強救戦艦メデューシン (2003.2.21 上巻追加)
著 小川一水 イラスト こいでたく 朝日ソノラマ文庫
上巻
初版発行 2002年12月30日 定価 本体476円+税
ISBN4-257-76988-2
まず、この本の表紙はこんな感じです。
表紙だけ見ると、何だか「萌え」要素の強いナース物ライトノベルだと、大概の人は思うかもしれません。
ですが、表紙とはイメージが全然違って、この本は「戦争に負けかけている国での野戦病院モノ」という作品であり、軍医の不足による看護婦による野戦開頭手術やら手足の切断手術、一応遠慮はするけど医療関係車両でも容赦なく攻撃してくる敵軍、食糧不足による味方部隊の人肉食など、凄惨な描写ばかりの本です。
太平洋戦争時の日本軍野戦病院は、「地獄」という言葉が可愛く思えるほどの悲惨な場所でしたが、作中の描写はそれをかなりソフトにしていますが、似たような感じです。
舞台はどこかの架空の世界で、主人公の一等看護婦アルテ率いるのは、第911医療衛生大隊第39看護班。
その巨大さから「強救戦艦」と呼ばれる全長180メートル、翼幅215メートルを持つ飛行型野戦病院な医療航空艦「メデューシン」を母艦として、彼女たちは非武装の6輪野戦救急車で戦場を駆けめぐります。
もっとも、華々しい活躍ではなく、投入される戦場の全てでアルテ達は「戦場の現実」という地獄を見ていくことになりますが。
彼女たちの属する国フレナーダ民権国は、ココン協治国に侵略戦争を仕掛けたものの、15年にも及ぶゲリラ戦に引きずりこまれ、国力は消耗するばかり。
自国内では情報統制を行い「勝っている」と報道を続けるも、実際には前線では敗退を続け、周りの周辺諸国とも戦争直前という、まさに太平洋戦争直前の日本のような状況です。
既に前線では、ゲリラから正規軍に進化した敵にただただ押されている状況で、条約で攻撃が表向きは禁止されている病院船扱いの「メデューシン」を盾にして、作戦を行わざるを得なくなっているのも、末期の日本軍そのままですね。
上巻の最後からすると、下巻では、どうも史実独ソ戦の「東部戦線」的な戦線に「メデューシン」が投入されるようです。
主人公たちの国フレナーダも、さらにせっぱ詰まった状況に追い込まれている状況で、下巻は上巻以上に凄惨な展開になるんでしょうね。