新世紀日米大戦

  著者 大石 英司  挿絵 安田 忠幸  中公ノベルズ 

1巻 「笑顔のファシズム」

 初版発行 1997年10月3日  定価 本体800円+税

 ISBN4-12-500486-2

2巻 「黄色い資本主義」

 初版発行 1997年11月10日  定価 本体800円+税

 ISBN4-12-500497-8

3巻 「真珠湾の亡霊」 (1998.1.26追加)

 初版発行 1998年1月15日  定価 本体800円+税

 ISBN4-12-500507-9

4巻 「トラトラトラ」 (1998.3.30追加)

 初版発行 1998年3月15日  定価 本体800円+税

 ISBN4-12-500519-2

5巻 「ミッドウェーの警鐘」 (1998.9.22追加)

 初版発行 1998年9月15日  定価 本体800円+税

 ISBN4-12-500533-8

6巻 「祖国ふたたび」 (1999.1.18追加)

 初版発行 1998年12月20日  定価 本体800円+税

 ISBN4-12-500553-8

7巻 「甦る星条旗」 (1999.4.18追加)

 初版発行 1999年3月15日  定価 本体850円+税

 ISBN4-12-500583-4

8巻 「眼下の危機」 (1999.7.4追加)

 初版発行 1999年6月15日  定価 本体850円+税

 ISBN4-12-500594-X

9巻 「地を這う者たち」 (1999.11.26追加)

 初版発行 1999年11月15日  定価 本体850円+税

 ISBN4-12-500611-3

10巻 「愚行の葬列」 (2000.4.22追加)

 初版発行 2000年3月15日  定価 本体857円+税

 ISBN4-12-500637-3

(全10巻)


 西暦2018年、行政改革や財政再建に失敗した日本は国家システムが疲弊しきり暗鬱な国となっていた。明るい材料といえばあたかも第2次世界大戦前に満州国が建国されたときと同じような満蒙地域への大量移住政策だけで既に300万人以上が移住。その変わりに日本には一千万人以上の大量の中国人労働者が流れ込むが、政府としては子供をほとんど産まない日本人より子供をそれなりに産むこちらの方がまだ都合がいいという状態。アメリカも日米安保を破棄した後は、ワシントンで起きた核爆弾テロ事件でモンロー主義に立ち返り外への活力を失っている。そんななかシベリア地方が「シベリア共和国」として独立を宣言。それを巡り日米が対立に巻き込まれていくのですが・・・。

 大石英司氏の既著「環太平洋戦争」「アジア覇権戦争」等の世界の未来という設定です。前記の作品で自衛隊の下級幹部だった登場人物が師団長や教育総監などの重職に就いています。とはいってもそれらの作品を読まなくても充分話は理解できるでしょう。この世界の日本の社会は凄まじく暗いです。しかし現在行われている行政改革とかがうまく行かなかったら、こういう世界になる可能性も極めて大でしょうね。これまでの作品で辛辣ながらもかなり的確な、官僚等の日本的システムの批判をしてきた著者だけあって容赦がありません。あと医療用ロボットや戦闘用ロボットなどが大量に出てくることもあり、「架空戦記」より「サイバーパンクSF」のほうが雰囲気は近いかも。

 

1巻 「笑顔のファシズム」

 西暦2018年、手術での麻酔事故で20年間昏睡状態に陥っていた朝倉伸吾は蘇生した。しかし20年間という歳月は残酷なもので彼の看病に疲れた妻は自殺、息子は自衛官としてシベリア共和国独立支援のための「シベリア義勇軍」に参加、娘は失踪、かつて同じ若手官僚だったときに共に理想を語り合った元同僚は俗物的な高級官僚と化していた。そんな中、独立を宣言したシベリア共和国を攻撃するために派遣されたロシア共和国軍シベリア派遣軍はアメリカ合衆国義勇部隊の支援を受けて日本の「シベリア義勇軍」に攻撃を仕掛けようとしていた・・・。

 まだ一巻は朝倉伸吾の目を通した形でのこの世界の解説や、これから登場しそうな兵器の顔見せ程度ですね。しかし自衛隊の運用する人間型戦闘ロボットの形式が「足軽3号」で名前が「鈴木太郎 三曹」というのはかなりセンスがいいと思いました(^^)。

