甲斐谷忍

現在感想とレビューを掲載している作品

・LIAR GAME ライアーゲーム

・ONE OUTS ワンナウツ

作者
甲斐谷忍
ジャンル
ギャンブル
掲載誌
ヤングジャンプ
出版社
集英社
刊行
1〜5巻
オススメ度
★★★★☆
LIAR GAME 1 (1) (ヤングジャンプコミックス)
感想とレビュー(2007/09/15作成)
LIAR GAMEという大金を賭けた騙し合いのゲームを描いた漫画です。

ヒロインの神崎直は、LIAR GAMEに参加させられ1億円を奪い取られそうになった時に、主人公で元詐欺師の秋山深一に助けを求め、それをきっかけに2人がLIAR GAMEに巻き込まれていくとうお話。

同じヤングジャンプに掲載されている「嘘喰い」が、ギャンブルが主題でありながら、アクションシーン等も多い総合的なエンターテイメント作品のようであるのに対して、この「LIAR GAME」は純粋に、勝負事における駆け引きの面白さを楽しむ正統派の作品になっていると思います。

また、ギャンブル漫画の代表作「カイジ」と比べると、カイジがギャンブルの内容だけでなく、それを通して語られる、魅力的なキャラ達からの、人生訓、真理とも言えるような熱く心に響くセリフの数々が魅力になっているのに対して、LIAR GAMEのキャラはあっさりしているというか記号的にも見えますが、それがマイナスなのではなく、作者が意図的にキャラの個性を抑え、本当にゲーム内容だけを純粋に読者に楽しませようとしている感があります。

それだけに本作のメインであるゲームは、表のルールの裏にある真の意図、窮地からのどんでん返し等、勝負事の醍醐味を含みながら、矛盾なく極めて論理的に展開されていく完成度の高いものになっています。

以下ゲームごとの感想を書きます。

■1回戦 
主なルール
・参加者は始めに一億円渡され、指定の対戦相手と1対1でこれを奪い合う。
・30日後にLIAR GAME事務局が回収に来た時持ち金の多いほうが勝ち。
・勝者には敗者から奪った金額が賞金として与えられ、敗者は奪われた額を借金としてLIAR GAME事務局に返済しなければならない。


この回はバカ正直なヒロイン神崎直と、心理学に精通している元詐欺師で主人公の秋山深一の紹介も兼ねた導入部分ということもあり、認知的不協和状態など、心理学的な説明が興味深かったりもしますが、ゲームとしては可もなく不可もなくといった印象。結末も読み易かった。この後に続く少数決が神懸かっていて面白い。


■2回戦 少数決ゲーム
主なルール
・参加者は始めに1億円渡される。
・その場に集まった参加者全員でYESかNOで答えられるお題に対して投票を行う。
・投票の結果多数派になった方はその場に一億円置いて敗退し、少数派の方は勝ち残る。これを少数派が1〜2人になるまで繰り返し、最終的な勝者が場にある金から自分の1億円を引いた額を得る。
・お題が出されてから投票までの時間は6時間。



このゲーム、ルールだけみれば完全に運任せの単純な勝負に見えますが、投票まで6時間も時間があることなどから示唆されるように、誰かと協力したり、またその相手を騙したりと、参加者がお互いに接触することが前提で、個人で運に任せて勝負しても絶対に勝てないという裏の意図があります。

秋山達は、ゲームの始めにこのゲームの必勝法を見つけ実行しますが、完璧に思われた必勝法が破綻し、そこから2転3転する騙し合いが繰り広げられる展開には、驚かされました。勝負を決める投票における演出と裏を掻く結末は最高の出来。


■敗者復活戦 リストラゲーム
主なルール
・参加者は始めに1億円渡される。
・その場に集まった全員で、1時間に1回、5個の記名欄がある投票用紙に3回戦に進ませてあげたい人の名前を書いて投票する。
・投票用紙には同一の人物を一度に複数回書いても良い。投票の結果はその都度中間発表として知らされる。
・開始時Mチケットというものが配られる。Mチケットに契約内容と取引額を書き込んで、ゲーム中に参加者同士なんでも売買してよい。
・10回の投票の後で最も獲得票の少ない者が敗者となり、敗者の持っていた1億を勝者で分け合う。



9人の参加者中8人までもが勝ち残り、勝者にも一億円の持ち金に対して1250万円しか入らない、ゲーム性の薄い勝負に見えますが、もちろんそんな簡単に話が運ぶはずがありません。

Mチケットでの契約を利用した騙し合いにより、どうしようもない窮状に追い込まれたり、またそれを覆したりと、波乱の展開が起こり、当初予想もしていなかった1250万円どころではない金額が動いていくことになるその展開は圧巻。

