真空管アンプ製作の現状
60年代 懐かしの宝箱

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200911.23

■1950年代から1960年代の半ば
 電流増幅であるトランジスタによるアンプにまだメリットが見出せず、良い
トランジスタデバイスに恵まれなった頃は真空管の天下でした。もちろんメ
ーカー製のアンプは真空管であり、そうした一流どころがキットまでを出し
たりしておりました。
 そうした意味ではメーカーとアマチュアが近いところにいた時期でもあり
ます。たとえば例示するような本にはトランジスタによるアンプで高音質で
出力の出るものは期待できないだろう・・・と実際に書かれています。当然
普通のアマチュアのアンプ製作も管球式でした。長岡鉄男さんの著作のな
かで、電蓄の時代の思い出として書いています。スピーカは口径16cmク
ラスを合板で作ったボックスに入れ、アンプは管球で作って・・・最近の真
空管アンプ入門本に出てきそうな構成です。

■1960年代後半
 メーカー製のアンプに「ソリッドステート」の文字がおどりはじめると、トラ
ンジスタアンプも改良され、そのメリットも出てまいります。メーカーが率先
してトランジスタアンプを出したこともあり60年代の終わりにはほとんどトラ
ンジスタ化されて行きました。
 この時期、真空管は最終段階にあり、大出力のビーム管などが幅を利
かせ、逆に3極管への回帰が起こりますが、真空管の入手が難しくなって
行く時期でもありました。インピーダンスの低いトランジスタにとっては出力
トランスが排除できること(OTL)はコスト・特性では大きなメリットでした。
 この頃の真空管アンプ自作は真空管時代の後期に開発されたビーム管
による大出力派、3極管復古と、新型の3極管(50C-A10、6RA8など)に別
れ、一方で、真空管によるOTLアンプなど大変多彩な時期でもあったので
す。WE300Bなども名前は聞くもののその姿は秋葉原でもまず見かけるこ
とはありませんでしたし、2A3でさえすでに見ることは稀になっていました。

■1970年代
 時代は完全にトランジスタへ、そしてFETなどを使ったアンプへ進みま
す。また回路に関して、単なる全段直結ではなく、出力コンデンサーの排
除(OCL)、デバイスの改善により、対称性の高いものができるようになり、
トランジスタのメリットを生かしたアンプが登場して、大出力も可能な時代に
入って行きます。トランジスタによるDCアンプ、対称性の高いダイヤモンド
回路、そしてA級アンプなどが登場。さらに演算増幅器と言っていたOP(オ
ペ)などもオーディオで使われるなど様変わりして行きます。一方で、マル
チアンプ(バイアンプ)は60年代からありましたが、さらに4チャンネル時代
を向かえ、再生に多くのアンプが使われる時代でもありました。70年代後
半はオーディオがデジタルに向かう時期(D級アンプ、PWMアンプ)でもあっ
りました。この時代は「無線と実験」などの雑誌はもちろん「初歩のラジオ」
にでさえ、海外の高級な球を使った製作記事が掲載されるそんな時代でし
た。

■最近の真空管アンプ製作
 最近(特に2000年以降)大きく変わったのはパーツでしょう。真空管は
ビンテージものだけでなく近年中国やロシア、ヨーロッパで生産されるもの
が入手できるのはそれ以前からですが、反対に真空管用トランスを後年ま
で作っていたタンゴ(平田製作所)が廃業したことでしょう。
 しかしトランスで言えば60年代の主流はラックスでしたし、少年雑誌には
山水のトランスも使われたいた、タムラのトランスは相当大人のアンプだっ
た・・・タンゴが認知されたのは他の製品が入手できなくなった70年代の中
ごろ以降であった記憶があります。
 かつてのタンゴのトランスは現在アイエスオーの製品としてリリースされて
います。旧山水のトランスは橋本電気から販売されているそうですがその
利用度は山水ということではないように思うのですが。


1960年代のオーディオ自作

 自分が電子工作を始めたのは1965年の小学校5年、音楽や音響に
はもともと興味がありましたが、叔父がテレビやラジオを修理していたこと
もあったのでしょうか、気づいたら虜になっていたというところはあります。
 当時はまだどんな本を見ていいかも知れず、学研の初代マイキット、2
代目マイキットオールマイティーをいじりつぶし試行錯誤を繰り返していま
した。誠文堂新光社の工作教室シリーズの「エレクトロニクス」が当時の
教科書でありました。その中で「アンプ」の存在を知った訳です。家のオー
ディオ装置と言えば、まだトランスレス5球ラジオかテレビにセラミックカー
トリッジの針付きプレーヤーをつなぐという頃で、アンプの実態がまだ見え
ないころであったのです。
 まもなく「子供の科学」に行き当たる訳ですが、1965年当時の子供向け
の本、雑誌に出てくるアンプとはトランジスタの2〜6石程度で、サンスイ
の小型入力トランス、出力トランス、時には段間のトランスさえ使うもので
あの小型トランスに巻かれたビニールテープの青や緑はいまだにに脳裏
によみがえります。
 おそらく、当時「トランジスタ技術」を見れば、入出力トランスレスのアン
プが出ていたでしょうし、「無線と実験」「ラジオ技術」には管球式のアンプ
が出ていたのでしょう。

