新 旭日の艦隊5 鬼神咆吼紅海海戦 (1999.5.12追加)
荒巻 義雄 中央公論社 C☆NOVELS
初版発行 1998年5月25日 定価 本体800円+税
ISBN4-12-500528-1
荒巻 義雄の作品には、数多くの「ちょ〜」な兵器が登場します。
その中でも、ひときわ群を抜いていると思われるのが、この巻に登場するドイツの要塞戦艦「フェルゼン」でしょう。
その排水量は、三五万トン。浮島のような外見を持ち、まさしく「要塞戦艦」と言えます。
その防御方法は、外郭に被害吸収用の外殻船を装備。被害を受けたら、その外殻船をあらかじめ夭死してある鉄板に合わせて、切り離します。そして、甲板から潜水夫を下ろして、水中溶接で被害箇所を仮溶接。それが済んだら、大量に装備したポンプで、トンネル工事のように高圧空気で水を追い出して、本格的な溶接をして、修理完了です。もちろん、これらの作業は敵弾が飛び交う戦闘中に行われることは言うまでもありません。
これだけの大きさになると、スエズ運河などは通過が不可能ですので、フェルゼンはモジュール化方式を採用。普段は七隻の戦艦に分離していて、いざ戦闘となると、超巨大戦艦に合体します。
艦橋も極めて独創的な形をしており、普通の軍艦のような楼閣のイメージはまったく無く、工場などでよく見かける移動式クレーンに似ています。つまり、艦橋は巨大なクレーンにぶら下げられて、上下左右に自在に機動が可能な移動式艦橋となっているのです。その可動範囲の広さは、まるで遊園地の展望台のように、周囲の景色を充分に堪能することが可能です。
武装は、十五インチ(381ミリ)2連装砲塔10基の他、多数の武装を装備してますが、その中でひときわ際だっているのが、普段は巨大な耐弾格納庫に収納された、口径280ミリ、砲身長38メートル、最大射程250キロの巨大列車砲「ゲルマン砲」です。この列車砲を機動させるために、甲板に、くまなくレールが張り巡らされており、艦上の何処にでも動かすことが出来ます。
こんな、いかにも無敵そうな要塞戦艦「フェルゼン」ですが、作中ではかなり情けない最期を遂げました。
乗組員全員が、バカみたいに「ハイル・ヒトラー」を連発しながら、周囲の警戒もせず、巨大列車砲「ゲルマン砲」で対地砲撃を行っていた時、「ゲルマン砲」発射時の砲煙に紛れて、日本の潜水戦艦「新日本武尊」(これも、かなり”ちょー”な兵器です)が至近距離に浮上、砲撃と魚雷でフェルゼンにダメージを与えました。
もちろん、フェルゼンはこの程度では沈むはずは無いのですが、その時ちょうど砲撃中だった「ゲルマン砲」が攻撃のショックで、甲板上のレールを猛スピードで暴走。あまりの暴走ぶりに、排水量35万トンの巨大戦艦も、バランスを崩し、横転して沈没してしまいました。
「新日本武尊」の砲撃で、移動式艦橋を吊り下げている大型クレーンの根本に、砲弾が命中して、艦橋が落下。中にいた司令官達が脳震盪を起こして、指揮を執れる状況で無かったことも沈没の大きな原因でしょう。やはり、クレーン式移動艦橋は軍艦には向いていないようです。
しかし、荒巻 義雄の凄いところは、ここまで凄い敵の兵器を生み出しながら、ろくすっぽ活躍もさせず、葬り去ってしまうところですね。やはり、彼は侮れません(何が?)