スペイン戦争  

  著者 三野 正洋  朝日ソノラマ 文庫版新戦史シリーズ96

 ISBN-4-257-17316-5 


「スペイン戦争」。第2次世界大戦の前哨戦として知られ社会主義を奉ずる共和政府軍がフランコ将軍の率いる右派の反乱軍に敗れた戦争。これまでこの戦争はイデオロギー的な面から解説されることが多くて、軍事的な面からはほとんどふれられてこなかった。さらに判官贔屓というべきかもしれないが、最終的に敗北した左派の勢力を心情的に支持している本が多いです。この本は日本で初めてスペイン戦争を軍事的な面を中心に解説しているものでしょう。

 まず驚いたのは、スペイン戦争に参加した組織というか派閥の多彩さ。これだけでかなりのページが割かれています。特に政府軍を構成する人民戦線には様々なグループが存在して、戦争の真っ最中でもお互いの指導者の暗殺等の抗争を行うという凄すぎる状況です。首都マドリードの陥落一ヶ月前でも内戦が発生したぐらいですから。

 あとこの戦争に参加した各国の正規軍(もちろん義勇軍や軍事顧問の形を取ってますが)の一覧もあります。共和政府側にソ連軍、反政府軍にポルトガル軍、イタリア軍、そして有名なドイツの「コンドル軍団」。特にソ連軍とドイツ軍はそれぞれが支持する勢力の戦車部隊及び空軍部隊の根幹をなす存在となって各地で激戦を繰り広げることとなります。常時4個自動車化歩兵師団&300機以上の航空機という大量の兵力を派遣していたイタリア軍は無茶苦茶弱くて両軍の笑いものになってますけど。

 読み終わって思ったことは著者もこの本の中でいっているとおり、「よくこんなので共和政府軍はフランコ軍に3年近くも対抗できたな」てな感じですね。正規軍の大部分はフランコ側について外国からの援助も必要なだけ受けられ、そして何よりも強力な指導者の元に一つにまとまっていたのに対して、共和政府側は中の足並みはバラバラで戦略は定まらず内輪揉めもしょっちゅう、外国の援助もまともに受けられないという徹底的に不利な状態でした。「民主的」にこだわるあまり、突然敵の攻撃を受けたときも「反撃の方法の民主的な議論」を必要とするという意見がまかり通っていたり、指揮官が交代制になっていた部隊も少なくなかったようです。しかし彼等はその危うげなまでの純粋さで懸命に戦い続けたことで、歴史の中の「伝説」に残ってしまったのかもしれません。

 

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