ横だから,やっぱり上野駅の方が庶民的な分,なじみがいいんだと思う.

装飾のないそっけないスタイル.「優美」とはとても言えないけれど,でもクリーム色の塗装のせいか,駅舎はどことなく優しい感じがする.いかにも荘重な東京駅とは好対照だ.
中央改札上の大壁画.画面ではわかりにくいがスキーヤーや猟師,果物かごを抱えた女たち,傘を差した子供,牛馬,魚をさげた女などの姿が描かれている.描かれたのは1951(昭和26)年.1984(昭和59)年に修復が行われている.
時代を思わせる小物たち.装飾が美しい窓格子(左)と幾多の手に触られたためか先の丸いところだけが光っている階段の手すり(右).でもこれはまだ序の口.
 
中央玄関口内のコンコース.一見なんでもない,きっぷ売り場とテナントがあるだけの広場に見えるが,ちょっと見上げると,二階部分は当時の雰囲気がそのまま残っていたりします.
間接照明がいい雰囲気を出していると思う.
中央玄関口の柱と街灯.柱の一本には「建物財産標 昭和9年」の銘版が貼ってありました.
しかし中央玄関口なんで,本当なら一番明るく風格があってもいいと思うのだが,なぜか薄暗く寂しい感じになっているのがおしい.
 
天井がとても低い場所があります.
左は中央改札に向かう途中にあります.油断すると頭ぶつけます.
右は地下鉄銀座線に通じる地下通路.天井が低いのは当時の日本人の身長にあわせてなのかしらん.
時代の要請に応じて増改築を繰り返し,新幹線まで通ってほとんどキメラのようになってしまった巨大なこの駅にも昔の顔は残っていた.それもふだんは通りすぎている場所から,ほんのちょっと視線を変えるだけで見つかってしまったりする.それがまたおもしろい.
(1997.4 記)
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