−看る・聴く・トライする−
「女性の生涯を通じた心と身体のケア」をテーマに「非常識」を「常識」にかえた20年
〜自分らしい人生を送るために女性自身を励まし、社会に訴え続ける〜
「非常識」を声に出す
20年前、ほとんどの家庭において「母親」は、夫と子どものために家の中で家事に専念。子育てが終わると「母親」は「介護の担い手」となり、年老いた親の面倒を看る・・・それを社会、そして女性自身さえも「常識」と考えていました。
しかし、教育の上では「男女平等」教育が浸透し、多くの女性が高校・大学と学び、余暇を満喫、海外旅行だって経験しています。でも、女性にとっての壁はそこから…。
「就職は腰掛け」「結婚したら家庭に入る」「寿退社」「子どもができたら、子育てに専念。」「3歳までは子どもを他人に預けてはいけない」「介護は嫁のつとめ」これがみな常識とされていました。
さあ、自由を謳歌してきた女性たちが、この「常識」をあっさり受け入れられるでしょうか? 「なんだか変だなー、やっぱり変だよ」と思いながらも「非常識」と非難されることを口に出すのは勇気がいることです。「その気持ちを声に出そうよ」そこからマザーリング研究所の20年はスタートしました。
1.「育児だけではない人生を!」
「母親に対する情緒支援」
ストレスをかかえる母親の声に耳を傾け、共感すること…それだけでも、母親の気持ちは安定します。つまりこのような方法で、新しく母親となる人に対し、その母親のように優しく接する(その人をマザーリング・マザーといいます)ことで、マタニティブルーや育児ストレスに代表される育児不安は軽減できます。このような「母親に対するマザーリング」の必要性を実感し、マザーリング・マザーを養成。
「母親同士の育児相互支援システムの構築」
同じ悩みをもつ人同士が話をすることは、専門家がアドバイスをするよりもときとして効果をもつ場合があります。いわゆるピア・カウンセリングの概念です。これが育児ストレスをかかえる母親たちに有効であると考え、各地で育児グループの先駈けとなる活動を展開。また、その概念をつかった育児相談システム(電話相談・手紙相談)を構築。
「3歳児神話」の打破
女性が社会に出ることの最大の壁は「子どもを預ける」こと。「子どもを預けること」に対する女性自身の罪悪感と、社会の冷たい風潮。そこで、各地セミナー等を「託児付き」にし、女性自身に「子どもを預けてもいいんだ」ということを実践の中で理解してもらいました。一方で「3歳児神話なんて気にしない」を発行、講演活動、メディアの中で社会全体に発信していきました。
「社会の受け皿としてのボランティアの養成」
「自分の育児経験を誰かの役に立てたい」…つまり誰かのマザーリング・マザーになりたい、そう考えている女性たちが、その思いを実践できるよう「シッティング・ボランティア養成講座」を開講。受講終了生の活動の場として、「国立小児病院」でのシッティング・ボランティア活動を実践。成育医療センターでの、医療ボランティアの本格導入につなげました。
2.「母子保健から女性保健への転換」
これまでの女性に対する保健行政は「妊娠・出産・育児」だけを対象とし、更年期に関して触れられていなかったため、更年期を迎えた女性は周囲の理解のないまま、心身の不調に耐えるしかありませんでした。これに対し、厚生省心身障害研究班「女性保健に関する研究」分担研究員に就任した際に、母子保健行政の中に「更年期の女性の健康問題」を取り込む必要性を提言。その後、この更年期問題がマスコミでクローズアップされ、社会全体の健康意識を高めるきっかけとなりました。
3.「介護」は女性のものではない
育児は夫婦で乗り切れても、介護はそうはいきません。育児はトンネルでも、介護はブラックホール。
家族に介護者がでると、多くの女性はそれまで続けていた仕事をやめざるを得なくなったり、自分自身の体調を崩してしまったり…。
「介護は子ども、ましてや嫁の義務ではない」ということを、女性自身にも、そして社会にも訴え続けます。介護保険制度はまだはじまったばかり。「マザーリング」の実践もまだまだこれから…。
4.「医療と生活者」の架け橋
女性(に限らず生活者すべて)が、輝いて生きるためには、その心と身体の健康をバランスよく保つことが前提。しかし、たとえ身体の健康が損なわれても、自分らしく生きることをあきらめてはいけません。そのために、医療関係者は患者の家族を含めた生活全体をよく知るとともに、患者も医療についてもっと理解を深めることによる信頼関係がなくてはなりません。今までのように医師は専門家として「診てあげる」立場、生活者は患者として「診ていただく」立場では本当の意味での信頼関係は築けません。医療関係者には、特に看護職の立場の人には、患者の疾患だけではなく、その気持ち、そして看護や介護をする家族へのケアまでが求められています。
まずは、生活者の立場で医療関係者に「生活者の気持ち」を伝えていきたい。 そして、医療のことをもっと生活者に理解してもらいたい・・・それが医療ボランティア・セミナー、そして成育医療センターでの、医療ボランティア導入の架け橋としての仕事となっています。医療ボランティアは、健康なときから地域の病院に親しんでもらうことで、医療と生活者の架け橋になるために必要な活動であって、すべての病院でのモデルになるようにと考えています。
5.終わりなき社会の看護実践
「子どもを預けて働こう!!」…20年前には非難轟轟だったはずが、今や「フレー!フレー!」の社会。各地には当たり前のように、育児グループ・育児サークルができて、母親たちが生き生きと活動しています。自治体だって、託児つきで、母親向けのセミナーを開催しています。育児における20年前の「非常識」は「常識」に変わりました。まず、女性自身が変わり、続いて社会も変わりました。育児における「マザーリング」は成功、これから自発的に浸透していくでしょう。
次は、介護を含めた医療の分野に目を向け、今後は一人の看護師として、在宅での死を看取る『家族機能の調整』『心のケア』を主眼とする地域活動・在宅訪問活動を展開していきたいと考えています。いつか患者さんにとっても、家族にとっても、優しさと納得に満ちた看取りができるナースになれるよう努力していくつもりです。