焦熱の波濤
著者 林 譲治 イラスト 志賀 功 歴史群像新書
1巻 ガ島奪還作戦! (1998.9.1 追加)
初版発行 1998年9月7日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-400960-X
2巻 ポートモレスビー攻略戦 (1998.12.2 追加)
初版発行 1998年12月8日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-401031-8
3巻 豪州打通作戦!! (1999.5.30 追加)
初版発行 1999年4月8日 定価 本体760円+税
ISBN4-05-401032-6
兵隊元帥欧州戦記の続編です。
前シリーズは、インド洋が枢軸軍の制圧下に置かれ、日本と、ドイツ・イタリアの間に恒常的な連絡路が開かれた状態で、終了しました。枢軸側が空母まで投入して、徹底的な通称破壊作戦を行っているので、1943年6月現在、北アフリカ上陸作戦の目処もまったく立っていません。日本海軍の主力艦上戦闘機がドイツ製のフォッケウルフFw190になってしまったり、アメリカの潜水艦作戦が戦争初期からまったく改善されてないなど、細かい(?)改変点も多数ありまうす。
このシリーズは、ロンドンに駐屯するアメリカ軍のパットン将軍による、イギリス政府に対するクーデター実行開始によって始まります。といっても、実行開始したところで、描写は終わってしまい、どういう風に決着が付いたかはわかりません。後の方で「パットン将軍戦死」と書かれてますので、失敗に終わったことはわかるのですが。まあこれは後の巻で明らかにされるでしょう。
1巻は、日本軍によるガダルカナル島再攻略作戦です。参加するのは前シリーズでアフリカ戦線で活躍した影山大佐率いる独立戦車第一連隊(元、独立戦車第一大隊)、前シリーズの3巻でクレタ島に強襲降下をかけた面子を中心に編成された独立降下猟兵第一大隊、2巻でドイツの空母シャルンホルストに乗り込んでいた右近中佐率いる面子は、空母葛城(元、アメリカ空母エセックス)に乗り込んでいたりとオールスターキャスト揃い踏みですね。
戦闘自体は、日本軍とアメリカ軍の電子戦を中心としていて描写もさすがです。
雰囲気は、前シリーズよりもお遊びとかが少なくて、普通の架空戦記に近づいた感がありますね。
しかし、映画クルーが宣伝映画を撮影に来る場面があるのですが、監督が黒澤で、特殊撮影監督が円谷って、やけに豪華(笑)。
1巻で、描写が少しあったとおり、アメリカがイギリス国内でクーデターを起こして、親米政権を作ろうとしたため、イギリスは連合国から脱落して、枢軸国と停戦。その結果、日本軍は、イギリスから資源と引き替えに、アブロ・ランカスター4発爆撃機や、スピットファイア戦闘機などを輸入して運用を始めました。
一方、ドイツとの関係は、フォッケウルフFw190戦闘機の国産化などのために、ドイツが送り込んできた技術顧問団と、日本の工場関係者などとの意見の対立などで、少なくとも日本側の印象は急激に悪化してます。肝心のプロジェクトに関しても全く進んでいませんし。
史実でもドイツから日本に送り込まれた技術者達が、日本の技術者や官僚と衝突して、その才能を生かせずに、これっぽちも役に立たなかったことなんかを知っていると、非常にリアルに感じられます。やり方としては、ドイツの技術者のやり方が正しいんですが、この当時の日本は現在と違って、労働者一人当たりの生産能率が非常に悪い後進工業国。しかも中途半端に自信をつけているものだから、自らの過ちになかなか気が付かないという状態ですから。
パロディの方も、かなりあって、自称「IQ3000」で自分の天才を自慢するルチ大佐(プリンプリン物語)、護衛空母「ピカード」や「ライカー」、「宇宙からの毒電波が電探に悪影響を及ぼすんだ」等々、色々ですね。
個人的には、ロボット三原則をもじった軍人三原則にぶっ飛びましたが(笑)。
しかし、アメリカのニミッツ司令長官が、護衛空母の用法を考え直すような発言をしたり、北方で米軍がアッツ、キスカ島を占領して、攻勢に出ていること、アメリカからソ連への援助ルートが、イギリスの脱落によりアラスカ方面の海路中心になっていること、そして、”グランドスラム”作戦という大作戦を行うため、多くの人材をそちらに割かなくてはならなくなっていること、etcから推測すると、ひょっとして、次の巻あたりで氷山空母でも出すんじゃないでしょうね(^^;;。
だとしたら、日本軍に、イギリス軍の「あんな兵器」を配備させた理由もよくわかります。
この巻では、再び舞台が欧州戦線に。
三国同盟を担うイタリアにおいて、政変が発生して、ムッソリーニが失脚。
以前より、密約を結んでいた日本とイタリアは、三国同盟を共に破棄、地中海からドイツの勢力を一掃するために、空母二隻、戦艦三隻を主力とするドイツ地中海艦隊を奇襲。かくして、ドイツVS日本・イタリアという架空戦記上、例を見ない対決が繰り広げられます(笑)
ちなみに、ドイツ軍の空母機動部隊は、「飛行機を飛ばす」という理由で、全て空軍の指揮下に置かれてしまいました。軍艦を動かす将兵も、海軍から移籍した「空軍水兵」と呼ばれています。九フランス海軍の3隻の戦艦も指揮下にあり、実権は海の事なんて、まったく分からない空軍将校が握っています。
当然のごとく、お馬鹿な行動をとって、事実上自滅してしまうのですが、兵隊元帥欧州戦記の2巻でも活躍した空母「シャルンホルスト」が、あんな情けない最期を遂げるなんて、悲しいモノがありますね。
日本側では、このシリーズの最初から活躍している影山連隊こと独立第一戦車連隊において、ドイツ製の兵器、イギリス製の兵器、その他雑多な兵器を扱ってきましたが、この巻に至っては、ついにイギリスのランカスター4発重爆撃機まで運用しはじめました。まさか戦車連隊の中に、爆撃機部隊を編成するわけにもいきませんので、このランカスター爆撃機は、砲兵部隊の所属になっています。もちろん、動力を備えて、地上を自走できることから「自走砲大隊」という名前になっていることは言うまでもありません(笑)
あと、イギリスは日本に大量に兵器を輸出してますが、ついでに訳の分からない兵器も大量に混ぜており、巨大な車輪にロケットモーターを付けて自走する兵器(ただし、何処に行くのかコントロール不能)パンジャンドラムまでも、日本に引き渡されて、当然のごとく影山連隊が装備しています。
ただし、開発元のイギリスでも、
「この兵器は、アメリカが勝手に開発したので、我々にも使い方はわかりません」
という大嘘をついているので(笑)、日本側では、
「きっと、橋などを防衛する為の兵器だろう」
と好意的に受け取っています(^^;。
高速で回転を加えて、低空で投下すると、水面を水切り石のように跳ねて飛んでいく、ダム破壊用の爆弾”ダムバスター”も、日本軍では、
「ダムとは全く無関係で、回転を加えることから、パンジャンドラムの航空機搭載バージョンに違いない」
と判断しているほどです(笑)。こちらは、史実でも実戦で活躍してたんですけどねえ(^^;。
しかし、ますます、これまでの架空戦記が踏み込んでいない未知の領域に踏み込んでますね、このシリーズは。ホントに展開が読めません。