2巻 「黄色い資本主義」

 前巻に引き続き、シベリアでの戦闘を描いてます。

 1巻で伏線があった20式戦闘機”震電”が登場しますが、かなり凄い形です。

 しかし「足軽3号」こと「鈴木太郎 三曹」大活躍ですねえ。実際、敵にとってはターミネーターと戦っているようなものかも。あとは、次巻以降起こると思われる対米戦への布石が着々と・・・。例えば海上自衛隊のヘリ空母(とてもそうとは思えない艦ですが(笑))やアメリカの電脳無人戦闘機などがベールを見せ始めます。

 最後に、あのお方の登場には大笑いしました(笑)。

3巻 「真珠湾の亡霊」 (1998.1.26追加)

 西暦2020年、ついに1ドルは400円台に突入。さらにアメリカは一方的に債務不履行を宣言、金本位制に復帰した結果、日本経済は破滅。国際通貨基金(IMF)の破産宣告を受けるまでに陥った。追いつめられた日本政府はついに対米戦争を覚悟。膠着状態になっていたシベリア戦線から部隊を秘密裏に引き上げ、米海軍の空母をつぶすべく真珠湾を機動部隊と特殊潜航艇で攻撃する。歴史は繰り返すのか・・・。

 対人地雷禁止条約が成立してしまったおかげで、より高度な対人兵器が開発されるという設定は皮肉そのものですね。この巻でロシア軍が使用している自走攻撃ユニット”アルマジロ”など極悪非道としかいいようがありません。なんたって車高50センチ程のアルマジロに似せた自動攻撃兵器で、偵察ユニットからデータを受け取り、トップアタック方式のロケットランチャーを発射するという代物ですから。

 あと自衛隊の「足軽」シリーズに対抗する人間型戦闘ロボットとして、型式名「センチュリオン2型」こと「ダイアナ・スミス中尉」が登場します。名前の通り、女性型のロボットでブロンド美人の姿です。これを見て「ををっ、HMX-12”マルチ” or HMX-13”セリオ”だっ」と思ってしまった私は思いっきり汚れてますな(爆)。

 「ダイアナ・スミス中尉」は、日本の「足軽」シリーズや中国の「孔明」シリーズよりも圧倒的に性能が勝り、兵器開発競争の悲哀を感じさせてくれます。特に川などは全裸になって泳ぐので、いきなり目の前に上陸しても、普通の男性兵士がとっさに反応できないところなどは、最強と言って良いのではないでしょうか(笑)。

 その他のロボット型兵器も多数登場します。昆虫型のスパイロボットや、ロボット整備兵「疾風」等々・・・。空母など水上艦艇の乗組員もロボットで占められてきてますし。

 

4巻 「トラトラトラ」 (1998.3.30追加)

 西暦2020年12月7日、1941年の真珠湾攻撃と同じ日に、日本の「ほうしょう」型ヘリ空母から出撃した攻撃部隊によって、ハワイのパールハーバーは炎に包まれた!! 停泊していた軍艦および航空機部隊は壊滅的な損害を受ける。しかし、最優先目標で前日までいたはずの、アメリカ太平洋艦隊の空母「ヘンリー・A・キッシンジャー」と「リチャード・M・ニクソン」は、なぜか行方をくらましていた。アメリカ軍は、残存兵力を結集してパールハーバー付近に潜む日本の潜水艦を掃討するとともに、近くにいたステルス駆逐艦「ベーブ・ルース」級2番艦「ルー・ゲーリック」に、日本の機動部隊の追撃を命令した!!

 ようやく始まりましたねえ。日本とアメリカの戦争が。ちょっと長かったかも知れませんが(笑)。

 日本艦隊を追撃してくる「ルー・ゲーリック」に立ち向かうは、ステルス護衛艦「ゆきかぜ」。ちなみに艦長の名前は、湖醍 鎮(こだい まもる)二佐・・・・・・ちょっと待てい(笑)。もしかして、彼には”すすむ”とかいう弟がいたりして(爆)。

 しかし、この時代になっても高級官僚達は相変わらずなのね(-_-;。接待はノーパンしゃぶしゃぶならぬ、”ノーパン鮨”で受けて、退職後は、40年以上も、ろくに仕事をせずに、色々な団体を渡り歩いて、高額の退職金をもらいながら、余生を過ごす。いいご身分ですねえ。

 死にかけた人間の記憶をコンピューターに複写して(本来の肉体は死亡します)戦闘機などを操らせる、アメリカの”ジェネシス計画”にも、新しい参加者が。これまでの年寄りが主のメンバーと違い、今度は20代のうら若き女性。たぶん、彼女にとっては不幸でしょう。あーあ。

 

