4月7日  新刊「見えないアジアを歩く」の刊行

 新刊の共著「見えないアジアを歩く」が三一書房から刊行された。難産だった。

 本来は昨年中に出版される予定だったが、出版社の変更もあり、著者が私を含めて7人いる
ので、この程度の遅れは仕方のないところかもしれない。いまは出版されたことを素直に喜び
たい。

 本書は「紛争地」ガイドブックのようなもので、類書はあまりないと思う。カバーしている国や
地域は、ビルマ・カレン、スリランカ北東部、アチェ、ナガランド、チェチェン、チッタゴン丘陵、
それにイラク(ヨルダン、シリア、クウェート)で、私が書いたのはもちろんビルマのカレン民族
についてだ。

 他の執筆者は、渋谷利男さん(スリランカ)、佐伯奈津子さん(アチェ)、南風島渉さん(ナガ
ランド)、林克明さん(チェチェン)、下澤嶽さん(チッタゴン)、佐藤真紀さん(イラク)。
本職カメラマンなのは私と南風島さんだけで、他の方は大学教授だったり、ジャーナリストだっ
たり、NGOの活動家だったりと様々だ。A5版変形、288ページ、それぞれが30数ページから
なり、写真も多い。

 プロローグでは村井吉敬さん(早稲田大学客員教授)が、この7人の顔ぶれのことを「7人の
無頼」と評してくれている。日本政府や外務省からすれば、「退避してほしい」とか「渡航は延期
してほしい」などという危険な場所ばかりなので、「無法の行い」をする輩と見られているかも
しれないと持ち上げてくれている。

 事実、イラクのバグダッドは内戦状態に変わりはないし、スリランカでは自爆テロが昨日起きた
ばかりで、大臣と元オリンピック選手ら14人が死亡している。ビルマ軍政はカレン民族に対して
は恒常的な軍事作戦を展開している。

 観光客気分で旅する場ではない危険な紛争地や地域のことについて、ガイドブック風に読み
やすく、興味が湧くように書いてほしいというのが注文だった。この点は、7人7様の書き方なの
で、分かり易いかどうかは読者に委ねるしかない。

 各国・地域の最後にはコラムとして一人の人物が取りあげられているが、このコラムを読む
だけでも、それぞれの国や地域に関心をそそられることは請け合いだ。名前だけを上げてみる
と、シンシア・マウン医師(カレン)、バンディヤ先住民(スリランカ)、人権活動家のジャファル・
シディック(アチェ)、ジャーナリストのカカ・D・イラル(ナガランド)、人権活動家のタマーラ・
カラーエヴァ(チェチェン)、行動するスマナランカール大僧正(チッタゴン)、作家のノワフ・
アブル・ヘイジャ(イラク)の各氏だ。

 この本のコンセプトはナガランドを執筆した南風島さんのアイデアだと聞いている。確か2〜3年
前にスタートし、別の出版社で刊行されるはずだった。この時期に刊行がずれ込んだことは、
個人的にはタイミングが良かったのでは思う。この間、私の執筆対象であるビルマ・タイ国境は
二度取材する機会があり、国境周辺、とりわけカレン難民の第三国再定住については最新
情勢をアップデートできた。

 何よりも増して、昨年9月の僧侶による大規模な反軍政デモと長井健司さん射殺事件の悲劇
が起きたことで、軍政下ビルマ(ミャンマー)に対する人々の関心が一気に高まったことと、
国軍の無差別発砲により民主化運動が武力鎮圧された1988年から20周年という節目の年と
なり、5月に新憲法の国民投票をすると軍政が言い出したので、国際社会からも注目されること
になった。

 定価1700円(プラス消費税)。1冊で7つの国や地域の現実を知ることができます。ぜひとも
近くの書店かネット書店で注文し手にしてみてください。

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