大日本帝国航空隊戦記 

  著者 林 譲治   飛天ノベルズ(5巻から、KSS出版)

1巻 「重慶奇襲作戦」

 初版発行 1997年9月5日  定価 本体800円+税

 ISBN4-89440-078-2

2巻 「香港争奪戦線」

 初版発行 1997年12月5日  定価 本体800円+税

 ISBN4-89440-090-1

3巻 「北洋掃討戦線」 (1998.2.17追加)

 初版発行 1998年3月5日  定価 本体800円+税

 ISBN4-89440-100-2

4巻 「ノモンハン戦車戦」 (1998.5.11追加)

 初版発行 1998年6月5日  定価 本体800円+税

 ISBN4-89440-105-3

5巻 「スンダ海峡航空戦」 (1999.8.12追加)

 初版発行 1999年8月30日  定価 本体895円+税

 ISBN4-87709-378-8

6巻 「トラック島沖航空戦」 (1999.11.12追加)

 初版発行 1999年11月30日  定価 本体895円+税

 ISBN4-87709-391-8

(全6巻)


 第一次世界大戦で欧州に出兵した日本は戦勝国となったもの、Uボートで輸送船を大量に沈められたり、ヴェルダンの戦い等の地上戦で大損害を受けてしまいます。この大損害を受けて空軍と戦車の重要性を認識してその後の日本は軍備を整えていくのです。。例えば史実で陸海軍完全に別々だった航空機開発計画の統一化など。あと親ドイツ的な面があった日本はドイツに反感を抱く国家となってしまったとか、いろいろ細かいところをいじっているんですけどね。それにしてもこのセンスのない題名は何とかしてほしいです。

 しかし1930年代、中国大陸を舞台に日本軍とドイツの義勇部隊「コンドル軍団」が戦う架空戦記も初めてのような気が。

 

1巻 「重慶奇襲作戦」

 1巻では1930年代始めに起こった蒋介石軍による上海封鎖における戦闘と、その後中国を支援するべく送り込まれてきたドイツの義勇部隊「コンドル軍団」との戦いの始まりが描かれています。しかし日本が中国で戦争やっても、他の国の非難がないように相当歴史をいじってますが。

 この巻では日本軍が大活躍するということはそんなに無く、むしろ細かい失敗を繰り返しています。これらの事柄は史実よりも早く改善されて続刊での伏線になるんでしょうね。あとまだドイツの航空部隊しか登場してませんが、直に史実通り1号戦車で構成されたフォン・トーマ率いる装甲部隊も登場するはずです。ついでにポルシェ・ティーガーあたりが開発が速まって送り込まれてきたら大笑いかも(^^;。 

2巻 「香港争奪戦線」

 2巻は蒋介石の国府軍の香港奪還作戦での戦闘が描かれています。もちろん国府軍の真の主力はドイツのコンドル軍団です。

 しかし何だか今回はお遊びだらけ。史実で零戦等を開発した堀越技師は設計開発集団「鼬動−Weasel Works」を作るし(SR−71やF117を製作したアメリカのスカンク・ワークスのパロディですな(^^;)、ギャンブル好きの山本五十六はラスベガスで一文無しになるし、水雷戦隊を指揮したくてたまらない南雲忠一提督が心ならずも「空母戦の権威」に祭り上げられていったり、しまいにゃ「俺の歌を聞けぇ」だし(笑)。

