著者 谷 甲州 挿絵 佐藤 道明 角川ノベルズ&中公ノベルズ
「北満州油田占領」
ISBN4-04-782601-4
覇者の戦塵1932 「激突上海市街戦」
ISBN4-04-782602-2
覇者の戦塵1935 「オホーツク海戦」
ISBN4-04-782603-0
覇者の戦塵1936 「第2次オホーツク海戦」
ISBN4-04-782604-9
覇者の戦塵1933 「謀略熱河戦線」
ISBN4-04-782605-7
覇者の戦塵1937 「黒竜江陸戦隊」
ISBN4-04-782606-5
(ここまで角川ノベルズ、以下中公ノベルズ刊)
覇者の戦塵1939 「殲滅ノモンハン機動戦」(上)
ISBN4-12-500441-2
覇者の戦塵1939 「殲滅ノモンハン機動戦」(下)
ISBN4-12-500445-2
覇者の戦塵1942 「撃滅北太平洋航空戦」(上)
ISBN4-12-500469-2
覇者の戦塵1942 「撃滅北太平洋航空戦」(下)
ISBN4-12-500470-6
覇者の戦塵1942 「急進 真珠湾の蹉跌」
ISBN4-12-500494-3
覇者の戦塵1942 「反攻 ミッドウェー上陸戦」(上) (1998.1.26追加)
ISBN4-12-500500-1
覇者の戦塵1942 「反攻 ミッドウェー上陸戦」(下) (1998.2.27追加)
ISBN4-12-500513-3
覇者の戦塵1942 「激突シベリア戦線」(上) (1998.11.10追加)
ISBN4-12-500513-3
覇者の戦塵1942 「激突シベリア戦線」(下) (1998.12.16追加)
ISBN4-12-500566-4
(以下続刊)
もし満州の「大慶油田」を第2次世界大戦前に日本が発見していたら・・・、というIFを描いている架空戦記です。だからといって諸般の架空戦記と同じように派手な戦闘シーン等や歴史改変が行われるわけではなく徹底的に地味に話は進行していきます。ところどころでごく小さな改変を繰り返し、それが後から大きく効いてくるという感じですね。あと他の架空戦記では等閑にされがちな、当時の日本軍の残虐さやシステム的欠陥、満州国や中国での邦人の傍若無人な活動をこれでもかとばかり描いているのは特筆すべきでしょう。
作者の方針は「技術者の目から見た歴史小説」というもので、今のところそれは成功しているといえると思います。
「北満州油田占領」
満州事変直後の1931年(昭和6年)、北満州の荒野にて日本人によって油田探査が進められていた。「満州に巨大な油田が眠っている」という謎の僧侶尽瞑の主張に関東軍の参謀石原莞爾が飛びついたのだ。しかし試掘隊を護衛する歩兵中隊の中隊長各務大尉は陸軍大学卒業のエリートだが極めて横暴で無茶苦茶な命令を出しまくり。それを部下の小隊長秋津中尉や満鉄の南部技術員はそれをなんとか諫めようとするのですが・・・。
今回は史実の「大慶油田」こと「北満州油田」が発見されるまでです。しかし中隊長の各務大尉が機密を守るためと称して、現地の中国人を虐殺しようとするなど史実通りどうしようもない日本軍をちゃんと描いてますね。その後の大きな伏線となる満州の農業トラクター工場計画も動き出しました。
覇者の戦塵1932 「激突上海市街戦」
本巻での舞台は日貨排斥運動燃えさかる1932年の上海。様々な陰謀が飛び交う中、史実よりも一週間遅れとはいえ上海事変は発生してしまいます。だがおおかたの予想に反して日本軍は苦戦を続ける羽目に。
