孔明の艦隊 (1998.10.7追加)
志茂田 景樹 講談社文庫
1巻
初版発行 1996年11月15日 定価 本体460円+税
ISBN4-06-263383-3
2巻 爆雷埋伏の計
初版発行 1997年5月15日 定価 本体524円+税
ISBN4-06-263509-7
3巻 張飛山口の奮戦
初版発行 1997年8月15日 定価 本体524円+税
ISBN4-06-263567-4
4巻 日米最終決戦
初版発行 1997年11月15日 定価 本体524円+税
ISBN4-06-263657-3
(4巻完結)
(ネタばれしまくりです。一応念のため。あと細かい突っ込みどころはかなり無視してます(笑)、あまりにもたくさんありすぎて(^^;。あと漢字が出にくいのにも参りました。)
1993年から1994年にかけて、ノベルズで出た作品が文庫化されたモノものです。「三国志の諸葛亮孔明が、山本 五十六連合艦隊司令長官に憑依して、活躍する」という凄いストーリーは知ってる方もおられると思いますが、文庫になるにあたり「加藤 建二郎」という軍事ジャーナリストの方の解説が各巻の巻末に付いています。
この方は、ボスニア・ヘルチェゴビナの戦場取材などを行ったこともある人のようで、軍事知識もかなりあって、言っていること自体はもの凄くまともです。ただ、このぶっ飛んだ作品を、まともに軍事的な面から解説を加えるというのは、もの凄く無理がありますね(笑)。ご本人も苦労されているのが、文脈から読みとれますし。
あと、食事場面がやたらと多いのも、特徴的です。
1巻
1942年6月のミッドウェー海戦は、連合艦隊は4隻の空母を失って大敗北しました。
第二航空戦隊を率いる山口 多聞少将は空母「飛龍」と運命を共にしようとしますが、海に沈んでいく最中に、頭の中に
「死ぬな!」
という声が響き、
「我は張飛なり。我は軍師・諸葛亮孔明とともに、さらに2、3の同志とともに志半ばにして倒れた後、魂魄となって今日まで浮かばれないままでいた」
「我らは、とぎれた志を、いつの日か実現させるために、浮かばれないままで魂魄となり、この世の虚空にとどまっていた。ついに我らの潰えた志をふたたび立てるときが来た。我は、おまえの身を借りて、現世界に戻り、二十世紀の魏を滅ぼそうぞ」
といって、山口に憑依します。
その頃、山本 五十六連合艦隊司令長官もふっと意識が遠くなって、
「余は、諸葛亮孔明なり。北伐の志を果たさずして、病に倒れたが、余の魂魄は関羽、張飛とともに、虚空をさまよい、今日に至っている。
余の見るかぎり、日本は軍師の逸材なく、そして創意工夫の才に恵まれたものが乏しい。我が蜀のようなものである。ミッドウェー近海での日米の戦いは、蜀が魏に対して起こした北伐に擬せられるものであった。日本は何としてもミッドウェー島を占領しなくてはならなかった。ミッドウェー島を攻略しても、アメリカが負けるわけではない。アメリカの国力は、余が生きた時代の魏よりも大きい」
「北伐は、弱小国の蜀が生きながらえるために、なさねばならぬ戦いであった。その北伐におまえは失敗した。おまえの知力では、アメリカに勝てぬ。このままでは、日本は遠からず必ず滅ぶ。余は、関羽、張飛とともに、二十世紀の魏であるアメリカを討つために、おまえの肉体に宿ることとした」
という言葉を聞いて、孔明にのりうつられてしまいます。
そして空母部隊司令官の南雲 忠一中将も、責任をとって切腹しようとして、金縛りにあい、
「我は関羽なり。これより我の魂魄はおまえの肉体に宿る。我は関羽なり」
という言葉を聞いて、関羽に憑依されます。
まるっきり人が変わった三人に率いられた率いられた連合艦隊は、アメリカ艦隊に、艦隊戦を仕掛けてアメリカの空母三隻を撃沈して見事に雪辱戦を果たしましたのです。凄いですぅ〜(笑)。
