10月8日  長井健司さんのお通夜

 長井さんの告別式が今日行われるが、その代わりに昨夜のお通夜に行ってきた。
東京・青山の葬儀所の大きな会場は白菊の祭壇で飾られ、長井さんの少しほほえむような、
寂しそうな遺影が一枚立てられていた。

 僧侶5人による読経の中、ご両親が焼香される後ろ姿が辛そうだった。半身付随でやっと立っ
ていられるお父さんは感情を伏せ、お母さんの顔は悲しみでいっぱいだった。ご親族や参列者
の焼香後、遺体と対面させていただいた。若い女性たちが棺におさまった長井さんとしっかりと
対面していたのが印象的だった。

 通夜の後、長井さんが所属したAPF通信社の山路代表にお悔やみを伝えた。山路さんが
テレビ朝日のニュースステーションでディレクターをしている頃、フィリピン取材を一緒にした時
以来10数年ぶりだった。山路さんには拙著の写真集「ビルマの子供たち」を長井さんのご両親
に渡していただくように託した。息子さんの健司さんが取材中に治安部隊に殺害された軍政下
のビルマ(ミャンマー)がどのような国なのかを、ご両親に知ってもらいたかったからだ。

 献花者リストには外務大臣名やテレビでコメンテーターとして頻繁に登場するタレントの名前が
たくさん並んでいた。しかし、何よりも目にとまったのは、長井さんを射殺した犯人の側である
「ミャンマー連邦大使館」の名があったことだ。しかも、隣あう位置には、軍政に武力弾圧される
側の民主化勢力で、日本で民主化運動を続ける在日ビルマ人グループの名が置かれていた。
配慮に欠けるというか、誰が誰を殺害し、誰を弾圧しているかという構図が全くわかっていない
ことを意味している。

 ちょうどお通夜の時間帯に、TBSの「報道特集」で長井さんが取材したビルマ情勢の特集が
放送された。帰宅後にビデオで見たが、「日本政府はビルマの民主化に協力せず、軍政を擁護
する外交をしてきた」との私のコメントが生かされているのを確認できほっとした。ディレクターが
私がいまいちばん伝えたいことを理解してくれたことに感謝した。

 それは辺境の少数民族も、海外で民主化活動を続けるビルマ人も、また彼らの活動を支援し
てきた者であれば誰もが共通して感じている怒りのようなものだ。同時に、新聞テレビなどの
大手メディアによる長井さん殺害報道で、最も欠けていて、最も読者や視聴者に伝えなければ
ならないポイントだ。

 長井さんの遺影に手を合わせご冥福を祈りながら、軍事政権が打倒される日が一日でも早く
やってくることを見守っていただけるように念じた。

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