いくつかちょっとした歴史改変をしてますが、普通の人間にはまずわからないでしょう。私もこれを読んだ後に上海事変のことについて調べてみるまで、どこが史実と違うのかさっぱりわからなかったし。
覇者の戦塵1935 「オホーツク海戦」
舞台はこれまでとは一変して、1935年(昭和10年)の北太平洋。駆逐艦沼風は怪しい商船ロフォーテン号を臨検しようとしたところ、逃亡したあげく追いつめられると自沈してしまう。この船は満州国内で抗日活動を繰り広げる馬占山将軍への援助武器を積んでいたのだ。直接の背後にいるのはソ連だが公然と表に出ないように、わざわざアメリカ製の武器を運び込むという手間までおかして。
今度はソ連は2隻の重巡と8隻の駆逐艦によって編成された極東艦隊に護衛させて堂々と輸送船を送り込もうとします。日本海軍はそれを迎え撃とうと第4艦隊を派遣するのですが台風に巻き込まれて壊滅的な被害を受けてしまい、実質的な戦力はかなり目減りしてしまうという状況に陥ります。さていったいどうなることやら。
太平洋戦争で日本軍が体験した戦訓(空母の格納庫での火災や、アウトレンジ戦法の無効など)を、史実より早めに体験させておこうというのがこの海戦の主題なのかもしれませんね。いえ満州の馬占山に武器援助をするだけならシベリア鉄道経由の陸路でやった方が確実なような気がしますんで(^^;。あと太平洋戦争で戦隊司令官などとして活躍したメンツがパリパリの巡洋艦艦長だったりしますし。
その他重要な改変としては、史実の大戦末期に大量生産されて活躍した量産型駆逐艦”松型”の設計の開始。陸軍の永田鉄山将軍が暗殺から逃れたこと、海軍陸戦隊の海兵隊への改編の動きなどが出てきました。なかでも”松型”がこの時期に設計され始めたことというのは極めて大きいですね。日本海軍に全く欠けていたマス・プロダクション概念がかなり早く取り入れられたということですから。
覇者の戦塵1936 「第2次オホーツク海戦」
前作でからくもソ連極東艦隊及び輸送艦隊をカムチャッカ半島のペトロパブロフスクに封鎖することに成功した日本海軍。オホーツク海は流氷で覆われており夏になるまではソ連軍は出てこれないものと思われた。しかしソ連軍は最新鋭の砕氷艦を駆使していつのまにか脱出していた。日本軍はこれを追跡しようとするが、特殊部隊の襲撃や機雷及び潜水艦の雷撃等で遅れ気味に。
ついに日本軍のレーダー研究が本格化してきました。これまで日本軍が想定していた中部太平洋では視界がいいのでレーダーの開発は等閑にされていた面がありましたが、北部太平洋が主戦場となると、どうしても肉眼だけでは頼りにならないという理由でです。まだまだこの時点では開発はほとんど進んでいませんが。
覇者の戦塵1933 「謀略熱河戦線」
この巻は少し時間をさかのぼり、満州事変末期の日本陸軍の動きを描いています。短期間で満州全域を占領し、実質的な支配を果たそうとする関東軍の戦略は一応の成功をみました。しかし国際連盟の調査団の報告は日本にとって不利なものであり軍事力に頼って外交を軽視してきた日本は、満州国を独立させ国際的に孤立する道を突き進みます。さらに広大な満州すらまだ完全に把握しているとは言い難いのに熱河省にまで大軍を投入し戦線を拡大する関東軍。抗日武装兵力鎮撫の鍵を握る馬占山将軍の懐柔のため陣内中尉は出発することになるが、関東軍参謀の宮地中佐の陰謀が裏でうごめく。
2巻の「覇者の戦塵1933 激突上海市街戦」の直接的な続編にあたりますね。日本からの移民によってもともと住んでいた中国人たちが土地を追い出されたなどの描写がありなかなかきついものがあります。あとこのシリーズは架空と現実の歴史の区別が付きにくい面があるので今回は田中 正人氏による解説が付き多少はわかりやすくなっていますが、舞台となる満州の地図ぐらいはつけてもらわないと不十分だと思います。