中でも、山本司令長官は完全に人が変わり、好きだった賭事も完全に辞めて、タバコや酒もたしなまなくなり、一人称も「余」となりました(笑)。そして、長官室の隣の部屋を改装させ、中央に北斗七星の曼陀羅を描いた祭壇を設けさせます。そして、下記のようなことを行いました。
「山本長官は、祭壇室で端座し、呪文を唱えだしている。
鬼門にあたる位置に置かれた蝋燭に、火が点されている。
山本長官は、かっと目を見開いて、北斗七星の曼陀羅を凝視している。
その呪文の声は、低くか細く聞こえるが、エネルギーを放っていて、蝋燭の炎がゆらゆら揺れた。
山本長官は、身体をマラリア患者のように震えさせ出した。
双眸が、怪しい光をたたえて、蝋燭の炎に映えている。
山本長官は目を閉じた。
敵国に打ち勝つ秘策を、天に問うた。
山本長官は、その直後、ばったりと上体を倒した。
鬼門の位置の炎が、一つずつスーッ、スーッと消えていく。
そして室内は真っ暗になった。
山本長官の頭の中に、三つの秘策が浮かんでいた。
一つは、レーダー対策である。
一つは、米軍が使っている暗号の解読である。
一つは、レーダーを装備した敵艦の捕獲である。」
まあ、この改革自体は第二次世界大戦もの架空戦記では、別に珍しくはありません。ただそれを天に祈る呪術で発見するのは、例がないですね(^^;。
さらに孔明=山本長官は、機動部隊を八個の航空艦隊に編成し直して、八十八隻の艦隊で構成される八陣機動艦隊と名付けました。
その艦隊で、ミッドウェーとハワイを一時的に占領しますが、結局撤退の羽目に。しかしそれを利用して、日本の軍備開発の実権を完全に山本、南雲、山口の三人で握ってしまいました。蜀の武将である超雲も、潜水艦 伊168の艦長である荒木少佐に、のり移りました。
さて、彼等はこれからどういった戦いを見せてくれるのでしょうか(笑)。
2巻 爆雷埋伏の計
孔明=山本長官が、大和の祭壇で呪術を行ったところ、魏の将星達が次々と「現代魏」アメリカの提督達に降臨することを突き止めます。その第一陣は夏候惇になることも。
大和は、1隻だけ駆逐艦を連れて南西方面に進出。その目的は五気(寒、熱、空、燥、湿)の働きを知り、敵潜に当てる実験をするためです。ちょうどタイミング良く、そのとき8隻の敵潜水艦が出現。孔明=山本長官は祭壇で行を行って、頭の中のスクリーンで8隻を捕捉。大和と駆逐艦冬月が投下する大量の爆雷を気の力で、水深70〜80メートルで渦を巻くように回転させてから、数個ずつ飛び出させて、敵潜水艦に誘導して撃破していきます。残った敵潜水艦は速度12ノットで退避しようとしますが、爆雷の渦は50ノットにまで速度を上げて追撃。ついに8隻中、7隻撃沈しました。
それから、シドニーやフィジー諸島方面で、日本艦隊VSアメリカ艦隊の激戦が繰り広げられますが、アメリカのハルゼー提督がウィスキーを飲みすぎて酔っぱらっているところに、夏候惇が降臨、
「俺は夏候惇である」
「俺は、二千年来無明の大空をさまよい、浮かばれぬ魂魄として、この世に至っている。だが魂魄の時間観念からすれば。千年二千年は一瞬である。諸葛亮孔明をはじめ、蜀将の魂魄どもが、たくらみを始め、連合艦隊に降りてきている。俺としても、見過ごしはできない。たった今より、おまえの精神の中に俺は溶け込み、現代の魏国であるアメリカを守るため、また魏の大義を貫くために、戦いを始める。全ては、我が魂魄の赴く結果である。おまえは、何も変わらぬ。変わらぬが、精神、自尊心、俺の魂魄が重大な局面に立ち向かうとき、おまえを動かすであろう」
といって、ハルゼーにのり移りました。
これで、人が変わったハルゼーは負傷で右目を失うも、気迫で八陣航空艦隊を追撃。孔明=山本長官は他の艦はオーストラリア大陸を大きく南に回らせて、インド洋方面に撤退させることに成功させますが、自身が乗り込む大和は、ハルゼーが乗り込む戦艦ノースカロライナと、重巡ミネアポリスに追われて逃走を続け、赤道近くのフィジーから、夏でも流氷が浮かび、皇帝ペンギンの泳ぐ南極大陸にまで追いつめられてしまいます。その運命やいかに?!
