青木 基行 歴史群像新書
VOL.1 奇襲!ウラジオストック
初版発行 1997年5月8日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400823-2
VOL.2 東部正面電撃戦
初版発行 1997年7月10日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400824-0
VOL.3 北部正面消耗戦
初版発行 1997年10月4日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400890-9
VOL.4 ソ連軍冬季大反攻
初版発行 1997年12月24日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400934-4
VOL.5 地中海の嵐 (1998.4.14 追加)
初版発行 1998年4月11日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400955-7
VOL.6 北大西洋追撃戦 (1998.8.3 追加)
初版発行 1998年8月3日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-401005-9
VOL.8 亜欧州包囲線 (1999.8.9 追加)
初版発行 1999年8月5日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-401074-1
VOL.9 黒海強襲作戦 (2000.5.8 追加)
初版発行 2000年5月11日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-401184-5
(以下続刊)
1940年、ドイツのフランス攻略作戦「マンシュタイン・プラン」が失敗。連合軍とドイツ軍は戦線膠着状態に陥る。その隙をついてドイツと不可侵条約を結んでいたソ連が、ドイツを裏切って攻め込みドイツ本国を占領。ヒトラー総統は自殺した。その勢いにのってソ連はフランスまでも占領下においてしまう。まだ参戦状態になく有力な同盟国を失った日本は自然にイギリス等の連合国と協力体制を取らざるを得なくなった世界の話です。さすが「龍騎兵」の青木 基行氏だけあって、文中の地図や解説等が多い等、非常にわかりやすいので普通の人でもある程度は理解できると思います。
VOL.1 奇襲!ウラジオストック
1巻は、状況説明と1941年7月の日本軍によるソ連攻撃開始を描いています。海軍の装備はほぼ史実通りですが、陸軍の装備は航空機はP39及びP40、戦車もM3スチュアートがアメリカより供与されて戦力はそれなりに強化されています。母国を失った自由ドイツ軍の将校達も少数参加していますし。ただ日本が連合軍の一員になって戦う似たような架空戦記みたいに日本軍が急に脈絡も無しに,近代的な軍隊になるのではなく、相変わらず史実と変わっていないところも多々あるのでそんなに違和感はありません。
結構うまいと思うのは、ソビエト軍の政治委員の描き方ですね。これまで部隊に死守を強要したりする典型的な悪役として描かれることが多かったのですが、何人もの政治委員を登場させて、それぞれ性格が違う人間として表現されています。あと日本軍がそれまで中国大陸で行ってきた残虐行為についてもしっかり描いており好感が持てます。ここらへんをないがしろにしている架空戦記が多すぎるもので。
しかしこのシリーズって駆逐艦「綾波」が『傷だらけの浮沈艦』なのね(^^;。今回はSB−2の爆撃を受けましたが爆弾が不発でした。
VOL.2 東部正面電撃戦
2巻では沿海州方面のソ連軍の壊滅を描いています。ただソ連軍にも史実でも大活躍したT34戦車、イリューシャン IL−2シュツルモビク地上攻撃機、カチューシャ多連装ロケット発射器等が登場して日本軍は苦しめられることになります。T34戦車なんかは現在でもボスニア・ヘルチェゴビナ紛争等とかで使用されているほどの名兵器ですからね。