5巻 「ミッドウェーの警鐘」 (1998.9.22追加)

 初戦の勝利で、意気あがる日本は世界に向けて、太平洋戦争の古戦場ミッドウェー環礁の攻略を宣言。空母機動部隊&空挺部隊を出撃させた。

 対するアメリカは、ミッドウェーで急遽、損害の修理を行ったステルス駆逐艦「ルー・ゲーリッグ」と、人間の記憶をコンピューターに複写する”ジェネシス計画”によって、自分の肉体を無くしたパイロットで構成される幽霊部隊(ゴースト・ライダーズ)、その他、生き残りの空母部隊などを動員。さらに、現在ではステルスにはほど遠い旧式のB2戦略爆撃機によって、日本の機動部隊に対艦ミサイル飽和攻撃を仕掛ける。

 いきなり、ミッドウェーを舞台にするとは思ってもいませんでした。いつかは舞台になるだろうとは思ってましたけど。まあ第2次世界大戦のときとは違って、他に日本が戦線を抱えているわけでは無いですから、直接行くのは当然かもしれませんが。

 ついに、この巻で日米の地上部隊が直接激突します、といても、日本がレールガンを装備して、半径40キロ以内の敵を全て撃破できる強力な精鋭部隊、第一空挺団なのに対して、アメリカ側は、避難するときに取り残された女性将校が一人と、アメリカ版のロボット兵士”GIジョー”が数体のみ。

 ですが、彼女は日本の空挺部隊と互角に渡り合い、息詰まる攻防を展開させて、非常に読み応えがありましたね。

 

6巻 「祖国ふたたび」 (1999.1.18追加) 

 引き続き、ミッドウェーを巡る戦いが繰り広げられます。

 5巻で、たった一人で日本軍相手に戦って捕虜になったマリコ・S・ジョーダン大尉は、脱走して再び戦いを挑むは、ハワイ近くに潜んでいた日本の潜水艦が、アメリカの空母”リチャード・M・ニクソン”に攻撃かけるは、ミッドウェーを巡る戦いも大詰めですね。

 そして、ついに日米のステルス艦「ゆきかぜ」&「ルー・ゲーリッグ」の戦いにも決着が。しかし艦長の名前が、アメリカがジミー・カーク、日本が湖醍 鎮(こだい まもる)ですから、完全に「スタートレック」VS「宇宙戦艦ヤマト」になってます。使ってる兵器も、レールガンとかレーザーとかの未来兵器ですし(^^;。

 この巻で、ミッドウェー争奪戦は一応のけりが付いたのかな? 次の巻は、舞台がガラッと変わるのでは無いかと思います。戦争の進行スピードも時代に合わせて、やけに速くなってますし。

 

7巻 「甦る星条旗」 (1999.4.18追加) 

 日本軍のパールハーバー攻撃から2週間が経過、ミッドウェーの戦いの後、臨時休戦が結ばれ、戦線は膠着状態にあった。

 中国が間に立って、日米の間を仲介しようとするも、未だ負けっぱなしのアメリカはそれを拒否。スエズ運河から地中海艦隊を、パナマ運河から大西洋艦隊の膨大な兵力を回航して、再戦を挑んだ。

 まずは、日系アメリカ人&戦闘用アンドロイドで構成された特殊部隊が首都圏に侵入、工作を行うが、本命は第2次世界大戦の大激戦地である硫黄島。約70年ぶりにアメリカ軍は、再び強襲上陸作戦をかける!

 

 日本側に湖醍 鎮(こだい まもる)二佐の上官として、真田 弘彦一佐が登場しました。当然、技術者肌のお方で、「こんなこともあろうかと」という台詞が口癖なのは当然です(笑)

 まあ、元ネタの「宇宙戦艦ヤマト」でも、古代と真田では、どう見ても真田の方が偉そうでしたから、妥当な選択かと。

 この作品で、一番のメインになっているのは、日本に侵入した日系アメリカ人の特殊部隊と、それを追う日本の警察&自衛隊なんですが、相変わらず日本の閉鎖性なんかは全然変わってないという描写に、リアル感を感じるとともに、なんか寂しい感じを受けてしまいました。まあ、やっぱり、実際の20年後もこんな感じでしょうが。

 とりあえず、次の巻では硫黄島攻防戦が本格化みたいです。

 

8巻 「眼下の危機」 (1999.7.4追加)

