福田 誠 歴史群像新書
1巻 ISBN4-05-400880-1
2巻 ISBN4-05-400881-X
3巻 (1998.4.14 追加)
初版発行 1998年4月11日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400882-8
4巻 (1998.10.1 追加)
初版発行 1998年10月6日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400989-1
(以下続刊)
1917年に起こったロシア革命が、ドイツやポーランドに波及。東欧が赤色化してしまった世界での架空戦記です。どうも題名からすると空母「赤城」が主役級の兵器のようですが、史実よりも性能が低いという珍しい設定です。というのはこの世界では日本海軍の大艦巨砲主義者が史実よりも勢力が強く、戦艦の保有を制限したワシントン条約に抵触しない形で戦艦を配備するために、有事に空母を巡洋戦艦に改装できるようになっているのです。そのため史実では100機近く搭載できた艦載機が36機しか積み込めないというトホホな事になってます。しかしいくら何でもこれはばれると思うのですが(^^;。
1巻
ときは1936年、ソビエト連邦は極東地域の海軍力を補強するために戦艦「ウラジミール=イリイッチ=レーニン」をはじめとする5隻の戦艦をウラジオストックに派遣することに決定した。これに対して日本海軍は大きな危機感を抱き、政府の方針には全く関係無しに独断でこれを撃沈することを決意する。航空第一主義者で大艦巨砲主義者とは常に対立している山本五十六は事件が終わった後スケープゴートにされることを承知の上で、空母艦載機による戦艦の撃沈を達成しようと企む。
ドイツが共産主義国になったということもあって戦艦「ウラジミール=イリイチ=レーニン」は史実のビスマルク級と同等の性能ですのでかなり強いです。
ストーリーの展開としてはまだまだこれからに期待でしょうね。わからないことが多すぎます。ただ史実通り日本軍がそれなりにおかしいのはGOOD!(笑)。
この巻のあとがき(私はあとがきから先に読む主義です)で著者は、自作のボードゲームを使って1936年の戦力で、満州で日本軍とソ連軍の戦闘を行ったところ、何回やっても次のような結果となったと書いています。
1.日本軍は2週間で満州から叩き出される。
2.日本軍は最良の場合でも10個師団以上を喪失。
3.日本には関東州(大連以東)しか残らない。
著者はまさにこの通りにストーリーを展開させました。1巻での事件の報復に満州に攻め入ったソ連軍。戦力が劣り、戦術思想も完全に遅れている日本軍は各地で戦車部隊に蹂躙されていくのです。
しかし敗戦にかこつけて、史実で悪評を喫した軍人や官僚などの面子を殺しまくってますね(^^;。架空戦記でこのような人たちを処分してしまうことは珍しくないですが、ここまでやってしまったのは初めてでしょう。
結果的に停戦時には日本陸軍は完全に壊滅し、大陸には関東州を残すのみとなってしまいましたが、それが元となって、史実の占領軍による政策以上の改革が行われていくようです。
この世界では、ドイツが共産主義を奉ずる「ドイツ民主共和国」(首班:ゲーリング)と、資本主義を奉ずる「ライン連邦」(首班:ヒトラー)に分裂していますが、祖国を統一するために、「ドイツ民主共和国」が「ライン連邦」に全面攻撃をかけたことから、ついに第二次世界大戦がスタートします。
というわけで、赤軍型の編成をして、騎兵部隊も大量に存在するドイツ民主共和国軍と、グデーリアンによって徹底的に機械化が行われたライン連邦軍という、凄すぎる組み合わせによる戦いが見れるのです。史実で活躍したドイツ軍の将帥たちも、両国に分裂して戦いを繰り広げてます。
これまで確認できたところでは、次のとおりです。
・ドイツ民主共和国側
ロンメル、クルーゲ、ボック、クライスト、レープ、カイテル、ヘープナー、レーダー、リュッチェンス、ラングスドルフ、ガーランド、スコルチェニーなど。
同盟軍のポーランド軍として、レヴィンスキー(マンシュタインの元々の名字)、ヤルゼルスキー(史実では、ポーランド大統領になる)。
・ライン連邦側
グデーリアン、ハルダー、バイエルライン、キルヒナーなど。
ライン連邦の主力戦車は、フランス製のソミュアS35だけど、それを改修したのを、「ティーゲル(虎)」戦車なんて名付けて使ってますね。なんてしょぼい「ティーゲル」だ(笑)。
その他、”マーケットガーデン”作戦を攻守ともに逆転させた、”市場菜園”作戦なんて言うのをドイツ民主共和国軍側が実行したり、”ラインの守り”作戦や、”ダンケルクの悲劇”とかが、史実とは全く別の事件として起こったりして、かなり強烈なパロディになってます。
ゲーリングは、この世界でも空軍所属の地上戦力に異常にこだわっており(笑)、”空軍防衛隊”とかいうエリート部隊を作り上げていて、史実のSS(親衛隊)みたいな役割を受け持っているようです。あのオットー・スコルチェニーも所属してますし(^^;;;。当然、空母も「空軍海上基地」と名付けられて、空軍の所属です。ドイツ民主共和国の海軍が史実よりも強化されているのは、「大事な「空軍海上基地」を護るために強化した」ということになってるようです(笑)。
