佐藤 大輔 イラスト 小林 源文 徳間ノベルズ
1巻 「衰亡の国」
ISBN-4-19-155130-2
2巻 「アイアン・フィスト作戦」
ISBN-4-19-155251-1
3巻 「ヴィクトリー・ロード」
ISBN-4-19-850056-8
(注意、少しねたばれあります)
私が架空戦記にはまる全ての原因となったとても罪深い本である(笑)。このシリーズの主役は実はあの戦艦大和。大和は第2次世界大戦を生き残り、南北に分かれた日本同士の戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、統一戦争などの数々の戦争に参加。1990年代にはなんとイージス艦に改装されるまでになってしまうのだ(笑)。
それではこのシリーズを読み始めたのは2巻からなので、そこからいきます。
1994年の1月にオリオン書房第一デパート店にて、この本を手に取ったとき確かに私は足を踏み外したのだろう(^^;。当時、私は「紺碧の艦隊」のようなリアリティのかけらもない架空戦記を軽蔑しまくっていた(今でもそう)。物心ついたときから軍事おたくをやっていて、旧日本軍の無能&閉鎖的&残虐非道ぶり&etcを知りまくっていたので、日本軍を格好良く書くこと自体に怒りを覚えていたといってよい。
だがそのとき軽蔑していた「架空戦記」の1冊にかかっていた帯に、「日本国家分断!」という文句が私の目を引いた。その本を手にとってぱらぱらと見ると、どうも太平洋戦争で敗北した日本が南北に分裂し、南日本と北日本の間で朝鮮戦争と時を同じくして武力抗争が起こり、さらにベトナム戦争でも社会主義を奉ずる北日本の義勇航空隊と、自由主義を奉ずる南日本のベトナム派遣軍が戦闘を繰り広げるという話であった。
私はひどく購入意欲に駆られたのだが、それは2巻であり当然のことながら1巻目も存在した。しかし1巻をぱらぱらと見たところ、私の嫌いな旧日本軍が勝利する話であり、良識(当時はそんなモノがあったのだ(爆))が邪魔してとても買うことは出来なかったので、ストーリーのつながりがほとんどないのを幸い、2巻だけ買うことにした。
数日後には耐えかねて、1巻も購入してしまうことになるのだが(笑)
そんなこんなでついに買ってしまった征途1巻。この巻では2巻で日本が分裂してしまった理由である1944年10月のレイテ沖海戦の勝利を描いている。
要するにミッドウェイ海戦等に勝利したので、太平洋戦争に勝ったなどというのではなく戦争末期、潜水艦と機雷により既に戦争の勝負がついていた時点のレイテ沖海戦で悪あがきして勝ってしまったがために、ソ連の本土侵攻を受け日本が南北に分裂してしまうというストーリー展開になるわけだ。
しかし本編ではほとんどそのことは語られない(笑)。1巻ではレイテ沖海戦の描写がかなりの部分を占め、アメリカ政府機関の秘密報告書によってその後の日本の運命が暗示されるものの、1巻のストーリーは1945年7月に北海道にソビエト軍、沖縄にアメリカ軍が侵攻を開始した時点で(アメリカの沖縄侵攻はレイテ沖海戦の敗北により史実より遅れている)生き残った戦艦武蔵が沖縄方面に、大和が北海道方面に出撃したところで終わっている。
そして2巻でその続きが語られることもないまま、いきなり1951年、日本が南北に分かれて戦争をやっている場面に飛んでしまうのだ(^^;。恐らく征途1巻があまりにも売れなかったため短縮されたという噂は事実なのだろう。現在の売れっ子佐藤大輔ではとても考えられないことだが。
1994年の2月に出た完結編の3巻。
前半の舞台はまず湾岸戦争。主人公の一人である藤堂 守上級大将が団長の日本民主主義人民共和国(北日本)対イラク軍事顧問団と、彼の弟である南日本の藤堂 進一佐が艦長の”海上自衛隊超大型護衛艦<やまと>”も参加している多国籍軍との戦いを描いている。後半はうって変わって、1994年に起こる南北日本の統一戦争となる。
「圧倒された」というのが、最初に読んだときの感想。湾岸戦争で藤堂 守がミッドウェイを中心とするアメリカ機動部隊にしかける大量の対艦ミサイルによる飽和攻撃。そしてそれを防ごうと対空ミサイルの大量発射でそれに対抗する多国籍軍のイージス艦。無機質になりがちと思っていた現代戦のミサイルの撃ち合いをここまで熱く描くことが可能だと思わなかった。
そして圧巻が統一戦争時に、日本民主主義人民共和国の日本統一のために一番邪魔な在日アメリカ軍を殲滅するために仕掛けた「戦術核爆弾先制乱れ撃ち」・・・・・。そりゃ5キロトンクラスとはいえ核爆弾を1、2発食らったら大概の艦船は沈むわな。しかもアメリカ軍だけに攻撃を集中させ、かつ事実上の内戦なので北日本に多数の血族がいる南日本はアメリカに核攻撃要請をなかなか出せないというおまけつき。初めて読んだときは唖然状態でした。
さらに1巻、2巻でもそれなりにありましたが、佐藤氏の作風を代表することになるパロディが大爆発。私がわかる限りでも「宇宙戦艦ヤマト」「マクロス」等多数。個人的には統一戦争時の人民赤軍の編成が、第お2次世界大戦時のナチスドイツ最後の大反撃として知られる1944年12月のバルジの戦いのドイツ軍の編成のパロディだったのに大笑いしました。
最終的評価としては、ニフティサーブのSFフォーラムでの架空戦記人気投票でダントツの1位に輝いたのも当然というべき作品ですな。
・追記
「征途」の日本民主主義人民共和国の人口に関する勝手な考察 という駄文をちょっと書いてみました。(1998.7.28 追加、2004.7.4改訂)