 アメリカ軍の硫黄島上陸作戦は、まず旧式の戦略潜水艦オハイオ型から上陸したコマンド部隊が橋頭堡を確保。そこに客船に偽装した強襲揚陸艦「イオー・ジマ」から海兵隊が上陸するが、守備隊の奮戦や、ステルス艦「ゆきかぜ」のレールガンによる支援攻撃等で、大損害を受けて攻撃はストップ。アメリカ軍は強襲離着陸型ステルス輸送機、C−200スーパーフロッグを強行着陸させて、戦況を一変できるレールガンを硫黄島に輸送する。

 一方、日本では将来の人口減少に対処すべく、人工子宮計画が極秘のうちに進められていた……。

 

 硫黄島で激戦が繰り広げられますが、第5章のタイトル「蝸牛角上の争い」に象徴されるように、非常に人命の犠牲自体がバカバカしく感じられる雰囲気を漂わせています。大石英司の作品に全般的に言えることですが、極めて反戦的な感じです。

 しかし、「人工子宮計画」と、それを遂行する理由には参りました。この戦争でどっちが勝とうとも、人類の将来は極めて暗いという、どうしようも無い世界ですな。

 まあ、そういう世界観自体が、この話を一般的な戦争モノでは無くしてますが。

 

9巻 「地を這う者たち」 

 暴風雨の中、小競り合いは行われるものの、全体としては膠着状態に陥った硫黄島戦。

 一方、日本本国では潜入したマリコ・S・ジョーダン少佐が、未だに捕まらずに、派手な破壊活動を繰り広げて大騒動を引き起こしていた。

 そんな中、日本にて世界初の量子コンピュータ「カムイ」が稼働を開始した。これまでのコンピュータを数世代上回る性能を持った次元の違う”神”と称すべきコンピュータ。

 「カムイ」に関して、日本政府は科学者達の反対を押し切って、軍事目的使用を行おうとし、アメリカはそれを無力化すべく、「カムイ」のある横浜みなとみらい地区にジョーダン少佐を送り込む。

 一方、天候が回復した硫黄島海域には日米の空母機動部隊が到着して、お互いに戦闘を開始。

 横浜と硫黄島。この2つの場所で、この戦争の帰趨を制する決戦が開始されようとしていた。 

 

 次の10巻で、このシリーズは終わるそうで、最後のクライマックスへの準備がされています。といっても、各所において、かなり激しい戦いが繰り広げられていますが。

 特に、首都圏でテロ活動を繰り広げるマリコ・S・ジョーダン少佐の活躍は格好良いというか、派手派手というか。

 個人的には、マリコ・S・ジョーダン少佐の部下として、同行しているコンピュータ・プログラマのヒトミ・キクマ少尉が、ちょっとボケてて良い味出しすぎ(笑)

 あと、全体的な構成もしっかりしていて、次の10巻できっちり終わりそうな感じがしますね。

 この9巻は、もの凄く良いところで終わっていて、次の巻へと、充分に期待を持たせてくれています。

 ただ、この時期になって「新世紀エヴァンゲリオン」のパロディが出てくるとは思ってもいませんでしたけど(^^;。

 

10巻 「愚行の葬列」 (2000.4.22追加)

 日米の空母機動部隊も展開して、陸海空の全てで激戦が繰り広げられる硫黄島。そして、量子コンピュータを巡って、横浜で暴れまくるマリコ・S・ジョーダン少佐。

 一方、激戦が続く中で、日米首脳は停戦のための政治交渉に入っていた。

 

 ついに最終巻。

 クライマックスということで、好き放題なシチュエーションで戦闘しまくってます。

 あの「オーロラ」を戦闘機として、実戦投入するわ、21世紀んじゃのに、海戦で相手の艦に接舷切りこみはするわ、やり放題。

 それでも、やはり、日本艦隊への有効な攻撃手段を持たない米軍が実行したジェネシス・パイロットによる日本空母への神風攻撃にはオイオイと思いましたが。いくら、バックアップした記憶で、復活できるとはいえ。

 大石英司の作品の終わり方は、かなりあっさり終わる感じというか、

「これからも日常が続いていく」

って感じの終わり方が多いと思いますが、この作品の終り方もそんな感じですね。

 人によっては、唐突な終り方で気に食わないという意見もあるでしょうが、私的には気にいってたりします。

 しかし、この話って戦争が解決しても、日米の抱える問題はどちらもほとんど解決していないのもミソですね(笑)

 まあ、ラストからも判るとおり、この作品の主題はそんなところに無いのですけど。

 確かに、最後の台詞には「おおっ」と思いましたし。

 

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