 60年代後半になると、「初歩のラジオ」「ラジオの製作」と言った本に出会
いますが、真空管アンプが全盛で、6AR5、6BM8と言った出力管が多く、
大きな出力となれば6L6GC、いずれもシングルでした。

 たまたま駅前の古書店で「ラジオ技術」が安く売られており、当時最新の
50CA10 や、市場ではまず入手の難しかったWE-300Bを知るところになり
ます。当時の教科書としていたのは1950年代の本であったため、2A3 な
どの直熱管出ておりました。

 60年代の末期前までトランスはまだ銘柄を知らず、秋葉原の店頭見か
ける、ラジオ用のものでした。

 その頃(1968年?)より少しづつ気づいていましたが、出力管にグループ
があることです。それが「3極管」でした。
 誠文堂新光社の「3極管アンプの製作」という本を手にして、氷解した訳
です。冒頭の浅野勇さんの記事には自分の知らない3極管が沢山出てき
ました。
 そして品位を問えば、出力管だけでなく、トランスも問われる、確かにメ
ーカーはLUX(ラックス)ではないですか。

「3極管アンプの製作」に出てくるアンプ<1967年初版>
出力管 出力回路 トランス ドライブ回路
45 シングル LUX チョークインプット
845 シングル タムラ 6GA4ドライブ
6GA4 PP 山水 アルティック型
211 シングル LUX カソードフォロワードライブ
12A パラレルPP LUX PK分割
2A3 PP LUX トランス結合
6GA4 PP タムラ カソード結合
6BX7 PP 山水 アルティック型
6R-A8 PP タムラ NFBなし
6R-A8 PP LUX アルティック型
6R-A3 SEPP タンゴ OPT付き
350B 3結 PP LUX マランツ型
6F6 3結 PP LUX オルソン
6F6 3結 PP LUX ウィリアムソン
6BQ5 3結 パラレルPP LUX アルティック型
7189 3結 PP 山水 ムラード型
7591 3結 PP LUX ムラード型
EL34 3結 PP LUX マランツ型
50H-B26 3結 PP LUX カソードフォロワードライブ
 
・LUX(ラックス)のトランス
 PP用にはCQ、OY、CSZ、OZ、シングルにSSのシリーズがありました。コ
アボリュームではPP用に、14、15、36の3タイプが有り、シングル用に
は4B、5B、PP用のCQには5B、6Bの2タイプがありました。OYシリーズ
をはじめとする三味線の胴のような形はあまりにも有名。CQ、SSシリーズ
の丸っこい姿もかわいかったです。
 さらにシリーズ・タイプにインピーダンスに種類があるので、ラインナップ
は非常に豊富でした。OYシリーズの価格では、OY-14 3500円、OY-15 
5000円、OY-36 8000円。

・タムラのトランス
 NFB専用巻き線付きで発振など不安定動作を防止する工夫がありまし
た。F−47X、F-48X、F-68X、F-78Xの4タイプ。2800〜5520円。

・山水のトランス
 普及型のBPシリーズのほか、有名なSWシリーズ、Hシリーズ、Wシリー
ズ。価格は1000円〜5130円。

・タンゴのトランス
 今では有名な平田製作所製。CRDシリーズ2種、CRシリーズ3種、COシ
リーズ4種、H型1種、デザインも角ばっていて不人気。60年代の当時とし
てはマイナーな存在でした。価格も1000〜2100円と安価。1次インピーダ
ンスも5,8、10KΩタイプというざっくりしたもの。本当に今の状況を想像
することもできない状況だったのです。

・ATOM(アトム)のトランス
 浅川電機製。10、15、20、30の4シリーズ。

 タンゴのトランスが雑誌などでよく使われようになったのは70年代になっ
て「電波技術」などの雑誌で、その後、無線と実験でも扱われ、70年代後
半になると、非常にメジャーになって行くのです。

真空管アンプ製作の参考書籍、今、昔

 ブログでも公開していますが、真空管の製作はもちろん、出力管の差し替えには当然資料が必要になります。特に真空管関係の参考書を紹介しましよう。「管球王国」のこの号は差し替えにはまさにバイブルです。
 昔の本にも参考書があります。浅野勇さんの本は復刻本が出て、助かりました。
 1960年代〜1970年代当時、真空管アンプの製作記事の多かった「電波技術」は70年代半ばに休刊(廃刊)になってしまいました。
 1960年代後期にはCQ出版もオーディオ系の自作本を出していたことを覚えている方はそう多くないと思います。
 こうした広告も見ただけでも懐かしいですね。1960年代後期の真空管アンプ製作としてはやはりGT管が多く、また3極管に人気があったことがあったことが判ります。GT管の3極管は少なく、6GA4くらいでしたので、当時すでに入手の難しい2A3、MT管の6RA8も採用されています。すでに大出力時代に入っておりましたので、50CA10やビーム管のKT-88なども目にしますが、KT-88は今ほど入手は簡単ではありませんでした。
 この電波技術の裏表紙にはローテルの総合アンプが掲載されています。世の中にあまりに間違いが多いのでここで明記しておきましょう。当時ローテルブランドはローランド電子という会社がやっていましたが、これは楽器のローランド株式会社とは全く無縁の会社です。間違いの原因としてはオーディオ評論家の故長岡鉄男氏の「日本オーディオ史」に記載に誤りがあったことと、創業者がエース電子工業を辞めて起業されたことに起因すると思います。
 



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