後の多くのミュージシャンに影響を与えた伝説のブルーズマン、ロバート・ジョンソンという人を描いた漫画。ですが伝記等ではなく、「十字路で悪魔に魂を売る換わりにテクニックが向上する」というクロスロード伝説等をモチーフにしたフィクションであるようです。
僕はブルーズというか音楽全般にうといのですが、外装全体が塗装されている凝った装丁が目を引いたのと、オビを見てロバート・ジョンソンていう人はなんかすごそうだなと興味を持ったので、なんとなく軽い気持ちで購入しました。結果として買ってよかったと思います。ブルーズに詳しい人であればより楽しめるのでしょうが、それ以上に、基本的な漫画としてのクオリティが異様に高い作品です。
作者は「アゴなしゲンとオレ物語」というギャグ漫画が代表作らしく、現在も平行して連載しているようです。そちらは未読ですが、ギャグ漫画を描いているということを意外に感じました。というのも、本作「俺と悪魔のブルーズ」では、ギャグ漫画とは180度方向性の違う迫力と狂気が上手すぎる作画によって表現されているからです。
主人公のRJはブルーズマンに憧れながらも農夫として働いている。ブルーズの腕前は未熟なRJは、クロスロード伝説を聞いて十字路に向かう。そこで何者かにであったことをきっかけにRJのブルーズの腕前は・・・。といった導入部からこの漫画は始まります。そして、異常な程のブルーズの腕前を身に付けたRJの演奏シーンに続くのですが、この演奏シーンの迫力はものすごい。
未熟だった頃のRJの演奏シーンと、敢えてスタンバイのシーンのコマ割りと構図をまったく同じにして、その後に始まる演奏の違いを強調するといった演出や、RJの指が増えて伸びたかのように描くという漫画的な画面等、作者の工夫が見事にはまっていて光ります。漫画で音楽を表現するのは難しいと思いますが、作者の高い画力によって、「悪魔に魂を売ったかのような演奏」が漫画でしか描けない表現として描かれていると思います。
と演奏シーンは本当に素晴らしいのですが、1巻の終わりで「ボニーとクライド」のクライドとRJが出会い、行動を共にしていくという意外な展開に移行し、音楽よりバイオレンスが目立った話がしばらく続くので、音楽に関する話だけを期待していた読者は少し肩透かしをくらうかもしれません。個人的にはバイオレンスな展開は好みなので良かったですが。
そういった展開の中で、RJが出会った悪魔のような者が、”リンチ(この漫画でいうリンチは公開処刑みたいなもののようです)とブルーズが似てる”というシーンがあります。RJの異様な演奏の中にある狂気、暴力シーンにおける狂気、どちらも共通して圧倒的な迫力で描写されています。作者は一貫して狂気というものをこの作品で描きたいのかもしれません。
最新の4巻はRJが久しぶりの演奏を始めそうなところで終わります。バイオレンスな展開もいいですが、やっぱり1巻にあったような圧倒的な演奏シーンをまた見てみたい。5巻が楽しみです。
余談ですが、この単行本の定価は悪魔の数字(666円)になっています。装丁と合わせてかなりこだわっていますが、こういうことも作品にかなり自信がなければ出来ないのかなという気がします。
