3月31日 お通夜で「千の風になって」を聴いた
どこも満開の桜が春風にあおられている。今日は義父の命日。早いものでもう5年になる。
友人の須田さんは4年前、実兄は6年前にそれぞれ亡くなった。彼岸前にオフクロを伴い、兄の
墓参りに出かけた際、お線香に火をつけようと新聞紙を燃やしたら、風にあおられ、親指を火傷
した。めったにないことだったが、オフクロ曰く、「ご先祖様にお灸をすえられたな、お前」といわれ
てしまった。
先日は友人のお母さんが病気で急逝し、お通夜に出席してきたが、お焼香と読経が滞りなく
終わり、棺の小窓からお顔を見させていただいた。その後だったが、素敵な見送り方を実感する
光景となった。おそらく70代後半と思われる合唱サークルのお仲間の男女グループが、棺を取り
囲み、よく練習された成果を披露したのだ。とても心のこもった歌声だが、お仲間の顔は悲しみ
に沈んでいるようでもあった。耳を澄ましていると、「千の風になって」という曲だとわかった。
いま流行っているらしいとは聞いていたが、初めて聴いた。友人を彼岸に見送るにはぴったりの
曲だと感じ、思いやりの心に感動し、涙が出てきた。
毎年感じるのだが、この季節は向こうの世界に渡る人がとても多いような気がする。田舎の
信濃毎日新聞のお悔やみ欄も、他の季節に比べると、今の時期がとりわけ死者の数が多い。
まるで、大きなブラックホールがこの季節だけ彼岸の岸に穴を開け、まだ向こうに渡る準備をして
いない人までも、一気に吸い込んでしまうのではないかと思うほどだ。
しかし、後に残された者は、早く旅立った人の分までも余計に生きるように、知らずに命の残り火
を分け与えられている。
書店で「千の風になって」という歌詞を立ち読みした。その時、思ったのは「今日は死ぬには
もってこいの日だ」という、確かアメリカ・インディアンの本のタイトルが浮かんだ。どこか対になっ
ているような感じがする。
先日は、10数年前に一度読み、強い印象が残っていた「聞き書き ある憲兵の記録」(朝日
文庫)を再読した。最初に読んだ時の赤線がそこらじゅうに引かれていたが、今回はまた新たな
赤線を引きながら読んだ。
それにしても、地方紙上の長期連載をまとめたというこの本は、内容だけでなく筆致もすばらし
い出来映えの戦争体験記で、よくこれだけ詳細で一本の太い筋が通った内容の体験記を残して
くれたものだと素直に感謝したくなる優れ本だ。
土屋芳雄という山形県出身の善良な農民が憲兵となり、抗日ゲリラを拷問に継ぐ拷問で暴虐
の限りを尽くし、任務に忠実に働く満州での14年間、その後のシベリア抑留と戦犯容疑での
中国での拘留取り調べ生活11年間の心の内と、心の底からの贖罪意識を、細やかに手に取る
ようにわかりやすく書き記してある。
撫順戦犯収容所で、土屋さんが膨大な自白書を書き終えた時、合わせて328人を直接的間接
的に殺害した調書ができあがった。それだけの大罪でも、中国政府は裁判の結果、土屋さんを
起訴猶予処分にし、釈放した。土屋さんが帰国したのは昭和31(1956)年、敗戦から11年後だっ
た。
この本には、関東軍が公営の阿片吸煙所を全満州に1612カ所設け、中国人を阿片中毒に
させておいて、吸煙所などからの上がりが満州国税収の5.6パーセントを占めていたことなども
書かれていて、資料的価値も格別だ。
TBSNEWS23のマンデープラスでの「老いの風景」オンエア(約20分の放送とスタジオ少々)は、
どうやら4月9日か16日のどちらかになるようだ。9日はマスターズゴルフの中継があるかどうかで、
決まるらしい。ゴルフ中継があれば、都知事選翌日の大きなニュース枠そのものがなくなるのが
TBSの姿勢らしい。
写真展「また、あした 日本列島老いの風景」のキッド・アイラック・アート・ホール展は、6月下旬
にできることがほぼ決まった。写真集に収録されていない新作も10数点追加して、より充実した
ものにしたい。
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