著者 横山 信義 カバーイラスト 生頼 範義 挿絵 西野 公平 ワニ・ノベルズ
1巻 「國破れて大和あり」
初版発行 1997年1月15日 定価 本体790円+税
ISBN4-584-17781-3
2巻 「烽火極東に連なり」
初版発行 1997年5月15日 定価 本体790円+税
ISBN4-12-500497-8
3巻 「巨艦遠方より還る」
初版発行 1997年12月15日 定価 本体790円+税
ISBN4-12-500497-8
(全3巻)
この本はもし戦艦「大和」が戦後も生き残っていたらどうなったかを描く架空戦記で、そのコンセプトは「征途」と酷似しています。ただ「征途」が戦後「大和」を獅子奮迅に活躍させるために日本を南北に分割するなどの派手な歴史改変を行っているのに対し、こちらは史実そのままの戦後史の中に「大和」を放り込むというものです。その結果、かなり地味な感じを受けます。
1巻 「國破れて大和あり」
1944年11月29日、竣工したばかりの空母「信濃」は米潜水艦「アーチャーフィッシュ」の攻撃をかわすことに成功した。1945年4月、沖縄に上陸したアメリカ軍を攻撃するために「大和」をはじめとする残存水上艦隊に燃料片道だけの特攻作戦「菊水一号作戦」が命ぜられる。しかし出撃の前日、艦隊に燃料を補給すべき徳山の精油所がB29の爆撃を受けて炎上。作戦は中止される。
その後「大和」は機銃などを全て取り外し、単なる軍港防空艦になる。7月28日の呉大空襲では「榛名」「伊勢」「日向」等が大破着底していく中で「信濃」の犠牲により「大和」は難を逃れる。「ティルピッツ」を沈めた英軍ランカスター重爆撃機の「トール・ボーイ」爆弾による攻撃も計画されたが、実行される直前に日本は無条件降伏し「大和」はズタボロな状態だったがなんとか生き延びた・・・。
史実通り戦争が進む中で、「大和」が終戦まで何とか生き残るまでを描いています。史実の戦争の展開を知っているものとしては、「菊水一号作戦」が中止されても1945年7月24、28日のハルゼー機動部隊による呉大空襲をどうやって避けるのかという疑問が残りますが、空母「信濃」を潜水艦の攻撃から守り、代わりに犠牲にすることによって「大和」を生き残らせました。
しかし「大和」が戦後も生き残る架空戦記はあっても、空母「信濃」が戦後まで生き残る架空戦記はありませんね。「信濃」は空母「ミッドウェー」と同じぐらいのサイズですから、大規模な改造にも耐えられますし大型機も運用できますから、生き残っていたら現在でも充分使いものになると思います。話も作りやすいだろうし。
2巻 「烽火極東に連なり」
終戦後、「大和」はアメリカ軍に接収され、副砲、高角砲、機銃を全て撤去した後、アメリカの12.7センチ両用砲とボフォース40ミリ機銃を装備。その他多々な回収を経てBB−65「モンタナ」と名付けられてアメリカ海軍に加わった。コールサイン”ビッグY”こと「モンタナ」はその直後勃発した朝鮮戦争。そしてベトナム戦争においてその46センチ砲をもって対地支援に威力を発揮することになる。そんな中、大和の旧乗組員を中心として「『大和』返還を望む日本国民の会」、通称「大望会」が成立する。最初は小さな団体だったが地道な活動により会員も増え、活動も大規模になっていった・・・。
「大和」は「モンタナ」と名前を変えて、アメリカ軍に加わり実戦参加するのですが、歴史が史実通り展開しているので、戦闘シーンは対地砲撃ばかり。時たま敵の航空機などの攻撃があるだけで非常に地味です。ただ日本の港を出航しようとする「モンタナ」が日本の漁船の大群により一時ストップさせられたりなど政治的な出来事は多数起こってます。
あと当時の左翼的な運動をこれでもかとばかりに、こき下ろしまくっているので個人的に少し反感を感じました。そりゃまあ作者の意見が正しいことはわかっていますが、ここまでやらなくても。
3巻 「巨艦遠方より還る」
1975年4月29日、南ベトナムの首都サイゴンは今まさに陥落しようとしていた。”ビッグY”こと「モンタナ」を含む第7艦隊は最後の作戦行動として、サイゴンからのアメリカ人1,000名と南ベトナム政府の要人とその家族6,000名の救出作戦に従事した。それから「モンタナ」は1986年のリビアのシドラ湾での戦闘に参加した後、第3砲塔を撤去してそのスペースに合計186基のMk41VLS(垂直発射)ミサイルランチャーを装備した、「アーセナル・シップ」構想の実験艦として湾岸戦争に参加する。そしてこの戦争の後、「大望会」の長年の運動の成果もあり「モンタナ」こと「大和」は日本に返還されることになった。だが「日本が過去の侵略の罪を償い、真に平和を愛好する国であると世界に認められるためにも「大和」は日本の手で廃艦にすべきである」という左翼系文化人などの意見もあり、日本は大論争に巻き込まれていく・・・。
”ビッグY”こと「モンタナ」は1980年代に至って、「征途」の「やまと」と同じようにVLSミサイルランチャーを装備しますが、「やまと」のようにイージス・システムを自前で装備して独立した戦闘が可能ではなく、ミサイル管制は同行しているイージス艦に行ってもらうというまさに「アーセナル・シップ」構想そのままの艦となりました。
しかし、この巻では返還される「大和」を巡って、日本が大論争になるわけですが、もし自分がこの世界に生まれていたら、絶対に「大和廃艦派」になっていたでしょうね。正直言って「大和」が伝説的な名声を得ているのは「菊水一号作戦」での悲劇的な最後&「宇宙戦艦ヤマト」の爆発的な大ヒットがあってこそだと思っていますし、それが無い世界では「大和」を懐かしむ声は相当低くなるのでは無いかと思います。そもそも今でも個人的には「大和」型1隻作るぐらいなら、同じだけの鉄使って「松」型駆逐艦50隻作るべきだと思ってるのに(^^;;。