日本海軍、錨揚ゲ! (2004.11.13 追加)  

 阿川弘之・半藤一利 PHP研究所
 初版発行 2003年8月6日  定価 本体1,400円+税

 ISBN4-569-62926-1


 様々な軍事関連本を書いている、阿川弘之と半藤一利が2晩箱根に籠もり、日本海軍について対談したのをまとめた本です。
 あえていうと、重度の軍事マニア2人のダベリをまとめた本ですね。
 
 収録されている中で、一番凄いと思ったのは、「第二二話 大本営発表の嘘のすさまじさ」で、嘘の代名詞となった日本の大本営発表について検証しています。
 何でも、当時の新聞を一つ一つ調べてカウントした大本営発表での敵艦撃沈数を合計すると、日本軍はアメリカ海軍の空母97隻、戦艦36隻、巡洋艦219隻、駆逐艦149隻、潜水艦305隻を撃沈していることになるそうで
 実際の戦果は、空母10隻、戦艦7隻、巡洋艦10隻(重巡洋艦7隻、軽巡洋艦3隻)、駆逐艦57隻、潜水艦56隻
 ただ、終戦時のアメリカ海軍戦力が、空母138隻(正規空母30隻、護衛空母108隻)、戦艦33隻、巡洋艦75隻(重巡洋艦26隻、軽巡洋艦49隻)、駆逐艦880隻、潜水艦262隻なので、大本営発表が正しかったとしても、全部沈まないのが恐ろしいです。
 ちなみに、大本営発表での日本海軍全損害は空母5隻、戦艦3隻、巡洋艦8隻、駆逐艦33隻、潜水艦11隻喪失のみ。
 こちらの実情は、空母19隻、戦艦11隻、巡洋艦38隻(重巡洋艦14隻、軽巡洋艦24隻)、駆逐艦131隻、潜水艦127隻喪失で、終戦時の残存戦力が空母4隻、戦艦1隻、巡洋艦3隻(重巡洋艦1隻、軽巡洋艦2隻)、駆逐艦36隻、潜水艦61隻になります。
 数え間違いがあるかもしれないと著者も認めてますし、その他に軍艦喪失の考え方とかで、多少数は変わってくるでしょうけど、これらの数字そのものが、「どうやれば、太平洋戦争で日本がアメリカに勝てるか?」という議論のバカバカしさを表現していますね。アメリカ軍艦の場合、数だけではなく質でも日本軍艦に勝っているのが大部分ですし。
 むしろ、日本海軍だからこそ、異常に強力なアメリカ海軍を相手に、あれだけ粘れたというのが正しいかも。
 
 あと、終戦直後の8月17日に、海上護衛司令部参謀の大井篤が、麾下の海上護衛部隊にアメリカ軍への降伏電報を打った後に、軍令部作戦部員の柴勝男にいちゃもんを付けられた時の会話。

柴:「大井君、あんな電報を打つとは何だッ。まだ負けとらん」
大井:「いや、天皇陛下はちゃんと詔書を出された」
柴:「天皇陛下は、あいつは臆病だから出したけど、われわれの上には大元帥閣下がいるんだ!」
大井:「違う! 大元帥閣下は天皇陛下の家来なんだ!」

 ……ちなみに、天皇陛下と大元帥閣下は、役職名が違うだけで同一人物です(苦笑)

 他にも色々と、

・戦艦大和は1日停泊しているだけで、燃料を50トン消費する。
・米内光政と小沢治三郎はアル中。
・大井篤に言わせると、源田実は指をピシっと鳴らすのが得意で、ミッドウェーに行くときも、ピシッと指を鳴らせて「赤子の手をひねるのと同じ、任せておいてくれ」と格好付けていた。
・南雲機動部隊の参謀長、草鹿龍之介は「航空戦の専門家」とされているが、実際には「飛行船の専門家」である。
・ミッドウェーの後、山本五十六が書いた手紙には「早くあっちの世界に行きたくなった」と書いてあるのが多い。
・戦艦大和の沖縄特攻時には、出撃前夜の酒盛りのため、アメリカの艦載機に襲われた時は2日酔いのものがかなりいた。
・終戦時、ただ1隻残っていた長門をアメリカ軍が接収した際、武器を隠しているに違いないと調べたら、武器は無かったが、かわりに日本酒が大量に発見された。

等、雑学的な話が多くて面白いです

 ちなみに、阿川弘之が1920年生まれで敵信傍受部隊所属の海軍通信士官、半藤一利が1930年生まれという年齢なので、2人とも第二次大戦の日米提督たちが生きている頃に、直接インタビュー等をした経験があるため、直接顔を合わせた時のイメージも語り合っています。
 特に、井上成美は立派な人物だけど、上司とかには絶対持ちたくない人物だそうで。


 本自体の雰囲気が、軍事マニア同士が楽しそうに濃い話をしている、という感じで、同好の士とそういう話をするのが大好きという方なら楽しめると思います。
 ここまで、対談者同士が楽しそうに語っている対談本も珍しいです。


 

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