 あっ、やっぱりドイツ・コンドル軍団の戦車部隊は1号、2号戦車の他にも重戦車を持ち込んできました。さすがにポルシェ・ティーガーとかじゃなかったですが(笑)。

3巻 「北洋掃討戦線」 

 2巻の最後で「充分な戦果を上げた」という名目で本国に「転進」してしまったドイツのコンドル軍団。それに替わる敵の姿はまだはっきりとは登場してきません。

 この巻の舞台は1938年、史実とは違って、自由経済地区となってアメリカや日本の大規模な資本投下が行われ活況と混沌の最中にある満州。

 そこには馬を捨ててオートバイに乗り換えていく馬賊達が存在しており、彼等は「世界の果て」「革命」するために、江沢民子という謎の女性に率いられて何やら暗躍している。さらに、遥か北極海を通ってウラジオストックに回航されてきたソ連の装甲艦「スタハノフ」(ドイツのポケット戦艦のライセンス生産)、日本のソ連新型戦車「A20」(T34のプロトタイプ)奪取作戦などが複雑に絡み合っていく・・・。

 この巻は歴史には絶対残りそうもない秘密作戦が主ですね。檜山良昭の「スターリン暗殺」を読んだ人間としては、当時ソ連を荒れ狂っていた大粛清を逃れて日本に亡命したGPUのリュシュコフ大将が登場したのが嬉しかったです(*^_^*)。史実では表の歴史に残ることなく、惨めな最期を遂げたリュシュコフ大将ですが、この世界ではちゃんと生き残れるのでしょうか。

 あと、日本の一部軍人が、朝鮮で栽培した麻薬を満州で売りさばくなど、日本人が大陸でやってる汚いこともちゃんと描かれてます。

 世界情勢の方は、なんとフランスがファシスト国家と化してドイツと同盟を組み、イギリス及びイタリアと対立するという状況になってます。ソ連では史実どおり大粛清が行われており、日本軍には女性兵士が採用されはじめました。

 前巻に引き続いて、パロディも結構あり、第一次世界大戦を体験した陸軍若手将校達の集まりが「ラ・セーヌ会」で、欧州に行かなかった古株将校の集まりが「ナポレオン会」・・・、をーい。馬賊集団の目的は「世界の果て」の「革命」だし。ただ、観念論ばかり持ち出して、実務には全く通じていない無能者として「奥田」という人物を出したのはやりすぎでしょう。少し事情に通じている人間なら、彼が何者なのかはすぐにわかってしまうと思われるからです。その通りの人物らしいという噂は、私も聞いているのですが。

 さて次の巻ではついに「弱い者が強くなるもの」の入手に成功した江沢民子はじめ馬賊達の行動開始ですね。彼等の「夢」はかなうのでしょうか?

 

4巻 「ノモンハン戦車戦」  (1998.5.11追加)

 1939年8月、満州は中華民国より独立を宣言。日本などの主要国は独立を承認したが、ソ連の後押しを受けたモンゴルとの国境紛争が発生した。ソ連はジューコフ率いる特別狙撃第57軍団を派遣、辺境の地ノモンハンで日本軍とソ連軍との激突が発生する。

 この世界の”ノモンハン事件”を描いてますが、私が読んだ架空戦記の中で、一番ハンデを付けまくりのような気がしまず(^^;。極東ソ連軍は史実の粛正の影響プラス密かに日本が売り捌いた阿片で汚染されまくって使い物にならないのに、日本軍は第一次世界大戦とかに参戦した戦訓をしっかり生かして、この時代としては望み得る限り最強の軍隊になっています。対戦車砲としてゲルリッヒ砲すら装備してるんですから。「覇者の戦塵」とかと読み比べると、ホントに同じ戦争を描いているのか怪しいですし。

 史実ではボロボロの戦車開発も、3巻で奪取したソ連のT34のプロトタイプ「A20」を参考にした「丁三四」戦車が開発され、ノモンハンではソ連の「T34」VS日本の「丁三四」という頭の痛くなる戦いが繰り広げられます(笑) 。

 海の戦いの方も頭が痛くなる展開で、日本と直接戦っていないことになっているソ連は、装甲艦「マキシム・ゴーリキー」「ゴスプラン」「コルホーズ」の3隻を日本との戦いのために、乗組員ごとモンゴル海軍に編入します。あの〜、モンゴルって海がない国なんですけど。

