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予 備 知 識


Pendragon Papers
『ザ・ペンタゴン・ペーパーズ(原題)』 は、ベトナム戦争で米国政府が国民を欺いていたことを内部告発したダニエル・エルスバーグ博士を描いた、実話に基づくテレビ映画です。 放映日は 2003 年3月5日  -----  おりしも米国・英国の対イラク戦争が避けられそうにない……という、ある意味で絶妙のタイミングでの放映に、新聞や雑誌でいろいろ取り上げられ、おおむね好評を得たようです。

Daniel Ellsberg, 1998
でも、スペイダーさんが演じるダニエル・エルスバーグ博士って、どんな人物なんでしょうか。 お恥ずかしい限りですが、スペイダーさんがエルスバーグ博士を演じると知るまで、私はこの方の名前すら、まったく知りませんでした。 そこで、せっかくのチャンスですし、作品を堪能するためにも、少し勉強をしておくことにしましょう。






ダニエル・エルズバーグ博士の著書 "Secrets: A Memoir of Vietnam and the Pentagon Papers" のオフィシャルHPでは、博士の詳しい経歴が読めるほか、紙面の都合でカットされた原稿や博士自身がベトナムで撮影した写真などが掲載されています。最近のインタビューなども聞くことができます。 Click here! Secrets: A Memoir of Vietnam and the Pentagon Papers


エルズバーグ博士
イラク戦争に抗議し、ホワイトハウス前の公園に座り込んで逮捕を待つエルズバーグ博士(AP)

【 朝日新聞 (夕刊) 】 2003 年4月 23 日(水)

内部告発とアメリカ(4)  「真実への責任」訴える
 
「政府の中にいるだれかが、私の逮捕に勇気づけられて、イラク戦争に関する情報をもっと多く外に伝えてくれることを望む」

 開戦から1週間目の3月26日、 反戦を訴えていたダニエル・エルズバーグ博士(72)が逮捕された。 ホワイトハウス前の公園から退去しなかったという容疑だった。
 その日、 米政府職員に内部告発を呼びかける彼の言葉が、 通信社により世界に打電された。
 34 年前、 政府のエリートだった彼に、 ベトナムへの泥沼の介入の実態をつづった国防総省秘密文書を暴露させたのも、徴兵拒否による収監をいとわない若者だった。  

「彼と会って私は決意した。 どんな災難が降りかかってきても、 戦争を終わらせるために、 非暴力でやれることはすべてやろう、と。 真実と人命に対する責任、 そして憲法への忠誠が、 大統領へ個人への忠誠より大事だと気づかせてくれた」

* * *

海兵隊で兵役についた後、 ハーバード大学で経済学博士となった。 国防総省の国際安全保障問題担当次官補の特別補佐官などを務め、 ベトナムに派遣された。
 著書 「秘密 ― ベトナムとペンタゴン・ペーパーズの回想」 によれば、68 年には政府の内部にいる同僚の多くがベトナム戦争の行方に懐疑的だった。 しかし表に出て、真実を語る気はなかった。
 若者との出会いに触発された 69 年秋、 政府が国民を欺いてきた歴史を克明に描いた秘密文書のコピーを始めた。 71 年6月、 その文書は新聞に掲載された。 逮捕され、 スパイ罪で起訴された (73 年に公訴棄却)。
 ベトナム戦争が終わったのは 75 年。 「もっと早く文書を公にするべきだった」。 そのぶん戦争を長引かせ、 人命を失わせたと今も悔いる。

* * *

エルズバーグ博士の暴露やウォーターゲート事件を背景に、 米国では公務改革法が 78 年に制定され、 連邦公務員を対象に内部告発者を保護する制度が設けられた。  

「残念ながら、あまりうまく機能していない。 本気で内部告発者を守ろうと考えるなら、 だれが法を解釈し、だれがその執行をモニターするのか、 制度の運用に注意するべきだろう」

 81 年には、米国は核戦争の際に日本を核攻撃の基地とする方針だったと暴露した。

「岩国の沖合いの揚陸艦に核兵器が積まれ、事故や破壊工作の危険がある。日本人はその事実を知る権利がある」

 内部告発について、 エルズバーグ博士は言う。

「必要不可欠なのに、たいてい不十分だ。そして、しばしばタイムリーでもない。私がそうだった」

政府から十分な量の情報がタイムリーに漏洩されていれば、 ベトナムであれほどの人が死ぬことなく、 イラク戦争も防げたと彼は考える。 だからこそ、今も呼びかける。  

「原発、たばこ、車の安全、そして戦争と平和。 多くの人命がかかわる場合は、報復される危険があっても、私たちはみずから進んで危険を冒し、 組織の外に向かって真実を話すべきだ」

 イラク戦争開戦の 18 時間後、 ワシントン郊外の事務所で、彼は朝日新聞の取材に語った。 そして雨の中、ホワイトハウス前の公園に向かった。 国家への「より高い忠誠」を政府職員に訴え、 逮捕されるために。


エルズバーグ氏について記述のある日本語のHP

『ベトナム戦争人物名鑑』
『「アメリカ」が知らないアメリカ』書評・紹介(4)
『通信回線の中のビッグブラザー デジタル時代の盗聴』
『内部告発者の道徳』


Q-and-A with Daniel Elsberg
エルズバーグ氏と高校生とのEメールによる対話です。 「行動を起こそうとした一番の理由は何だったのですか?」、 「機密を漏らしたあと、逮捕されたのですか? 今日の生活への影響は?」、 「機密を漏らしたことについて、何か悔いはありますか?」、 「あなたの行動を支持したのは?  反対したのは?」といった、高校生たちの素朴な疑問にエルズバーグ氏が易しく答えています。

Conversation with History
エルズバーグ氏の広範なインタビューが映像つきで見られるサイトです。 ただし、かなりの量なので、ちょっとキビシイかも。





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