ヒトラーの呪縛  (2000.7.30 追加)

 佐藤卓己/編 日本ナチ・カルチャー研究会 飛鳥新社

 初版発行 2000年7月25日  定価 本体2,200円+税

 ISBN4-87031-429-0


 いきなり、最初のカバーの言葉が、

「日本(ヤマト)の諸君、

我が第三帝国は記憶との戦争に

勝利したのだ」

という、「宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統の台詞をパロった文句から始まります。

 この本は、現在の文化に、いかにナチスドイツが影響を与えているかを書いた本です。

 構成としては、以下のようになっています。さらにそれぞれの章末に、その業界を代表する人物へのアンケートが掲載されています。このインタビューもかなり面白いです。

 

第1章「ジャーナリズム」

 マスコミの報道で、「悪」とレッテルの貼られたモノについて「ヒトラー」「ナチス的」という言葉が使われるか等を特集しています。

 確かに、ちょっと悪いことをしただけで、世界中から「ヒトラー」というレッテルを貼られるのが、今の世の中ですからね。

第2章「ミリタリー&プラモデル」

 現在のミリタリー&プラモデル業界では、アニメものを除けば、完全にナチスドイツものが幅を利かせていて、その他の国は大した扱いを受けていません。それについて書かれた章です。

第3章「海外冒険小説」

 海外冒険小説では「鷲は舞い降りた」などのように、ナチスを敵として扱った小説について特集している章です。

第4章「コミック&アニメ」

 「宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統など、アニメやコミックに出てくるナチスドイツ的なものを紹介している章です。

 当然、「ドイツの科学は世界一イイイ〜」などと叫ぶ「ジョジョの奇妙な冒険」第2部に出てくるシェトロハイム少佐などもしっかり出てきます(笑)

第5章「映画」

 こちらは「シンドラーのリスト」を初めとして、様々なナチスを扱った映画と、その歴史等について扱った章です。

第6章「パンク・ミュージック」

 パンクミュージシャンに、ハーケンクロイツなどのナチスのイメージを付けるのが多いのは、何故かを検証してます。

第7章「オカルト&フリーメイソン」

 どっちかというと、矢追純一のUFO本などの「トンデモ」オカルト本でナチスドイツがどういう扱いを受けているか、を書いた章です。

 確かに、ここまで持ち上げて書かれると、ナチスドイツに格好良さすら感じますね(笑)

第8章「純文学&中間小説」

 こちらは、三島由紀夫などの一般文芸小説など、いわゆる日本の一般的な世間から「普通」の小説と見なされる小説での、ナチスの影響を取り上げています。

第9章「架空戦記」

 現在、日本に出回っている架空戦記をドイツ参謀本部、から「銀河英雄伝説」、檜山良昭などを通して、その他の架空戦記へと話を進めていている章です。

 確かに架空戦記には、日米対決よりも日独対決を主にしたのが数多くありますからねえ。

 しかし、この章を書いた人凄いです。日独対決ということで荒巻義雄の「紺碧の艦隊」ばかりではなく、志茂田景樹とか谷恒生とかのトンデモ架空戦記を冷静に紹介しているのにはかなりのものです。私の経験上、ああいう人たちの作品について書くのって、かなり(笑)難しいですよ。

 その他青山智樹や佐藤大輔とかの作品も取り上げられており、最後に取り上げられているのがマイソフさんのHPの「なにわの総統一代記」ですからね。かなり架空戦記を読み込んでいることは確かでしょう。

 架空戦記は、国粋主義と捉えられることが多いが、作者の方も読者の方も大してとらわれていないとも書いていますし、よく判ってはいる人だとは思います。

 あと、章末のインタビューは、「軍装ショップ「クラウゼ」主催」の山下英一郎氏で、

「ちゃんとした知識の無い奴ほど、SSに憧れる」

とか、身も蓋もない発言があったり、

「コミケでナチスのコスプレが禁止になった理由として、某大使館から抗議があったというのはデマだ」

とか、かなり濃い発言が書かれてました。もっとも、他の章でのインタビューでも、かなり濃い発言が飛び交ってますけど。

第10章「インターネット」

 インターネット上でのナチス関係のHPについて紹介してます。

 ウチと相互リンクしているところでは、桜樹ルイ16世虎の穴や、まけらいおんのホームページくりこまあいらんどとかが紹介されてますね。桜樹ルイ16世さんのところと、まけらいおんさんのところは名前が間違ってましたが(笑)

巻末 ナチカル資料編

 巻末の資料ページで、各章に関係したナチスドイツものの書物やプラモデル、映画、ゲーム、関連HPなどの著作物を簡単なデータ及びあらすじなどの紹介付きで、列挙してます。

 よくぞ、ここまで多数の作品をまとめましたね。ちょっと見ただけでも、明らかに変なのが混じっていて、それを見るだけでも楽しいです。

 

 しかし、思ったんですけど、この「日本ナチ・カルチャー研究会」って、コンピューターゲームに強い人間がいないんじゃないでしょうか?

 巻末のナチカル資料編で、電脳ゲーム編はかなり少なくて、「え、これだけ」て思いましたし。

 シミュレーションゲームや、「東京魔人学園」等の新しいRPGは押さえてますが、いくらなんでも「ファイナルファンタジー7」で敵の神羅カンパニーが、ナチスをモデルにしているというのは、私的にかなり無理が感じました(笑)

 そもそも、RPGとかで悪の組織がナチスをモデルにしている悪の組織って、それなりにありそうな気がしますけどね。

 これが18禁になると、「密猟区」なんてナチスドイツぽい軍隊の敗残兵が鬼畜なことをしまくる代物があったり、その他、ミリタリーネタが爆発しているのなんて、たいして珍しくは無いのですが。

 あとは、最近の富士見ファンタジア文庫や電撃文庫などのライトノベル系統に関しても薄いですね。こちらだって「都市シリーズ」などが、簡単に思いつきます。

 あれ、他にもよく考えてみるとコミックとか映画でも結構抜けていて、他にも色々とありそうです。

 労作なナチカル資料リストですけど、まだまだ入れるものはたくさんありそうです。もっとも、その事実こそがこの本で書いているとおり、いかにナチスのイメージが日本で浸透しているかを示しているのですけど。

 あと、「あとがき」がもの凄く真面目に書かれていて、完全に趣味で読んでいる私としては、ちょっと肩身の狭い思いを感じてしまったり(笑)

 そう、「あとがき」とかでもそうですが、この書物って、全体的にあくまで「研究書」としての文体及びフォーマットで書かれているんで、人によっては読みにくいことこの上ないと思います。なんで、そんなに仰々しく書くかなあ、と思うときもありますし。

 まあ、ここまでまとめた類義の書物も存在しないと思いますので、全般的には「買い」だと思いますよ。実際、よくぞここまでまとめたモノです。 

 ちなみに、この本をまとめた日本ナチ・カルチャー研究会のHPはこちらです。

 

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