 けど一番ぶっ飛んだのが、ノモンハンにある「大興安嶺特別測候所」という研究施設、通称「毒電波研究所」。ついに架空戦記でLeafネタが出てくるとは・・・。ついでにそこの所長が「要塞」と呼ばれる研究施設を持つ早乙女博士。多分、彼には娘がいるんでしょうね(^^;。

 まあ、要するにレーダーなどの研究を行ってるところですが、所長は飛行機や戦車を破壊するための「怪力電波」の研究をしたいようです(笑)。

 しかし、どうするんでしょう、これからの早乙女博士。この巻で恐るべき実績(本当に恐ろしいです(笑))を上げてしまっている以上、とことんまで暴走しそうな気がします(^^;;;。この世界の日本は、レーダーの電波のことを「毒電波」と呼ぶほどシュールな世界になってしまいましたし。

 ちょっと残念だったのが、3巻で登場した満州独立のために戦う馬賊たちが、この巻では殆ど登場しなかったことです。せっかく彼らの活躍を期待していたのに。

 

5巻 「スンダ海峡航空戦」 (1998.8.12追加)

 ドイツ&フランス連合軍のポーランドとユーゴスラビア侵攻により、この世界での第2次世界大戦が勃発。両国はポーランドの占領には成功したものの、イタリア&イギリスの航空攻撃により、地中海に配置していた多数の軍艦を沈められてしまう。

 これに対抗するために、ドイツ側指揮官はロンメル、フランス指揮官はド・ゴールという両国の戦車戦のエキスパート同志が率いるアフリカ軍団を編成、イタリア領リビアに侵攻するが、こちらもしばらくして戦線は膠着状態になった。

 この状況を打破するために、フランスは植民地インドシナから、英領ビルマの民族独立主義者に武器援助を行って、イギリスの力をこちらに向けさせようとする。インドシナに送り込まれた日本の特殊部隊「”勝利門”旅団」の妨害などで何回かの失敗を重ねた末、とうとう両国は戦艦や空母を含む艦隊を護衛に付けた強行輸送船団を組織して、インドシナに向かうという訳の分からない事態に(笑)

 

 一時は、もう終わったかと思ったこのシリーズも、めでたいことに再び復活しました。

 しかし、ドイツ&フランスVSイギリス&イタリア&日本という他ではまずあり得ないような組み合わせで第2次世界大戦が始まっているわけですが、フランス軍が非常にドイツ軍のお荷物になっています。

 ポーランド戦の時も、歩兵支援に徹するフランス軍の戦車思想と、電撃戦を基本とするドイツ軍の戦車思想がお互いバラバラで、フランス軍の戦車部隊は、ドイツ軍戦車部隊の進撃に全然追いつけなかったけど、かわりにドイツ軍歩兵部隊の支援に回ることが出来、その組み合わせで勝利できているような物ですし。そのせいで両軍とも、自分の戦車戦術が正しいと思いこんでいて共同戦術なんて間違ってもしません。アフリカに侵攻したロンメル&ド・ゴールの2人の将軍も敵と戦うより、味方の将軍同士で喧嘩するのが重要な仕事ですし(笑)

 あと、フランス海軍がかなり情けないというか、かなり無茶な軍隊になってます。ここまで来るとドイツは、イタリアと組んだ方がまだマシだったかも(^^;。

 イタリア軍はかなり強化されています。リビアでの砂漠戦でイギリスから大量のトラックを供与されたので、史実みたいに砂漠で動きが取れずに殲滅されることもなく、高速で機動して、ドイツ&フランスの戦車部隊から逃げ回ってますし。

 インドシナ方面のジャングルに潜んで、フランス軍をゲリラ攻撃したり、フランスに反抗するベトナム独立同盟の軍事訓練を行う日本軍の「勝利門旅団」って、やっぱり史実のビルマ戦で、日本軍の戦線後方に降下して、ゲリラ戦を行ったイギリス軍の「ウィンゲート旅団」が元ねたなんでしょうね。というか直訳(笑)。

