1月14日 映画「ビルマ、パゴダの影で」を観た
昨日、渋谷のアップリンクで、在日ビルマ人の民主化活動家約20人と、軍政下ビルマ
(ミャンマー)の民族的、宗教的マイノリティーに対する人権弾圧に焦点を絞ったドキュメンタリー
映画の試写を観せてもらった。予想以上に、わかり易くかつ説得力ある映像でまとめられて
いて、目頭が熱くなる場面もあった。ビデオ映像の説得力と狙いの絞られた取材視点の強み
を実感させられた。
「ビルマ、パゴダの影で(原題:IN THE SHADOW OF THE PAGODAS--THE OTHER
BURMA)」というタイトルの映画の、日本語字幕が入る前のバージョンを観る機会を特別に用意
してもらったのだ。スイス人のIrene Marty(アイリーヌ・マーティー)監督による2004年の作品だ。
3月15日から同シアターでロードショーが開始される。
内容は、カレン民族に対する容赦のない弾圧により、ジャングルで避難生活を送る国内避難民
(IDP)や難民キャンプの生活ぶり、ビルマ軍により親を殺され国境線上の難民キャンプで生活
するシャン民族の子供たちの証言が中心だ。仏教国と形容されるビルマの隠された暗部に
絞って伝えようとしている。
加えて、ビルマ西部のラカイン州に住むイスラム教徒のロヒンジャとイスラム教徒全般に
対する宗教差別についても取りあげられている。
この映画によって改めてくっきりと浮かび上がってくるのは、僧侶を中心とした反軍政デモを
武力で情け容赦なく弾圧した軍事政権の素顔、体質だといえる。日本のテレビメディアによる
長井さん殺害報道中心の軍政非難では、あまり伝えられることのなかった内容だといえる。
その意味で、軍政下のビルマ問題をよりしっかりと認識するのに欠かせないドキュメンタリー
映画になっている。
弾圧されるカレン民族の映像を観た矢先、夜になってネット上に、「ヤンゴンで爆弾爆発、
少数民族の武装組織によるテロか」(読売新聞バンコク特派員発)という見出しのニュースが
流れていた。
記事によると、「11日から3日連続の爆弾事件が起き、死者1名、負傷者数名が出た。
少数民族の武装組織『カレン民族同盟(KNU)』による犯行だと軍政が断定し、現場にいた
KNUメンバーの男を逮捕した」という内容だ。他紙やCNNによる報道内容と比べても、この
読売新聞の記事は軍政発表を鵜呑みにしたまま、KNUによる犯行だとなかば断定した報道を
たれ流している。
これを書いた記者は、長井さん射殺事件に対する軍事政権側のでたらめな主張をもう忘れ
たのだろうか。長井さんのビデオカメラさえ返還せずに、射殺した兵士とその上司を処罰する
意志がまったくないことも忘れたのだろうか。
国連代表にさえも、治安部隊が殺害した抗議デモ参加者数のウソの報告をし、国際社会を
ごまかし続けている政府であることを忘れたのだろうか。事件から3ヶ月ちょっとしかたって
いないのだ。
私の個人的な見解は、軍政による自作自演の常套手段にすぎない。ビルマ軍はカレン
民族の民間人を標的にした乾季の軍事作戦をすでに再開している。カレン民族を攻撃する
口実なるとして自作自演を実行しているのだろう。民主化勢力と中身の伴う対話を口約束する
だけで、その意志を見せないことで受ける非難の矛先を回避する必要もある。軍政による軍人
らしい発想の自作自演の例には事欠かない。
その1:品川のビルマ大使館敷地内で爆発物が発見されたという事件。大使館側は民主化
勢力が犯人だと指摘したが、警察の事情聴取を嫌って担当官が帰国し、事件はうやむや
になった。
その2:軍政幹部宛に「日本から送られた郵便物」に爆発物が仕掛けられていたという事件。
日本の民主化勢力、中でもカレン民族の若者が名指しで犯人とされたが、疑われた彼も
民主化運動活動家も警察の取り調べで潔白が証明された。
その3:2005年、首都ラングーンで起きた連続爆弾事件は、軍政当局の発表では今回
同様にKNU(カレン民族同盟)であるとか、国外で民主化闘争を続けるビルマ人学生組織で
あるなどと発表されただけで、犯人は捕まっていない。民主化運動の活動家などはいとも簡単
に逮捕投獄する秘密警察の情報収集能力があるのに、どうしてか?
軍政当局の発表を元にした情報の羅列が、最大の発行部数を誇る新聞社の海外特派員の
責任ある仕事なのだろうか。この新聞記者は、冒頭の映画で証明されているような、ビルマ軍
の組織的な軍事作戦により、カレン農民が理由もなく殺されたり、家を焼き払われたり、生まれ
育った村での生活を諦めてタイ領に逃げ出して続けていることは、軍事政権による組織的なテロ
だとして報道する必要があると認識したことは、残念ながらきっとないのだろう。バンコクの
オフィスからわずか一泊二日で取材できることなのに。
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