中国方面では、満州を制圧したソ連が、中国共産党を率いる毛沢東と衝突。「毛沢東を相手にせず」などの声明を出したりしたあげく、国共合作を行って共闘する、中国国民党&中国共産党との泥沼のゲリラ戦に引き込まれてしまいました。地図上では、長江以北をソ連&満州国軍は制圧しているものの事実上「点と線」、つまり都市と交通路だけを掌握している状態。
ちなみにソ連によって、共産国家となった満州国ですが、幹部クラスには2巻の敗戦によって、日本陸軍を追放されたメンツが大量におり、海軍主導の現政府を転覆すべく、国内の不穏派と何やら陰謀を巡らしており、こちらの展開も楽しみです。
あと、前巻で、ソ連がアメリカに発注していた「飛行機の発着出来る戦艦」はトンデモない代物に仕上がりました。全長300メートルOVER、排水量6万8000トン以上、主砲16インチ3連装4基を背負い式に前後2基づつ、さらに中央部に長さ120メートルの飛行甲板があり、カタパルト2基装備しています。搭載機は36機。
結局、この戦艦空母を巡る事件で、アメリカがこの戦争に参戦してしまうわけですが、ここの展開は「何だかなあ」という感じでした。他の部分が凄く良かっただけに非常に残念です。もうちょっとスマートな展開にすることも、決して不可能で無いと思うのですが。
どうもこのシリーズ、人気が無かったようでこの4巻でいきなり打ち切りです(T-T)。あとがきで、
「舞台設定の方ばかりに頭が行ってしまったのは、ちょっとばかり反省しなければならないところである」
なんて、言葉が出ているところを見ると、派手な戦闘を好む読者には全く受けなかったのかも知れません。
しかし、少なくとも、私のように戦闘シーンの派手さよりは、その舞台設定を楽しむ読者にとっては、凄く納得がいかないんですけど・・・。ここまで面白い舞台設定を持った架空戦記、そんなにないですし。
というわけで、打ち切りなので凄まじく早い勢いでストーリーが進んで行きます。もっとも、他の架空戦記では絶対見られないような、お遊びが多数炸裂しまくってますが(笑)。
前巻で、日米戦争が発生しましたが、イギリスへの援軍として、大西洋に来ていた空母赤城は1隻だけで、アメリカ本土の米大西洋艦隊本拠地ノーフォークに奇襲攻撃をかけることに。搭載機の不足のため、イギリスの複葉羽布張りの攻撃機ソードフィッシュまで、編成に加えた攻撃隊は奇襲に成功、空母ワスプ、ヨークタウン、ホーネットの撃沈に成功。そのせいもあって、マリアナ沖での日本とアメリカの艦隊決戦は日本の勝利に。やがて、ルーズベルト大統領の陰謀が米国民に暴露されて、日米は停戦しました。
欧州戦線の方は、ドイツ軍は指揮下の部隊をそれぞれ「北方軍集団」「中央軍集団」「南方軍集団」と編成し直して、フランス首都パリを目指す「青」作戦(史実では、1942年にナチスドイツが発動したスターリングラード&カフカス油田地帯占領作戦の名前)を発動したが、ドイツのロンメル将軍率いる”大ドイツ装甲軍団”と、ライン連邦のグデーリアンの第2装甲軍が激突して、ロンメルが敗北。作戦は失敗。
ライン連邦首都デュッセルドルフを圧倒的な大戦力で、攻略しようとしたドイツ軍の攻撃も、首都防衛司令官モーデル(史実では”総統の火消し”と言われた防衛戦の名人)の活躍によって頓挫。戦線は再び膠着状態。
やがて、1943年に入って、連合軍はソ連を味方に引き込むことに成功。ソ連は110個師団の大兵力で、ドイツの背後を奇襲。4月30日、包囲されたベルリンでゲーリングはピストル自殺。5月2日、ベルリンの防衛指揮官で、元帥になったばかりの第6軍司令官パウルスが、ソ連軍に降伏して第2次世界大戦は終了。
しかし、分割されたドイツが再統一されたわけではなく、ソ連占領地区はドイツ民主共和国として存続、ライン連邦はドイツ連邦共和国と改名。まあ要するに、史実の東西ドイツと同じような関係に落ち着いた訳ですね。
やっぱり、残念なことに、打ち切りとなったので、全然解決されてない事件や、伏線などが多数あります。簡単に思いつくだけでも、
・3巻で、海軍に対抗すべくソ連と組んで陰謀を巡らせており、第2次世界大戦の最終段階では、密かに戦車一個師団がソ連欧州方面軍に編入されて、ドイツで実戦参加した日本陸軍はいったいこれから、どういう行動をとるのか?
・泥沼と化してる中ソ紛争が、まったく解決が付いてない。
・ルーズベルトを、対日開戦に突き動かした「外交評議委員会」について、全く説明無し。
・最後の最後で、ポーランド人ではなくドイツ人として、ポーランド政府の停戦命令を無視し、絶望的な戦いに飛び込んでいったレヴィンスキー将軍は一体どうなったのか?
・ドイツとアメリカは、どちらも共通の敵日本を抱えているのに、協力体制などは何故試みられなかったのか?
・第2次世界大戦後、ライン連邦の首相ヒトラーは、どういう運命を辿ったのか。
等々・・・、いくつもあります。
しかし、このシリーズが終わってしまうのは悲しいですけど、パロディがほとんど史実ネタなので、かなり戦史に詳しくないと、そんなに楽しめないことも事実かも知れませんね。やはり、パロディにするなら、アニメネタとかの方が受けるのでしょうか。
私はこのシリーズのパロディには楽しませてもらったのでこれから、元ネタ辞典でも作りたい気分です(笑)。