浅野いにお

作者紹介
作品に、短編形式の「素晴らしい世界」、「ひかりのまち」、
長編形式の「ソラニン」、「虹ヶ原ホログラフ」があります。
現在ヤングサンデーで「おやすみプンプン」連載中。

おやすみプンプン

作者
浅野いにお
ジャンル
人間ドラマ
掲載誌
ヤングサンデー
出版社
小学館
刊行
1巻〜
オススメ度
★★★★★
おやすみプンプン 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)
感想とレビュー(2007/08/26作成)
まったく新しい表現法で描かれる、
前代未聞の面白さ!!
比類無き衝撃のシュール×リアリズム
悲喜劇、開幕!!


と1巻のオビに書いてありました。

なにが新しくてシュールなのかといえば、第一には、主人公のビジュアルです。作者の画力はかなり高くなっていて、人物も背景もリアルに描かれているのですが、主人公のプンプンとその身内だけは、鳥に布を被せた様な容姿で、しかも子供のらくがきのような絵で描かれているのです。

プンプンがそういう生き物なのか、漫画の表現としてそういうビジュアルで描かれているだけで、実際は普通の人間と変わらない容姿をしているのかは分かりませんが、とりあえず普通に学校に通っていて、普通の生徒として扱われています。

主人公のビジュアルをそういうふうにしたことが、深い意味を持っていたり、今後の展開への複線になっていたりするのかどうかは分かりません。でも、現実の世界の中を、らくがきの絵が歩いているような絵的なミスマッチ感や、らくがき絵のプンプンが怖がったり、興奮したりと感情表現している様子は、見ていて面白いと思いました。

物語は、プンプンが、転校して来た愛子ちゃんに一目惚れする所から始まり、プンプンと愛子ちゃんの恋を中心に進みます。

愛子ちゃんはとても可愛いのですが、家庭環境によってか、プンプンへの執着心だとか、ある種の怖さが垣間見えて、ただの可愛いヒロインで終わってない所が面白いと思います。プンプンや愛子ちゃんの家庭環境であったり、重く、暗い設定や展開も随所にあるのですが、全編を通して明るいトーンで描かれていて、変なキャラも多く、この漫画はギャグ漫画に近いかもしれません。作者の今までの作品には無かったような感じです。

プンプンのビジュアル以外にも、もじゃもじゃ頭にメガネのおっさんの写真をそのまま貼り付けたような、プンプンの頭の中に存在する神様だとか、プンプンと愛子ちゃんが、わりと深刻な話をしている背景に、意味も無くアフロの黒人が写り続けていたりだとか、シュールな表現が多いです。

また、情緒が不安定すぎる担任だとか、無意味に奇声を発する校長と教頭だとか、ハイテンションで突き抜けたギャグも多いです。

読み始めは、「何だこれ!」と思いましたが、読み進めていく内に、だんだんなんともいえない不思議な面白さを感じるようになって、その世界観にはまっていました。今後の展開によっては、作者の作品の中で、1番好きな作品になるかもしれません。

シュールな表現も多いですが、ストーリー自体は難解ではなく、虹ヶ原ホログラフなんかと比べれば、普通に楽しめると思います。2巻が楽しみです。



コミックス感想(日記内)

虹ヶ原ホログラフ

作者
浅野いにお
ジャンル
人間ドラマ
掲載誌
Quick Japan
出版社
太田出版
刊行
全1巻
オススメ度
★★★☆☆
虹ヶ原 ホログラフ
感想とレビュー(2007/08/26作成)
暗くて、じめじめとしていて、謎めいていて、救いのないような雰囲気の漫画でした。僕は、こういう雰囲気の漫画が結構好きなので、QJ本誌でところどころ立ち読みしていた頃は、「なんか謎めいていてよく分からないけど、雰囲気のある漫画だなあ。早く、単行本化されたものを、最初から通して読んでみたいな。」と期待していました。

で、発売された単行本を買って読んだわけですが、謎めいた部分が謎めいたままというか、全編通して読んでも、正直、僕にはなんだかよく分かりませんでした。

ストーリーは、主人公の鈴木が、小学5年生だった11年前と、大人になった現在の話が、交互に描かれます。11年前、鈴木が転校してきたクラスでは、木村有江という生徒が井戸に落ちて意識不明になる、という事件が過去に起きていました。

周囲の環境、有江の事件等によって、心に歪みを持った人達。その歪みを、11年経っても持ちつづけている人達のお話です。

いじめを気にしないことに決めたのに、親という小学生にとっては大きすぎる存在にちくって、いじめを解決しようとしたいじめられっ子に対しては、ぶちぎれてしまう鈴木や、自分の子供に、
「母さんはお父さんに愛されているから平気だけど、あなたはひとりぼっちで可哀想でしょ?だからもっともっと遠い場所で私達やり直そうと思うの。その時はあなたは死んでね。 ...冗談よ。」
なんて言ってしまう母親だとか、登場人物のほとんどが心が歪んでいるように見えます。そういった人達によって、暗いトーンでストーリーは進んで、最後に、少し抽象的な結末を迎えます。

そのストーリーと結末も含めて、漫画全体が一貫して独特の世界観を持っているので、雰囲気のある漫画が好きな人には良いかもしれません。好きな世界観だったので、僕は、ストーリーはよく分からなかったですが、この漫画の雰囲気は楽しめました。