しかし事実上、3巻にあたるこの話が5巻に来ているのかなあ。まさかあまりの1、2巻の地味さに角川書店の担当が「派手な戦闘シーンを入れろ」みたいなことをいったんじゃないでしょうな(邪推モード(笑))。
覇者の戦塵1937 「黒竜江陸戦隊」
中国政府内での西安事件などの内紛に乗じ関東軍は中央の意向など無視して、勝手に中国華北地方に戦端を広げていく。そんな中、馬占山軍によって黒竜江の交通遮断が行われる。参謀本部の石原莞璽大佐は関東軍の求めた2個師団派遣を受け入れる代わりに、満州の河川地帯の警備は海軍陸戦隊に任せるとの条件を関東軍に飲ませる。石原本人は関東軍への牽制としてこの処置を行ったつもりだったが、小早川少佐に率いられた実質一個大隊未満の黒竜江陸戦隊は哨戒特務艦「禄剛」を用いて縦横無尽に河川機動を行い大活躍を始めた。
この世界のターニングポイント的な巻でしょう。参加部隊の早期満州派兵による2.26事件の不発。宇垣一成内閣の成立。史実で大量生産されて船団護衛等に活躍した海防艦の量産実験。戦艦大和級の設計完全見直しなど様々な歴史改編が行われました。しかし戦艦大和級が史実よりも強力に改良されて出てくる架空戦記は枚挙にいとまがありませんが、史実よりも小さくなるかもしれないというのはこれぐらいのものでしょうね(笑)。
戦闘シーンもシリーズ中一番派手で、なかなか楽しませてくれます。地上部隊への艦砲射撃の有効性など小さな戦訓を積み重ねていくことも忘れません。私は今のところシリーズ中でこの巻が一番気に入ってます。
覇者の戦塵1939 「殲滅ノモンハン機動戦」(上)
1939年5月、北満州のノモンハンにて武力衝突が発生、最初はモンゴル人民共和国と満州国との国境紛争でしたがすぐにソ連軍と日本軍の正規軍同士が激突する全面武力衝突に突入します。関東軍は戦車第3連隊、戦車第4連隊を投入したが、歩兵部隊とのまともな連携は全く無しで時代錯誤の突撃を繰り返し続ける戦車部隊はソ連軍の圧倒的火力と巧みな戦術の前に大損害を受けます。最新鋭の97式中戦車でさえBT戦車の分厚い装甲に歯が立たない有様の中で、2両だけ配備された1号砲戦車は野戦力作車との協力の下、唯一ソ連戦車に大損害を与え続けます。
激戦の末、壊滅状態に陥った戦車第3、4連隊は戦線の後方に下がって再編成しようとしますがはかばかしく進まず、駐屯地への帰隊を出張するものも現れるほど。日本から来た参謀本部作戦班の秋津少佐は、完全機械化された工兵部隊である特設飛行場設定隊と組み合わせ寺岡支隊として編成し直しますが、現地の部隊を率いる少壮参謀から完全に無視されている状態。彼等を埒の外においたまま、重砲兵部隊を増援に呼びよせて再び攻勢をかけるのですが・・・。
この巻から出版社が、角川から中公に変わりました。はっきりいってここまで地味でハードな作品が角川から出版されていること自体にかなりの奇異感を感じていたので、これでいいのかもしれません。角川書店ですと無茶苦茶な横槍をだして内容自体無茶苦茶になりかねないし(個人的な偏見です(^^;;)。
ついにこのシリーズも史実でボロ負けしたノモンハンまでたどり着きましたね。日中戦争がどうにか回避されたので日本軍の機械化は”ほんのちょっとだけ”ましになっていて史実の一式砲戦車にあたる一号砲戦車が少数配備されるまでになりました。戦車の性能だけではなく工兵部隊や歩兵部隊との効果的な共同作戦も現地で血を流しながら覚え始めています。
