同潤会清砂通アパート
〜“街”を作る〜



深川,清洲橋通り沿いにある清砂通アパートは1927(昭和2)年から1929(昭和4)年に竣工された.
ここを訪れて驚くのは敷地面積の広さである.三ツ目通りと清洲橋通りが交わるところにあるアパートだけかと思っていると,少し離れた区画にアパート群が建ち並んでいるのだ.その数,16棟663戸.同時期に公園や小学校も建てられており,ここが単なる集合住宅を建てるだけではなく,一つの新しい街を作り上げるプロジェクトだったと理解されよう.
一号館全景

一号館階段室
三ツ目通りと清洲橋通りが交わるところに建つ一号館.コンクリートそのままの色,コーナー部の階段室と円柱で支えられたその屋上,四階の二ヶ所に申し訳のようにつけられたメダリオンと,他と比べてあまりにも特徴的なデザインである.さすが第一期の,しかも表通りに建つ建物というべきか,さまざまなデザイン上の冒険が行われたということなのだろう.

その一号館の階段を見上げる.美しいシルエットのらせん階段.

一号館裏庭そんなモダンな表側のデザインだが,裏に回るとやはりアパート,ポリバケツやリヤカー等が置かれ洗濯物が干されている,ちょっと雑然として生活のにおいのする中庭があるのだ.

表通り沿いの建物三ツ目通りの反対側にもアパートは広がる.表通りに面したこの建物はデザイン上の起伏の少ない“現代的な”風情ではある.そのせいもあってか,ここを訪れた人の中には一号館だけを見て帰ってしまう人もいるらしい.

一歩裏通りに入ると,昔の建物らしいよい雰囲気が広がる.

裏通りの建物一号館から一番離れたところに建つ二期工事のアパート.最近手を入れたのかどうか,あまり古ぼけた感じがしないのと,ちょうど夾竹桃の花が満開なのとが相まってなんともさわやかな感じがする.
このあたりの建物は棟によって土壁色やピンク色に塗り分けられているのがおもしろい.

十号館十号館.円柱とアーチ(の半分)で構成されたバルコニーが特徴的.こういうデザイン的な遊びがまたよいのですな.

八百屋さん八百屋さん.店主もまたここの住人らしい.こういうのも自給自足っていうのかな.

通り抜け五号館の入口

写真左:三号館の階段室下をアーチに仕立て,通り抜けられるようにした路地.同様のもの(ただしアーチのデザインは角型)が七号館にもある.
写真右:五号館の入口.アール・ヌーボー調のレタリングのプレートがよい.

ここの建物は,棟にもよるが管理状態がよくまだまだ現役でいけそうなものが比較的多いのではないかと思う.それでもやはり建て替えの波を防ぐことはできないのだろう.しかしこれだけの面積である.単に建物の新築というわけにはいかず,そこには自ずと新しい都市計画ということがついて回る.現代の都市計画は今まで彼らが育んできたコミュニティをどう取り込んでいけるのか,興味深いところではある.
(1999.05記.写真は1997.05撮影)