ジャンプ漫画のように、明るく楽しい雰囲気で、物語の最後には明確なオチがつく漫画とは、真逆の漫画です。

ソラニン

作者
浅野いにお
ジャンル
人間ドラマ
掲載誌
ヤングサンデー
出版社
小学館
刊行
全2巻
オススメ度
★★★★★
ソラニン 1 (1)
感想とレビュー
作者初の長編。
大学を卒業したあとフリーターをしている種田と、同棲中の恋人芽衣子さんが主人公です。

種田は、大学時代に音楽サークルでバンドを組んでいて、卒業した後もそのメンバーと
スタジオで練習していたりするんだけど、芽衣子さんの後押しもあって、一度だけ音楽に
本気になってみるというお話です。

作者は確か連載当時、24〜5歳位の人だったと思うので、主人公の種田と同じ位の年齢ですね。
だから、「何か新しいことをやるにしても、もうそんなにチャンスはないぞ。」
と思ってしまう20代半ばの人達の気持ちが良く分かるんだと思います。
キャラクターの心理描写がとても良いです。

僕も今25歳で、社会人として働いているのですが、今の仕事があまり好きでなくて、
何か違うことをやりたいなとか思いながら働いています。
なので、フリーターという現状に満足できない種田に、共感してしまうんです。

結局音楽の道で成功できなくても、種田には、何か希望みたいなものを見せて欲しいなと
思っていました。

「・・・逆らってみるかぁ。流れに。」
「・・・でももう次は無いぞ、俺。」

と種田が覚悟を決めるシーンが、好きです。

ネタバレになりますが・・・




でも、交通事故で死んじゃうんですよね。種田。
こんな展開にしなくても...とその時は思いました。

でも最後まで読んでみると、これはこれで良かったのかな、と。
種田の日記とか、お父さんの話とかのエピソードが良いです。
ああ、種田も成長していたんだ、答えがちょっと見えていたんだと思えるところが。

2巻にあるライブシーンはすごすぎです。「素晴らしい世界」のときから比べて、画力が
格段に上がっていて圧倒されます。
ライブシーンをもっと多く見たかったです。

この作者の短編が好きで、長編はどうかな?と連載前は思っていましたが、
名作だと思います。

素晴らしい世界

作者
浅野いにお
ジャンル
人間ドラマ
掲載誌
サンデーGX
出版社
小学館
刊行
全2巻
オススメ度
★★★★★
素晴らしい世界 (1)
感想とレビュー
昔、大宮のロフトにある本屋さんで、この本がオススメのコーナーにありました。
表紙が気になって買ってみたら大正解でした。面白いです。
この本と作者に出会わせてくれた、大宮ロフトの店員さんに感謝です。

1話完結の読み切り形式で、色んなキャラが出てきますが基本的にだめ人間ばかりです。
彼らが大きく成長して成功を収める。というようなことにはなりません。

結局、状況はなにも変わらないんだけど前を向いて生きれるようになった。
というような話が多いです。劇的な変化はないけどそれがいいんですよね。
ほっとするような読後感が味わえます。

こういう1話完結の短編形式での連載ってめずらしいですよね。

漫画家と出版社がお金を稼ぐには、連載を長続きさせないといけないからだと思いますが、
一般的に連載漫画には、話を引き伸ばす性質があると思います。

短編形式の連載は、そういう性質に逆らっていると思うんですよ。
1話ごとに、ちゃんとオチのあるストーリーを考えていたら、いくら月刊連載でも
ネタがなくなってくるでしょうし、連載を長続きさせにくいと思います。
出版社も普通は嫌がるんじゃないですかね。

この漫画も実際に2巻で完結しています。
ですがその分、1話1話のレベルが高いです。後半は息切れしている感じがしなくもないのですが、
個人的に、1巻のクォリティーはものすごいと思います。
こういう面白い短編漫画が出版されて本当に良かったと思っています。

個々の話では「シロップ」っていう話が一番好きです。
シロップ死んじゃってるのに、何でこんなさわやかなの?っていう感じで。
「ひかりのまち」の重い感じより、こういうトーンの話のほうが好きです。

ひかりのまち

作者
浅野いにお
ジャンル
人間ドラマ
掲載誌
サンデーGX
出版社
小学館
刊行
全1巻
オススメ度
★★★★☆
ひかりのまち
感想とレビュー
「素晴らしい世界」に続いてサンデーGXに連載された短編作品
前作に比べて重いトーンの話があったりします。

この作者の特徴としてセリフがちょっとくさいというかかっこつけている、
というのがあると思うんですが、僕は結構そういうのが大丈夫で、
むしろそういう部分が好きです。

そんな僕でも、読んでて恥ずかしくなってくる場面とかがこの本にはあったりして、
全体的に「素晴らしい世界」に比べて少し劣るような気がします。

でも、やっぱりこの作者のセンスが好きなんだなと思える良いシーンも多いです。

「キラキラ星はどこへいく」という話の回想シーンでの会話に、主人公の心の声を
重ねていく部分とか好きです。

『昔の俺はさぁ、未来はもっとキラキラしてるもんと思ってたんよ。
 だのにいつの間にか大人になっちまってたのなー』
(・・・ホントだね。)

という部分とか。