しかしこの話の中で、BT戦車の76.2ミリ砲搭載タイプ「BT−7A」を苦労して捕獲させることに成功させているのですが、これはあとから効いてくるのかな。あといつの間にか海兵隊も独立してますし。
覇者の戦塵1939 「殲滅ノモンハン機動戦」(下)
1939年7月末の日本&満州軍のソ連軍への総攻撃は寺岡支隊の渡河攻撃により何とか互角の体勢に持ち込むことに成功します。しかし万全を辞して大増強に努めるソ連軍の砲撃によって日本&満州軍は徐々に劣勢に陥っていくのに後方の軍司令部は、自分たちに都合のいい情報だけを聞いて悪い情報に目をつぶり抜本的な増強は全くなされません。
そんな中たった一人派遣部隊の増強を唱え続ける秋津少佐。彼は満州の奉天製作所で海兵隊の試作戦車を目撃します。海軍8センチ高角砲搭載の重戦車「一二試重戦」。これを何とか戦場に投入できれば。彼は参謀本部の石原少将から海兵隊の実戦投入を防ぐために満州に派遣されてきたことは完全に無視し、海兵隊のノモンハン派遣を実現しようとするのですが当然のことながらはかばかしくいきません。そしてついに8月20日、ジューコフの率いるソ連軍が日本軍の3倍以上の兵員数、20倍以上の戦車、圧倒的な制空権のもと総攻撃をかけます。日本軍は史実のごとく参加部隊が90%以上もの損害をだして殲滅させられてしまうのでしょうか?
この本を発見したとき、別の架空戦記かと思ってしまいました(^^;。帯に「海兵隊一二試重戦登場!草原を疾駆する陸上機動部隊」という見出しが書かれていたし表紙も見たことのない戦車でしたから。これまで実際に史実に出てきた兵器、もしくはその改良版しか出てこなかったこのシリーズですが、ついにオリジナル兵器が登場しました。
オリジナル兵器の一二試重戦車は性能が、主砲40口径8センチ高角砲(実質口径76ミリ)、最大装甲圧50ミリ、重量25トン、エンジンは航空機用エンジンで400馬力、潜水渡河可能、エンジンの出力に余裕はあり多少の発展に問題なし。ということは潜水渡河が出来るということを除けばアメリカのM4シャーマン初期型と同等の性能と思っていいのかな。まあいくらなんでもいきなりT34やパンター並の戦車が作れるとは思えないし、こんなところが妥当なところでしょうね。
話の展開はかなりうまいです。海兵隊の投入がなんだかんだいって遅れてしまったことで決定的な時期に戦闘に加入させましたから。さらにこの段階ではまだ軽戦車が主力の海兵隊に苦戦させることにより、これから重戦車の本格的な普及が進むと思われます。しかし永田鉄山将軍を3巻で暗殺から救ったことがこんなところで効いてくるとは。
覇者の戦塵1942 「撃滅北太平洋航空戦」(上)
ソ連軍の攻撃によって本格的な戦争が始まり、満州と樺太では断続的な激戦が続く1942年初め。陸海軍の最新型レーダー基地が置かれている千島諸島の北端、占守島に突如大爆撃と共にソ連の空挺部隊が大挙侵攻をかけてきました。輸送演習のため航行中の海兵隊の船団から占守島まで距離はわずかに500キロだが、情勢が全く掴めない。攻撃を決意した海兵隊連合機動部隊司令の蓮美大佐は自ら操縦桿を握り発艦しますが・・・。
いつの間にかソ連の攻撃による戦争が始まっていますが、ソ連も戦争勃発直後に史実通りドイツからの奇襲を食らい、それほど極東方面に力を回すことが出来ず膠着状態に陥っている模様。ジューコフが粛正され、史実のように部隊を極東から引き抜けない状況でも独ソ戦はおおむね史実通りの展開のようです。大きな違いは宇垣一成の尽力により日独伊三国同盟は既に流産していることですかね。
