超時空戦国記 独眼竜、跳ぶ!  (2001.9.3追加)

  霧島那智  青春出版社

  初版発行 2001年3月30日  定価 本体830円+税

  ISBN4-413-01825-7


  まず、この本は、題名からして問題があります。

 題名に「独眼竜」と付いていて、てっきり伊達政宗が活躍する話かと思いきや、最初の方に登場するだけであとは全く登場しません。「騙された!」と感じる人もいるのでは無いでしょうか。

 「跳ぶ!」と題名が付いていても、伊達政宗が空を跳ぶ訳ではないですが、発想は充分跳んでます

 時は、1600年、関ヶ原の戦いの直前、徳川家康が天下取りに王手をかけていた頃、奥州の地でも伊達政宗がこれからのことを考えてました。考えたところ、もはや日本国内で勢力を拡大するのは困難、ならば海外に手を出してしまおうと考えます。

 政宗の決めた目標は太平洋を越えた新大陸のノヴァ・イスパニアことメキシコ

 メキシコで最新式の武器を大量に買い付けると同時に、メキシコのイスパニア占領軍を撃破して、メキシコを確保した後は、それを奥州の大名の領地として割り振って、その資源を元に奥州の軍備拡張を行い日本統一を狙います。

 つまり、「日本統一のためには、まずメキシコ征服!!」という壮大すぎる計画です。メキシコの面積は日本よりも遙かに大きいのですが

 もちろん、このメキシコ征服は、関ヶ原の戦いが始まる前に、さらに西国大名に知られないように終了させなくてはいけません。

 スペイン本国からの増援については、

「本国のスペインとメキシコの間には、大西洋と申す大海が隔てており、ただちにメキシコの異変に対応することはできまい」

と政宗は述べてますが、太平洋を横断する日本−メキシコ間の距離はスペイン−メキシコ間の距離の2倍以上あります。

 まず、船の手配ですが、伊達家に水軍が無いので、その昔、日本海を制した安藤水軍と手を結んで、そちらに船の運航を任せます。兵力も伊達家だけでは無く、最上家など奥羽全土の大名と同盟を組み兵力を供出させます。

 伊達家の宿敵の最上家なども含んだ奥州の戦国大名を糾合することが出来たなら、その勢力をもっと国内的に往かせそうな気もしますね。

 それに極秘にするとか言っておいて、奥羽全土でそんな動きをしてたら、幾ら何でも、大々的にバレそうな気もしますが、そんな小さなことは気にしてはいけません。

 太平洋を横断するのは、日本人にとって初めての偉業ですけど、日本海を中心に活躍していた安藤水軍が何故に西洋式の操船術を極めており、大航海時代の西洋の航海に付いて知っているかは説明されないままです。 

 太平洋横断のためのヨーロッパ式の大型船30隻の建造や、奥羽全土の糾合するための外交や兵力結集等の準備もたった2ヶ月で終了し、大船団は一路メキシコに向かって太平洋を横断していきました。

 船団に乗り込むは、奥州全土からかき集めた将兵1万人、伊達家の忍者軍団「黒脛巾組」300人、安藤水軍衆3500名の大人数です。

 航海中、食料が切れると、船酔いにかかった人員が吐く吐瀉物で秋刀魚を集めて、一本釣りをして食料を確保します。これで食糧問題はバッチリです!

 それでも、乗員が壊血病で次々に倒れていくのは止められませんが。

 やがて、3ヶ月の航海の末、新大陸に辿り着きました。

 それは あと、忍者が異様に強い霧島那智の作品の通例として、伊達家の忍者軍団の黒脛巾組が遠征軍に参加しており、異様なまでに大活躍です。ちなみにこの忍者を率いるのが、史実で欧州に使節に行ったことで有名な支倉常長です。

 新大陸のメキシコで行われている原住民インディオの扱いに憤激した奥州連合軍は、彼らを救うためにスペイン軍と戦っていくことになります。この当時、「人権」とか「民族差別」の概念が極めて薄かっただけではなく、当時の日本人がこんなことを考えられたかどうかは、まあお約束として見逃しておくのが、精神衛生的もよろしいのでは無いかと。

 解放した町では、

「もはや、スペイン人でないからといって、身分を気にする必要はない。我々奥羽連合はパナマの住人に対し、人種を問わず一人の領国民として扱うものである!」

という格好良すぎる演説までしてくれます。

 それ以前に、メキシコの先住民族の解放と、元々の目的「メキシコを奥羽の大名の領地として割り振る」というのは、明らかに矛盾すると思うのですが。

 戦闘シーンでは、霧島那智の作品の特徴な「忍者の大活躍」によって、スペイン軍は次々と壊滅していきます。

 やはり、戦国時代でも手裏剣毒ガスは忍者部隊の基本なようです。

 ちなみに、次の敵は有名なスペインの「無敵艦隊」みたいですね。

 ただ表紙には

「鎖国の禁を破った政宗、無敵艦隊を砕く!」

となってますが、この巻では無敵艦隊なんてこれっぽちも出てこないのは、誇大広告と言えるでしょう。

 一方、日本の東軍と西軍の戦いも膠着状態に陥っており、メキシコで購入した武器が役に立つ日も近いようです。

 さて、ここから、どういう風に大風呂敷が広げられていくのでしょうか楽しみです。

 

  

架空戦記と見せかけてそうではない物に戻る

トップへ戻る