3巻 張飛山口の奮戦
2巻で、南極大陸に追いつめられた大和。
孔明=山本長官は、祭壇での秘術で、敵との間に奥行きが2,3キロあるオーロラを発生させて、敵の目をくらまします。普通、オーロラは高空に出来ますが、このオーロラは特別製で地上から塀のように発生している優れモノです。もっともそのせいでレーダーも利きませんが、孔明=山本長官がスクリーンを眺めただけで回復しました。
そして、オーロラの後ろから、レーダー射撃を行い、ノースカロライナとミネアポリスを撃沈。夏候惇=ハルゼーは何とか生き残り、
「チキショウ、この敵は絶対とってやるぞ!」
と歯がみをするのでした。
そのころ、オーストラリア南方を逃走する日本艦隊を追撃していたスプルアンス提督は、10時間以上何も食べていなかったので、空腹でめまいに襲われたところに、
「俺は、魏の将、典葦である。二十世紀の蜀である日本を討つために、俺の魂魄はこれよりおまえの意識の中に潜む。俺は典葦だ。俺は典葦だ。俺は典葦だ……」
という声を頭の中に聞いて、魏の将、典葦に降臨されます。
けど、典葦って蜀や呉が出来る前に死んだような気もしますが、小さなことは気にしないようにしましょう(笑)。
何とか、日本に帰り着いた八陣艦隊は捕獲したF6Fヘルキャットを参考に、零戦74型の開発を急ぐと共に、哨戒飛行中に、突如パイロットが急性心不全の発作で死亡したために、捕獲に成功したP51マスタングの性能解析をスタートさせました。その他、空母を多数建造したり、既存の艦の性能アップを図ったりで戦力増強に余念がありません。
さらに孔明=山本長官は、
「海を見たい」
といって、二式大艇に乗ってそこら辺を飛び回り、目に付いた岩礁を雷撃させたり、戦闘機に銃撃させて、風水学でいう竜脈を断ちました。
そして、フィリピン沖で大和を攻撃しようとしていた49隻の米潜水艦は、突然海底火山の爆発が起こって全滅。竜脈を断っていたのはこのためだったのです。何という深謀!!
三国時代の将星達も、日本側では田中参謀長にホウ(字が見つからない)統が降臨し、渡辺参謀に徐庶が降臨、友成司令官に周倉、芦田司令官に厳顔、相山司令官に呉懿、角田司令官に孟達、栗田司令官に蒋碗(ホントは石ではなく王)、飛行隊長の乃木大尉に馬超、有泉参謀に馬良、松平参謀に馬謖が降臨していきました。
一方、アメリカ側でも、砲弾の破片がヘルメットに当たって気絶したフレッチャー提督に許緒が、日本で食べたフグ料理が忘れられず、料理のしかたを知らないコックに無理矢理作らせたフグ刺しで、中毒を起こして死にかけていたキンケードに、干禁が降臨。竜巻で目を回した戦艦「ニューアリゾナ」の艦長、ジェームス加藤に張郊(ホントは交の代わりに合の字)が降臨。ハルゼーの参謀長のスチュワート少将には荀、パイロットのスタンレー准尉に張遼が降臨していきました。
ハルゼー、フレッチャー、スプルアンス、スチュワート、キンケード、ジェームス加藤の六人は空母の飛行甲板で、呪文を唱えて、
「我らの大将軍・曹操閣下、この地上に下りたまえ。復活したまえ」
と祈りますが、曹操は降臨しません。どうやらまだ時期が早いようです。
蜀と魏の将たちも、数多く転生を終えて、ついに日米の決戦が迫ります。
孔明=山本長官は、呪術で中国大陸から黄砂を呼び寄せて、連合艦隊の上空300メートルあたりに、厚さ一キロ、直径15キロの黄砂の密雲を作り出しました。この密雲に阻まれて、アメリカ軍の航空機は近寄れません。ついでにステルス性能も持っていて、レーダー電波を全て妨害してしまいます。これぞ黄砂の計です。
しかし、アメリカ軍は特殊な信管を装備した砲弾で、黄砂の雲を飛び散らせて応戦。ついに日米の戦艦同士の対決が始まりました。
4巻 日米最終決戦
アメリカとの戦艦対決で、アメリカの46センチ砲装備戦艦のニューアリゾナに苦戦した孔明=山本長官は、青く不気味に目を光らせて呪術を使用。大和の46センチ砲弾を、ニューアリゾナの46センチ砲弾に衝突させて。撃墜していきますが、結局、かなわずに日本艦隊は撤退することに。
ニューアリゾナに悩まされた山本長官は奇策を使います。潜水艦伊168に祭壇室を作って、自ら乗り込み、ニューアリゾナの下に潜り込んで、命を削りつつ呪術を発動。36ノットの猛スピードで日本の基地に向かって、走らせます。もちろん、下には小判鮫のごとく、伊168をくっつけて(笑)。そして、一隻だけ突出してきて、乗員のコントロールも受け付けないニューアリゾナを連合艦隊は全力で撃沈しました。卑怯だよなあ、やっぱり(^^;。
さらにハワイでF8Fベアキャットに搭乗していたミッチャー少将に、孔明の最大のライバルだった司馬懿仲達が降臨。そして、ハルゼーやスプルアンスの召還呪文がついに効力を発揮。太平洋艦隊司令官ニミッツに曹操が降臨しました!!