蓮美大佐の登場により、これまで重厚な雰囲気で展開してきたストーリーが「軌道傭兵」シリーズと同じ、かなりはちゃめちゃなノリになってしまいました(^^;。やはり「軌道傭兵」シリーズのハスミ大佐と何らかの関係がある人物なんでしょうね。性格も同じようにかなり無謀な人です(^^;;。ホントに彼一人にストーリーがかき回されてますね。
今回新しく登場した兵器は、97式艦上攻撃機に搭載可能な71号電波探信儀(レーダー)です。空中から敵機を探知し、海兵隊航空部隊の一式戦爆(零戦の防弾力をアップし、地上部隊との共同のために無線機能を改善した機体)とともに圧倒的に優勢なソ連空軍との戦いに活躍します。あとレーダーによる敵艦船砲撃なども試され始めました。しかし蓮美大佐に食われてしまってそんなに目立ちませんが(笑)。
覇者の戦塵1942 「撃滅北太平洋航空戦」(下)
海兵隊の活躍により降下したソ連空挺部隊を封鎖することに成功しましたが、連合艦隊はまったく千島方面に戦力を回そうとせず、その結果細々とながらもソ連軍への補給は続けられ断続的な戦闘が続いていました。ソ連軍は名目的には中立国であるアメリカの協力の下、アメリカ海軍のヨークタウン級空母を使用して、堂々とアメリカ製の軍用機を入手し戦局を一気に転換しようとします。それを防ごうと海兵隊と伊53潜水艦はアメリカ機動部隊に進路を向けるのですが・・・。
ストーリー中に、その傑出した装甲などで第2次世界大戦中の傑作機として知られるイリューシンIL−2地上襲撃機を海兵隊が捕獲したので、後方に送られて研究され、日本機の装甲の強化に繋がるかと思っていたら、まさかあんな使い方をしてしまうとは・・・。はっきりいってぶっ飛びました(^^;。
最後に史実より遅ればせながら、ついにこの世界でも本格的な日米戦争が勃発してしまいました。ですが戦況自体はそれほど芳しくないようです。詳細は次巻以降で詳しく語られるでしょう。
覇者の戦塵1942 「急進 真珠湾の蹉跌」
このシリーズも11巻目にして、ついに日米戦に突入しました。長かったです(^^;。普通の架空戦記では始めのあたりで済まされてしまう歴史改変を、10冊かけてやってしまったわけですから、ずいぶん豪勢と言えるのかもしれません。しかしもともとこのシリーズは太平洋戦争の回避を目的として始まった筈なのですがいつの間にやら。谷 甲州先生はこれまでのあとがきでは安易な架空戦記を批判するようなことを言っていたのに、この巻のあとがきでは歴史改変に思いっきりはまっていますね(笑)。「世の中にシミュレーション系の小説が多いはずだ。そうなのか。みんな、こんな面白いことをやっていたのか」とまで書いてるし(^^;;;;。あとこのシリーズはもう一つ「技術者の視点から昭和初期の日本をとらえ直す」というテーマもあり、これまでの作品には必ず技術者が出てきましたがこの巻には出て来ません。作者も思惑が外れてしまったようですが。
この巻では、加賀、翔鶴、瑞鶴の空母3隻による真珠湾奇襲と、それに伴うアメリカ軍空母機動部隊との戦いが主に描かれています。史実ではこれに赤城、蒼龍、飛龍の3隻を加えて合計6隻で真珠湾を攻撃したのですが、「覇者の戦塵」ではこの3隻はミッドウェー島攻略に回っています。開戦時期も昭和16年12月ではなく、昭和17年4月になっているし。
さて、これまでなされてきた歴史改変をもとにして、史実からの変更点がいくつも明らかになりました。
