オルガニスト (1999.1.23追加)
山之口洋 新潮社
発行日 1998年12月20日 定価 本体1,200円+税
ISBN4-10-427001-6
時は近未来のドイツ、とある音楽大学のヴァイオリン科の助教授テオドール・ヴェルナーは、音楽雑誌の記者から、ブエノスアイレスのオルガニスト、ハンス・ライニヒの演奏の評価の依頼を受ける。その演奏は数年前、行方不明になった親友のオルガニスト ヨーゼフ・エルンストの演奏の面影があった……
題名の「オルガニスト」というのは、教会などにあるパイプオルガンの奏者のことです。パイプオルガンについての蘊蓄も多数散りばめられていますが、決して嫌みにはなっておらず、作品を引き立てています。
しかし、この作品はジャンル分けに困る作品ですね。他のHPの掲示板で読んだ話では、最初は、最後の1ページが最初の1ページだったそうですが、もしそのままなら、私はこの作品を、「ミステリー」ではなく「SF」に分類していたでしょう。
もっとも「ミステリー」というジャンルが”総合エンターテイメント”と化している現在、どんな作品も「ミステリー」と呼べますし、ジャンル分け自体は、本の価値に何の影響も与えませんが、人間というのは、良いに付け悪いに付け「区別」をする生き物ですから、少し不安になりました(^^;;。
ただ、SF的な描写のせいで、普段それほど、こちらの系統の本を読まない人たちにも受け入れやすい本かと思います。
凄く感動的なストーリーでしたが、作中の、
「《感動》などという言葉を不用意に使ってはいけない。人間の感動の構造は実に単純なのだから。感動を至上の目的とするものは真の芸術家ではありえない」
という言葉に敬意を表して、”美しいストーリー”だと言い換えさせて頂きます。
あと、ネタバレ編はこちらです。