相変わらず兵器や戦術に関する基本的な説明がわかりやすいです。火炎瓶の作り方なんかは私もこの本で初めて知りました。砲兵や戦車などの運用も読者を置き去りにすることなくうまくまとめていますね。
ところで今回の「綾波」は潜水艦からの魚雷を食らっても沈みませんでした。さて三巻ではどうなることやら(^^;。
いきなり表紙が、砲撃を行っている駆逐艦だったので怪しいとは思っていましたが、読み進めたところやはり駆逐艦「綾波」らしきことがわかりました。「大和」や「零戦」が表紙になっている架空戦記など珍しくもありませんが、「綾波」が表紙になっているのは前代未聞では無いでしょうか。青木先生、かなりエヴァにはまってますね(^^;。
今回は日本軍の奥地への攻勢が、新たに極東戦略方面軍司令官に就任したジューコフの手腕によって徐々に勢いを失っていくさまが描かれています。ただ極東戦線の描写は少な目になり、これまでほとんど等閑にされていた中東戦線のこれまでの過程など作品世界の解説がかなりを占めていますね。しかしロンメルが母国を失い亡命政権となった自由ドイツ軍の将軍として大活躍していることは十分予想できましたが、ソ連の衛星国と化したドイツ人民共和国赤色戦線軍の敬礼のやりかたが、拳を握りしめた右腕を垂直に振り上げて「世界を革命する力を!」ぉぉ??。
あっそうそう今回の「綾波」は地上砲台からの砲撃を食らいましたが沈みませんでした。隣の同型艦「東雲」は轟沈しましたけど(^^;;;。
ついにソ連軍の冬季大攻勢が始まりました。T34、KV−1、カチューシャ、IL−2等を大量に装備して再編成された極東ソ連軍は、数的に劣勢であるにも関わらず日本軍を押しまくります。ついには日本の第2軍がソ連の第29機械化軍団に包囲される事態にまで・・・。
まずタイトルに「大反攻」と付いていますが、実質的にソ連軍の反撃した兵力は2個戦車師団、1個機械化師団の3個師団だけなので「限定攻勢」というのがふさわしいかも。ただそれではタイトルが著しく盛り上がりに欠けてしまうので仕方が無いでしょうね(^^;;。まあ日本軍の方は8個師団が壊滅状態に陥ったけど。
とりあえずシベリアの戦いはこれで一段落といったところでしょうか。次の巻からはヨーロッパなどが主舞台になると思われます。この巻では現実の日本軍でよくあった将校の陸大出身者とそうでない者との対立や、参謀の横暴などがあり、「ああっやっぱり日本軍なんだな」と感じさせてくれます。普通の架空戦記では粛正されてしまうことの多い辻正信も相変わらず元気ですし。
あと4章のタイトル「死天使は冬至に踊る」を見てもしかしたらと思ってましたが、あとがきを読むとやっぱり富永 浩史氏の作品名から取られてたんですね。まさかお知り合いだったとは。
最後に、今回は「綾波」は残念なことにまったく被害を受けませんでした(^^;。
この巻は、前巻までとは違い、ヨーロッパが舞台になりました。
1942年3月、それまで中立を守ってきたイタリアがソ連側に立って参戦。ただ参戦直後の人間魚雷などによる攻撃で、イギリス海軍に大損害を与えるなどかなり健闘してますが、チュニジアが連合軍側の支配下にあったり、この世界では連合軍側のロンメルがアフリカにやってきたりしてるので、かなり短期間で、リビアからイタリアは叩き出されてしまうんでしょうね(^^;。
イタリア領エチオピアでは、第18師団を率いる牟田口廉也将軍が、首都アジスアベベに一番乗りすべく猪突猛進して、イタリア軍最精鋭の第65「サヴォイア」擲弾兵師団と、真っ向から激突して大損害を出すという皮肉な出来事が起こってるし。といっても、このままでは牟田口が、「イタリア軍最精鋭部隊と、激戦を繰り広げた勇将」ということになってしまいそうで、ちょっと気分がよろしくないです。
しかし、このシリーズはパロディが多いですが、今回さらに多いですね。作者の方が3日3晩徹夜で見たという「勇者王ガオガイガー」とか色々。私はこういうの結構好きですが(^^;、人によってはかなり食傷を感じるかも知れません。