その他、アメリカが日本の参戦を察知していてフィリピン防衛のために日本の先制攻撃の直前に、先に日本に最後通牒を突きつけ、その結果日本軍が各地で返り討ちに会っています。開戦1日目でハワイ及び機動部隊からの波状攻撃を受け加賀中破、ミッドウェー島を攻略に向かった空母赤城、蒼龍、飛龍の艦隊は米空母レキシントン、エンタープライズの攻撃を受け赤城撃沈、蒼龍は大爆発炎上中。フィリピン方面では空母龍驤が撃沈された模様です。横山信義の「修羅の波濤」並のつらい出だしになってますね。次の巻では、この巻でほとんど描かれなかったミッドウェー方面での戦闘が描かれるらしいです。
あと史実では活躍できず、たいていの架空戦記では無視されている小型潜水艇「甲標的」が大活躍しているのは始めて読みました。しかもそれに乗っているのは史実では真珠湾で捕まって捕虜第1号になった酒巻少尉だし(^^;;;;。
覇者の戦塵1942 「反攻 ミッドウェー上陸戦」(上) (1998.1.26追加)
この巻は前巻と同じ時期に行われたミッドウェー攻略作戦です。参加空母は赤城、蒼龍、飛龍ですが、いきなり史実のミッドウェー海戦の再現で、赤城と蒼龍が爆弾搭載中に敵弾を受け、誘爆を起こしまくって沈没してしまいます。それでも南雲司令官は生き残った飛龍と海兵隊の特設空母 光陽丸を使ってしゃにむにミッドウェーに強襲をかけ、ついに海兵隊の連合機動部隊と陸軍の一木支隊が島への上陸に成功します。
しかし、対地支援可能な海兵隊の航空機は、全て艦隊司令部に取られてしまい、未占領の飛行場から出撃する米航空機の攻撃に上陸部隊は大苦戦を強いられます・・・。
電探や無線を用いて、効率的に戦闘を行う海兵隊航空部隊と、無線も使えないので手信号で意志の疎通をし、場合によっては命令無視で勝手な行動も容認される雰囲気のある海軍航空隊との対比がうまいと思います。
しかしミッドウェー島、何とか攻略できそうなんですけど、取ってからいったいどういう展開にするつもりなんでしょうね。ハワイ攻略作戦とかやらない限り潜水艦で海上封鎖されて終わりになりそうな気がするのですが。
覇者の戦塵1942 「反攻 ミッドウェー上陸戦」(下) (1998.2.27追加)
この巻では、 「急進 真珠湾の蹉跌」に登場した、空母 翔鶴、瑞鶴からなる真珠湾攻撃部隊も、ミッドウェー攻略部隊の生き残り空母 飛龍と合流して激しい空母戦が繰り広げられます。ただ前作で予告されていたこの世界での技術史は、次の巻に回されてますが(^^;;;。
しかし、蓮美大佐があまりにもスーパーマンになってしまったような気が(笑)。2、3日あとの情勢を予測しているのはともかく、半年後の日本軍の戦略予想までしてしまうし。で、その蓮美大佐の予測によると、ミッドウェイを陥落させても、遅くとも半年後までには放棄するだろうということで、破壊工作の準備まで進める用意周到ぶりです(^^;。
この「覇者の戦塵」では、日本はアメリカから最後通告を受けた後、それを受けて立ち戦争に突入したという設定ですが、それでも戦争は長引くみたいですね。個人的には正しい判断だと思います。
次の巻は、大陸方面の戦いが主で、今年の秋ぐらいに出るようです。まあ、これまでかなり速い発刊ペースでしたから、少しぐらい休憩されても良いのではないでしょうか。他の作品もあることですし。それに延びたとしても、佐藤大輔ほどは延びないでしょう(笑)。
覇者の戦塵1942 「激突シベリア戦線」(上) (1998.11.10追加)
激戦が続く太平洋戦線と違って、ドイツのソ連侵攻に伴い、実質的な休戦状態が続いている満州戦線。