ゲーム終了後に、直が、”LIAR GAMEでは、自分ひとりが儲けようとせずにみんなが結託して最後にお金を分配すれば、誰も損はしないはずだ”という意図の、この漫画のテーマになりそうなことを口にしますが、個人的にはそんなことはどうでも良いです。テーマなんてなくても、これからも完成度の高い面白いゲームを読ませてもらえればそれで満足です。


■3回戦 密輸ゲーム
少し複雑なルールのゲームです。ヤンジャン本誌での連載を立ち読みで追っていたのですが、立ち読みだけでは内容をイマイチ理解できていません。単行本で通して読んでみれば印象も変わるかもしれませんが、単純明快なルールでありながら意表を突いた展開を見せるという、今までのパターンの方が好みです。



コミックス感想(日記内)


作者
甲斐谷忍
ジャンル
野球漫画
掲載誌
ビジネスジャンプ
出版社
集英社
刊行
全19巻
オススメ度
★★★★☆
ONE OUTS 1 (1) (ヤングジャンプコミックス)
感想とレビュー(2007/10/20作成)
スポーツ全般にあまり興味がないのですが、ではなぜこの漫画を買ったかといえば、作者が「この作品は野球版『アカギ』です。」と語っていたらしいと聞いたからです。読んでみればまさにその通りといった感じで、野球の「スポーツ」ではない「勝負事」としての側面が色濃く描かれていて、他とは違う野球漫画といった印象。作者自身も以下のように語っていて、他とは違う物を作ろうという強い意気込みが感じられます。
「あらゆる野球漫画へのアンチテーゼとしてこの作品はつくられています。
1つは、主人公のピッチャーが豪速球を投げないこと。
1つは、努力と根性が必ずしも勝利に結びつくとは限らない事。
そして最も重要なことは、主人公が悪党であること。」(2巻カバーより)
主人公の渡久地は、沖縄での賭け野球で無敗だったピッチャー。弱小球団リカオンズの天才打者、小島は、渡久地と出会い、自分達が優勝する為に必要な何かを感じ、渡久地を球団に引き入れます。渡久地は、球団との契約の際、球団オーナー彩川と、ワンナウトとるごとに+500万円、1失点につき-5000万円、年棒や契約金はなしという、完全出来高制の契約、「ONE OUTS(ワンナウツ)」契約を結びます。このワンナウツ契約で稼ぐ事と、実際の野球の試合を題材にした、高度な心理戦がこの漫画のメインです。

野球における高度な心理戦と聞くと、野球を知らない読者でも分かるのか?と思うかもしれませんが、野球や心理学に関するウンチク、データをもとにした実例等が随所にあり、わかりやすくしようという作者の意図が感じられます。例えば、ワンナウツ契約の選手側の不利を説明するのに、前シーズンの最優秀防御率2.73をとったと仮定して給料支給額を計算してみると、ほぼ±0円になってしまうという例を見せるといった感じで、そういった細かい配慮がうれしい。

この漫画で1番面白かったところは、3,4巻で描かれる、リカオンズ対強豪マリナーズ戦3連戦の3戦目。試合の持つ意味合いが途中からがらりと変わり、異様な試合展開になっていきます。選手も完全には覚えていないような、野球の規則の細部の記述までを用いて繰り広げられる高度な頭脳戦は、他の漫画には絶対にないものですし、1試合に多くのネタが詰め込まれていて密度が濃い。試合自体と、ワンナウツ契約の収支の結果には、双方がからんだ大きなカタルシスがあります。

この漫画全体を通して残念なのは、斬新な漫画であることの宿命か、中〜終盤においてネタ切れ感がでてきて、若干の引き伸ばしも見られるところ。無能だと思われたいじめられっ子の2軍選手が、覚醒して160km/h超の速球を投げるなどの展開は、感動や面白さはありますが、それは作者の言う所の「あらゆる野球漫画」に属する物。この漫画に読者が求めている物とは違うでしょう。球団売却に関する話も蛇足感がある。

とはいえ、トータルで見れば斬新で面白いことに変わりなく、既にあるフォーマットをなぞっただけの漫画等とは、レベルが違う。コアな野球ファンがこの漫画をどう見るのかは分かりませんが、僕のように、「カイジ」「LIAR GAME」等のギャンブル漫画好きにはオススメ。序盤の数刊は間違いなく必読です。

巻末に掲載されてる、顎骨折さんによる本作のパロディー漫画もなにげにポイント高いです。ジャンルとしては「くだらな面白い」といった感じですが、おまけ漫画とあなどっていると吹き出します。