最後に、今回の「綾波」は、航空攻撃で傷ついた空母「蒼龍」を雷撃で処分するという、エヴァを知ってる人ならば、「ちょっと待てい!」と思うようなお仕事をしました。その後、魚雷発射管に、敵機からのロケット弾が命中しますが、「蒼龍」へ魚雷を発射した後なので、誘爆して致命傷になることも無く、無事助かっています(笑)。
VOL.6 北大西洋追撃戦 (1998.8.3 追加)
1942年5月、ゴルシコフ少将に率いられた、ソビエト大西洋艦隊は英国に対する通称破壊のため出撃します。戦力は、戦艦「ソビエッツキー・ソユーズ」「カール・マルクス(旧ドイツ海軍 ビスマルク)、「エンゲルス(同ティルピッツ)、空母「スパルタカス(同グラーフ・ツェッペリン)等の9隻の主力艦「9隻の戦鬼」を主力とした一大艦隊です。彼らはつきまとってくる連合軍の航空機を、空母「スパルタカス」の艦載機で追い払いながら、日英連合艦隊と死闘を演じます。
極東戦線においては、日本軍の切り札「2式重戦車」の試作型が登場しました。あとがきによると、史実の4式と5式をごっちゃにしたような戦車だそうです。ついでに、これに刺激されて、ソ連の戦車でドイツの88ミリ砲を搭載したT34/88あたりもボチボチ登場するかも知れません。
あと、Leafネタ大爆発・・・。
戦艦大和には、レーダーこと「毒電波」を運用する人員として、「築島 卓也」海軍中尉と、開発メーカーの「来須河電波研究所」の開発主任「永瀬 源次郎」が乗艦しています。「来須河電波研究所」は戦後数十年を得て、世界的規模の大企業「来須河電工」に成長するそうです。きっと、将来的にはメイドロボなども開発するのでしょう。
勝手に類推すると、築島中尉には妹がいて、彼女は不思議な感じのする美少女なはずです。永瀬主任にも、警察や、教師や、格闘技が得意な執事などの親戚がいるんでしょう。
「来須河電波研究所」の所長には、2人の娘が居そうですし、研究所に資金援助をした「温泉王」と呼ばれる富豪の名字は、ひょっとして「柏木」でしょうか?
そのほか、本文中には「操り人形」「狩猟者」等の怪しい単語が多数登場します。
しかし、ここまでパロディ満載なのに、帯に書かれた『リアリティを追求した戦略シミュレーションの傑作』というのは、少し違ってると思いますね(笑)。
あと、艦隊戦が舞台なのに「綾波」は、損害を受けるどころか登場さえもしません。個人的には、非常に残念です(^^;。
この巻では、RACことロシア・アフリカ軍団とイギリス第8軍の北アフリカ戦線での戦いを主に描いています。それと、ついに題名どおり、アメリカ(&トルコも)が戦争に参戦。フランス領アルジェリア経由で、パットン将軍に率いられた戦車部隊がソ連に占領されたチュニジアになだれ込んできます。
史実のDAK(ドイツ。アフリカ軍団)ならぬRACを率いるのは、史実で自由ロシア軍を率いていたアンドレイ・ウラソフ将軍。何故か、編成は第15戦車師団&第21戦車師団で、史実のDAKと同じですが。イギリス第8軍の指揮官は、史実通りモントゴメリー将軍です。普通の架空戦記では、無能者扱いされることが多いモントゴメリー将軍ですが、この作品では「健全な戦略家」として描写されていて、個人的には嬉しい限りです(^^) あそこまで手堅い戦争が出来る将帥は、滅多に居ないと思ってますので。
ソ連軍の大きな欠点であった無線機の不備による、コミュニケーション不足もドイツ製の無線機を大量に装備することによって、改善されています。それと、152ミリ砲を装備するソ連の重砲兵戦車KV−2が活躍するのも珍しいかも。
今回の一番のパロディは、教導機甲大隊の砲兵中隊長を勤める梁河勇也(やながわ ゆうや)大尉。一見優男風の美男子である彼は、陸大を卒業したばかり。陸大卒は普通、参謀勤務になる筈なのに第一線の中隊長に回されたのは、同性愛者の彼が、貴之という青年の愛をあるヤクザと争って、でかいトラブルを引き起こしたからに違いありません!