 しかし、最初の簡単なあらすじを見ても判るとおり、訳の分からないストーリーですが(笑)、何だかんだ言ってそれを納得させてしまう力技は相変わらず凄いかと。

 架空戦記を「あるシチュエーションの戦闘を見せる為だけに、無理矢理歴史を改変させている小説」と定義するなら、完璧な成功作かと思います。人によっては、このコンセプトだけで怒り出すんですけどね。

 

6巻 「トラック島沖航空戦」 (1999.11.18追加)

 独仏枢軸連合に、宣戦布告した日本とアメリカ。

 この2国は、フランス領のトラック島に強襲上陸をかけ、お互いに一歩に引かず、ついに形の上では同盟国同士な筈なのに、島の占領を巡って激しい戦闘が繰り広げられることに。

 今までにも増して、訳の分からない戦いが始まりました。

 相変わらず、日本軍はこの時代で望みうる限り、最強の軍隊ですが、アメリカ軍は大統領ヒューイ・ロングの政策もあり、かなり弱体化しています。統合参謀本部による指揮の効率化などは行われず、むしろ指揮を分裂する方向に改悪され、史実よりもかなり弱体化しています。

 何と言っても、軍の忠誠を疑う大統領に政治的に任命された「政治将校」が軍隊に配備されているという時点で終わってますね、この世界のアメリカ軍。もちろん、彼らは軍事的には無能者揃いなことは言うまでもありません。

 しかし、相変わらず好き放題やってますね。南雲忠一は、中将の癖に陸攻に自ら乗り込んで陣頭指揮を取るは、史実の「赤狩り」で狂信的な「マッカーシー旋風」を引き起こして悪名の高いジョゼフ・マッカーシー上院議員がヒューイ・ロングの悪事を糾弾した正義の味方ですから(笑)

 ただ、何と言っても一番凄いのは、ついに登場したこの世界の「大和」と「武蔵」です。

 普通の架空戦記なら、史実通りか少し改良しただけの巨大戦艦として登場するこの2隻ですが、この話では、

・排水量21000トン

・速力33ノット

・46−40センチゲルリッヒ砲4門装備

という性能の軍艦になっています(笑)。名前も「装甲艦」ですし。

 ちなみにゲルリッヒ砲とは口径が砲口に行くに従って小さくなる大砲のことで、砲弾を絞り込む事によって、初速を非常に高めることが出来ます。そのかわり砲身の寿命は異常に短いですが。

 史実では、ナチスドイツ軍が少数使用してますが、弾丸に使うタングステンの不足のため、それほど使用されませんでした。

 この「大和」に積まれているのは、最初の弾丸の口径が46センチで、発射されるときには40センチに縮められ、その初速は1200メートルをオーバーします。

 ここまで来ると、もはや貫通できない装甲は存在しませんね。強すぎ(笑)

 この「大和」「武蔵」の戦法は、ただその主砲が確実な射撃が出来る距離まで突撃して、敵戦艦にそのゲルリッヒ砲を叩き込む、ただそれだけです。その間、敵の砲火をくぐり抜けられるように、十分な装甲も施されています。

 「対戦艦」という点においては、いかなる架空戦記と言えども、この「大和」「武蔵」に敵う艦は無いかと。佐藤大輔「レッドサン・ブラッククロス」シリーズに登場する排水量23万トン、56センチ砲3連装4基、速力34.6ノットの「播磨」にすら、ゲルリッヒ砲の射程距離にさえ捕らえることが出来たら、勝利できるような気もします。

 あと、何とも信じがたい事ですが、このシリーズはこの6巻で最後だそうです。かなり尻切れトンボな感じを受けます。

 せめて、ヨーロッパ戦域での独仏本国軍との戦いを描いて、終わりってのが、筋な感じがします。エピローグで多少描かれるだけっていうのは、中途半端すぎ。

 

 

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