ドイツとイタリアによる日本の対ソ戦引き込み外交工作が、長距離連絡機によって執拗に続けられているさなか、ソ連領カムチャッカ半島や、日本海沿岸からのアメリカ軍B24重爆撃機による日本本土空襲が開始。さらに日本海にアメリカ海軍の潜水艦が出没にするにいたり、辻政信中佐などの強硬派に引きずられて、ソ連沿海州に対する攻撃作戦を行うことになります・・・。
いやあ、地味です(^^)。やはり「覇者の戦塵」シリーズはこうでは無くては。前の巻まで、散々大騒ぎしていた海兵隊の蓮見大佐も今回出てこないし(笑)。
今回のテーマは、レーダーなどの電子機器に使用される真空管などの精密部品の信頼性の向上ですね。史実の日本軍では殆ど見られなかった技術者と実戦部隊の地道な協力によって、敵味方識別装置などが徐々に使い物になっていく地道な展開でなかなか良いです。
今回は航空部隊の戦いが主でしたが、下巻では地上部隊の出番になるのでしょうか? カムチャッカ半島に北千島に駐留していた海兵隊が上陸して戦闘しているとの記述が有りましたが、ここら辺だとアメリカ本土が近いから、アメリカの海兵隊との戦いになる可能性もあります。
覇者の戦塵1942 「激突シベリア戦線」(下) (1998.12.16追加)
下巻では、シベリア鉄道を一部地域で切断、ウラジオストックなど沿海州とソ連本土の連絡を絶って、休戦交渉テーブルに付かせるための限定攻勢が描かれています。
日本軍が動かせる兵力は、機械化された一個歩兵師団と幾つかの増強部隊のみ。対するソ連軍は、ドイツとの戦いにおいて、たった一台で、一個装甲師団の進撃を48時間ストップさせた実績を持つKV−1B重戦車や、現在でも紛争地域で使用されているT34中戦車、重装甲のシュツルモビク地上攻撃機、76.2ミリ対戦車砲”ラッチュ・ブム”、14.5ミリ対戦車ライフルの大量使用、など強力な兵器を揃えて迎え撃ちます。このシリーズの陸上戦における一大決戦です。
うーん、個人的にはカムチャッカ半島の海兵隊の戦闘が描かれると思っていたのですが、予想が外れました。ずいぶんと直接的なアプローチ方法です。
あと、この世界では歩兵用携帯対戦車ロケットランチャー、つまりバズーカ砲が、ついに日本軍で実用化されました。海兵隊の零式重戦車も、陸軍で採用されて、百式重戦車となってます。史実では、異常に海軍と仲の悪かった陸軍ですから、てっきり、独自開発して、史実の3式中戦車レベルの戦車を大量配備するかと思いましたけど。
航空隊の方も、成形炸薬ロケット弾と、40ミリロケット機関砲を用いた対戦車攻撃もしっかりこなしています。地上からの管制体制も出来てきました。
ソ連軍も、かなり強く描かれていると思います。特にシュツルモビク地上攻撃機の無敵さなんか。
あと、攻撃作戦の初期に、日本軍の右翼を攻撃してきた部隊が、戦車と自走砲合わせて60両ぐらいですので、恐らくソ連軍の編成で、1941年12月タイプの騎兵戦車旅団1個(編成に、KV重戦車が無いようでしたから)と、軽自走砲兵連隊1個。終盤でイマンに逆襲をかけてきた部隊の戦車数を約100両と見込めば、1942年3月タイプの1個戦車軍団といったとこでしょうか。かなり適当な推測ですが(^^;;。
しかし、ついにこの巻で、日本とソ連の休戦が実現してしまったようですね。このシリーズも大きな区切りを迎えたようです。日米戦が終わっても、ソ連軍との国境紛争や、ゲリラの蠢動が続き、将来的な満州国の崩壊という展開になると、予想していたので、これまた意外です。
と言っても、このシリーズの展開は、私の予想ことごとく外れまくってますね(笑)。 まあストーリーが読めないというのは良いことだと思いますが。