保存食品開発物語

 著者 スー・シェパード 訳 赤根洋子  文春文庫

 初版発行 2001年11月10日  定価 本体800円+税

 ISBN4-16-765115-7


 乾燥食品、塩漬け、発酵食品、薫製、濃縮食品、瓶詰め、缶詰などの保存食品について、その歴史と、人々の生活に及ぼした影響を描いている本です。

 この本の特色として、普通はこういう食物について書かれた書物では、食物を美味しそうに描写してあって、読むと食欲が湧いてくるものですが、この本の場合、保存食品にならざるを得なかった経緯や、昔のかなり無茶な保存食品の造り方等が如何にも不味そうに書かれているので、かえって食欲が無くなるという珍しい食べ物本だったりします。

 この本を読んでいると、本当に食品保存技術の発達した現代に産まれて良かったと思えてきますね。

 あと、保存技術や栄養学の発展によって、食生活も改善されていくのですが、色々な迷信や新技術への不信から、その普及が遅れる例も多々挙げられています。

 例えば、壊血病に苦しんでいたイギリス海軍に、腐りかけた塩漬けの肉やウジ虫だらけのビスケットだけではなく、ザウアークラウトやライムジュースなどの食品を取り入れようとした時の反対派のコメントが以下のようなものです。 

「イギリス水兵は極端に保守的であるから、その食生活を変更ないし改善するためのいかなる努力も不可能である」

「わが国の水兵の牛肉・豚肉に対する偏愛は著しく、彼らは伝統的な食生活からほんの少しでも引き離されるくらいなら、むしろ熱射病や壊血病にかかる危険を冒すであろう」

 ……何もそこまで言わなくても(笑)

 もちろん、こういう事を言っているのは水兵とはかけ離れた食生活が出来る海軍士官の方々であることは言うまでもありませんが。

 それと、書かれたのがイギリスなこともあり、第一次及び第二次世界大戦でイギリスがドイツのUボートにより、海上封鎖を受けた結果の食生活の変化とかも書かれていて興味深いです。

 全般的に、「食物を保存する」という観点からの食物史として、かなり面白く読めました。登場する料理は全然美味しそうじゃありませんが。

 

 

ノンフィクションな本のコーナーに戻る

トップに戻る