彼の出生は、6巻で名前が出た「温泉王」の妾の息子ということになりますし、親戚には20歳の甥1人と、美人の姪が4人いることも確実です。もちろん、戦闘時には「狩猟者」と言っても差し支えないほどに、キレたサディストの性格に豹変することは当然ですね。…って、何だかLeafの「痕」のネタばらしを相当やってしまったような気が(笑)
あと独立無線第88中隊、通称”はっぱ中隊”なる部隊も登場します。
それと、こちらの世界でも、ロンメルは「砂漠の狐」と呼ばれて大活躍するわけですが、ちょっと今回の活躍凄まじすぎでした。「伝説」にしかなりようが無いぞ、あれは。
最後に、やっぱり予想通り「綾波」は出てきませんでした(笑) 飽きた訳では無さそうですが、ネタ切れでしょうか(^^;。
1943年1月7日、極東方面ソ連軍は日本軍に奪われたチタを奪回するために、大攻勢を開始する。その作戦は失敗したら、当分の間まともな作戦行動は取れなくなるほどに、極東ソ連軍の全力をあげた賭けであったが、戦術的には勝利をおさめたものの、戦略的にはチタを奪取することが出来ず、失敗に終わる。
ヨーロッパ方面でも、イタリアのシチリア島にアメリカ、イギリス、日本などの同盟軍が上陸。その影響でイタリア本国ではムッソリーニが失脚。その後、あっという間にソ連軍によってイタリア全土は占領される。
ソ連本土のバクーや、サポロジェなどにも、アメリカのB17、イギリスのランカスター重爆撃機等による戦略爆撃が開始され、トルコなども戦線に加わった今、ソ連支配領域は完全な包囲体制に陥りつつあった……。
この巻が、かなりのターニングポイントになってますね。いよいよ戦争後半といったところです。
今回のチタ攻防戦が、史実のクルスク攻防戦に当たると思われます。戦局の主導権を取り戻すべく強行された、要塞化された突出部への戦車による強行突撃が、ある程度までは成功しても、両翼部への反撃で逆包囲の危険にさらされて、作戦中止に追い込まれるところなんて同じですし。
日本軍も、アメリカから供与されたM4シャーマンやバズーカ、ジープ、あと食事としてアメリカ軍のレーションを運用し始めて、膨大なアメリカの物資の恩恵を受け始めました。
今回、「綾波」は久しぶりに登場しましたが、これっぽちも被害を受けませんでした。これからの収束されていく亜欧州大戦では、被害を受けることは難しそうです。
徐々に追いつめられるソ連軍。
モンゴル社会主義共和国への日本軍への電撃戦で、同盟国のモンゴルが脱落。イラン方面での同盟軍の攻勢でイランを喪失。イタリア半島では、ナポリやモンテ・カッシノ等で、同盟軍や失脚したムッソリーニ率いるファシスト党残党部隊との激戦を繰り広げる。
やがて、黒海のクリミア半島に同盟軍が上陸するにつれ、ソ連軍の戦法も完全に外道な物と化した。
次の巻ぐらいでノルマンディー上陸作戦ぐらいですか。そろそろ、終盤に近づいてきました。
この世界の3式戦闘機「飛燕」は、ドイツのFw190Aになるのですね。となると、液冷エンジンを搭載して前部が長くなった発展型のFw190DかTa152が、5式戦闘機になるのでしょうか。
この巻には、Leafネタは出てきませんでしたが、イギリスの「カノン」級駆逐艦というのが出てきます。これは、実在する駆逐艦ですけど、普通、このタイプの駆逐艦は「キャノン」級駆逐艦と呼ばれることを考えると、やはり、あのゲームネタでしょうね。乗組員の台詞は「ONE」してるし。
あと、この巻での「綾波」はソ連の対艦体当たり攻撃隊の攻撃を受けて、体当たり自体はかわしましたが、壊れた体当たり機のガソリンを浴びて炎上して、小破しています。
そう、前から話だけは出てましたが、この巻から、ソ連版「神風攻撃隊」が登場します。ただ、史実でも敵の飛行機に体当たりする「ターラン」攻撃法が、前線のパイロットによって、結構行われていたことを考えると、個人的には違和感を感じなかったりします。