しかし、魏の将星達が敵にするのは、孔明じゃなくてどう見ても司馬懿仲達の方ですよねえ。こいつとその子孫が魏を滅ぼして、晋を起こしたんですし(笑)。
日本側には、腕利きで眉目秀麗の新人パイロット、片桐貞雄二等飛行兵(実は男装した女性)が登場。彼女には、絶世の美女貂蝉が降臨しています。
孔明=山本長官は、
「敵の旗艦 ニューアリゾナ(2号艦)の近くに不時着、ニーミッツを蠱惑せよ」
との命を彼女に与えて、彼女はそれをきっちり実行して、後で情報を持って帰還してきました。
相次ぐ米艦隊との戦いで消耗した連合艦隊は、日付変更線近くで、「八陣航艦の陣」を決行。最後の決戦を挑みます。
生き残った空母「紅鷹」「鳳凰」を除く全艦艇が時計の回る方向に速度約30ノットで航行させつつ、孔明=山本長官が呪文を唱えると、敵の攻撃機が攻撃しようとしても、不思議な磁場に遮られて近づくことが出来ず、離脱しようとしてもこれまた磁場に遮られて逃げることが出来ません。
そう! 「八陣航艦の陣」とは、磁気の運動を濃密にして、外側に磁気が見えない防御の壁を張るモノだったのです。しかし欠点は海中にまで磁気を張り巡らすことが出来ないことで、それを察知した米潜水艦が海中から雷撃を行ったことで、「八陣航艦の陣」は破れてしまいます。
敗北と、呪術の使いすぎによる自分の死期を悟った孔明=山本長官は艦隊に突撃命令を下して、敵に大損害を与えますが、衆寡敵せず、ついに排水量1800トンで魚雷発射管12門を装備する巡洋艦(どこがぁ(笑))「レッドバード」に乗り込んだ敵将 司馬懿=ミッチャーは孔明=山本長官座乗する戦艦「赤光」に突撃を開始します。
孔明=山本長官は、
「世の命数つきたり!」
「8隻の重巡の真ん中を通過して、最高速力で敵の艦隊に向かえ。ただひたすら向かえ。そして敵前10キロで左九十度変針を行え。百キロほど進み、さらに九十度変針を行え。あとはそのまま北へ北へ向かえ。これは遺言である」
といって、息を引き取ります。
そのとおりに、部下が行動すると、何故か太平洋のど真ん中に富士山のような形の大岩礁があり、遺言通りそこに突っ込むと、岩礁は消え去って、半径10キロ以上もある大渦が発生。米艦隊は全艦艇がそれに飲み込まれてしまいました。
アメリカも馬鹿ではありませんから、この大損害を聞けば日本と停戦しようとするでしょう。
こうして、北の海に平和が戻りました。
あと、最後の章の名が「死せる山本、生けるミッチャーを走らす」であることはいうまでもありませんが、全滅させてしまっては「走らす」も何もないと思います(笑)。
・・・・・・ふう、疲れた(^^;;。自分でまとめてみても、よく意味が分からない作品だわ(笑)。個々の場面では勝利ばかりなのに、いつの間にか負けまくってるし。兵器スペックなんかは突っ込みを入れる気分にもならないくらい凄いので、書く気を無くしました。