トランスジェンダーはインターセックスか−−戸籍訂正をめぐって

真樹子

 近年、性同一性障害について、脳の性分化説の立場から、脳の構造がそのほかの身体の性別とは反対であるのが原因であるとか、あるいは遺伝子レベルで、性同一性障害を惹き起こす遺伝子が発見されたという、物質的な議論が医学界で盛んになっている。もし脳に性別があるなら、また脳が生殖を司るなら、脳も端的に「性器」であるといいうる。すなわち、性同一性障害は、出生時には身体的性別が未確定であって、その後の身体的な検査により性別が判明するという意味で、限りなくインターセックスに近づく。実際、八月に来日したミルトン・ダイアモンド博士も、トランスセクシュアルはインターセックスの一類型である、とその講演の中で言及している。
 このことを、戸籍訂正問題と照らし合わせてみるとどうか。すでに広く知られているように、インターセックスについては戸籍上の性別(続柄)記載の訂正が比較的容易に認められる。このため、実務上、トランスジェンダーについても、インターセックスに準じて、脳の物質的な側面から性別を証明できれば、戸籍訂正が認められる余地がある。実際、このような処理は、戸籍法113条の「訂正」の文言の素直な解釈に整合する。
 もっとも、心理的要素を含めて、すべてを身体的性別に還元する理解には問題がある。
 第一に、性同一性障害を持つ者のすべてについて、脳の構造や遺伝子に、典型的男性や女性との差が認められるのでは、恐らくないということがある。加齢を経た後に発現する二次的トランスセクシュアルや、性同一性障害の周辺群である性別違和症候群(ジェンダー・ディスフォリア)については、差が認められない場合が多いと思われる。このため、かかる理解からは対象者が非常に限定的になる恐れがある。
 第二に、これはインターセックスについても問題になりうることであるが、身体的性別にすべてを還元すると、本人がこれからどう生きたいか、という自己決定をはさむ余地が極めて制限されることである。それどころか、113条が訂正請求者を本人でなく「利害関係人」としていることからして、本人でなく親族や検察官等により訂正請求がなされる恐れが、少なくとも法文上はある。
 このため、113条を個人のプライバシーの権利(情報コントロールの権利という意味と、自己決定権という意味の両方において)の発現とみる立場からは、医学的理解とは別に、社会的意味での性別を考慮して、同条を解釈すべきと考える。

(Sep.2001)


ジェンダー・トップへ

(C) Makiko T's Website