清澄庭園の裏あたり,清澄通りに沿って長屋風に商店が並んでいる風景が続く.それが旧東京市営店舗向住宅だ.1928(昭和3)年,東京市が関東大震災の復興事業の一つとして建設した.同時期にやはり震災復興を目的に,同潤会が深川のあたりにアパートメントを多数建てていたことから,この住宅も同潤会の手になるものと思っている人もいるようだが,それはまちがいである.

個々の住宅は二階建て,幅二間半と統一されているが,屋上が好き勝手に増築されているのはこの頃の庶民の建物の得意技といってもいいくらいだろう.
また店舗向けというだけあって一階部分のデザインなどは商売にあわせて個性的というかバラバラだ.
ただ二階については,屋上部分の直線模様は共通になっているし,窓辺りのデザインも,商店によっては付け柱を施した個性的なものも見られるものの,一本通じるものがあって,それが建物全体に一体感をもたらしていると思う.
裏側の木々は清澄庭園のもの.借景ではないがちょっと贅沢をしている.
建物は数戸分が一体になった棟割長屋になっており,各棟の二階端には幾何学模様のレリーフがついているのが個性的だ.屋上部分の直線模様など,同じく東京市が建設した古石場アパートの二期工事の建物に通じる部分があると思えるのだが,設計者に同じ人が参加していたのだろうか.
鉄筋コンクリート製とはいえ,今どき長屋が約50戸という規模で,大きな変化もなく残っているというのはすごいことだと思う.
昔は屋上が端から端まで一続きだったという.そんな,ゆるやかな共有感覚が建物と共に残っていけばいいと思うのである.
(1999年7月記)
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