上野〜稲荷町 (2)
〜下町のモダニズム〜



((1)から続く)ここでは一歩裏通りに入り,看板建築を中心に見ていこう.

"A"のロゴがおもしろい銅貼りがみごと

写真左:六角形に"A"のロゴがなんともおしゃれである.
写真右:屋根だけが和風,その他は洋風といった風情だ.しかし窓枠のアーチ状の飾りといい,銅貼りの美しさといい,見事なものである.

文具の卸売り?ここは文具の卸売りか何かだろうか.
全体としてはシンプルなフォルムだが,窓枠や屋根の装飾がギリシャ・ローマ風(そう「風」なのです)の雰囲気を醸し出していると思う.

目立たないが装飾付きのビル一見ちょっと廂が目立つ程度の何の変哲もない建物だが,建物の角や窓の上に紋章風の飾りがついている.

柱が二本立つ建物これもギリシャ風の演出なのか,二階にトスカナ風?の柱が二本立っている.

布袋のある薬局 布袋のレリーフ
ネズミの模様 ネズミと米俵?の模様

ここはちょっと凝っている.店のてっぺんには屋号に合わせ布袋のレリーフがついている.ただこの布袋,妙に人間臭いというか,あまり笑いが福々しく感じられないのですが.
さらに窓枠のアーチの下には,真ん中には米俵とネズミをあしらったようなレリーフが,他の4つには横向きのネズミのレリーフがついている.
しかしなぜ布袋とネズミなんだろう.大黒なら米俵 → ネズミの連想だとわかるのだが.

装飾がすごい建物子どもの顔の装飾

極め付けはこの建物だ.一階玄関の廂は,お寺の屋根の曲線だけを取り出したような造りだし,二階は角柱の付け柱に子ども(天使?)の頭の像,三階(実際には屋根裏部屋)はカマボコ型の壁に円い文様のようなパターンをつけているといった具合である.
何かすごいモノを見てしまった気がする.これを造った大工さんが,当時流行っていたデザイン要素を見よう見まねでくっつけていったら,期せずしてアバンギャルドになってしまった,そんな感じがするのだ.

看板建築を見ていて楽しいのは,銅貼りの深い緑の美しさということもあるが,何よりデザインの多様さというところにある.デザインの専門教育を受けていない大工たちが,思い思いの様式の解釈や創意工夫でもって作り上げたモノは,様式建築にはないオリジナリティにあふれていて素敵だ.
そして街の中にさりげなく存在しているそれらの建物を「発見」するのがまた無類の楽しみだったりもするわけなのである.
(1999年6月記.写真は1997年5月撮影)