日本橋ヨヲコ

作者紹介
G戦場ヘブンズドアには感動させられました。とにかく熱い青春が描かれていますが、それが暑苦しいだけでなく、ちゃんと面白さに繋がっている感じです。他の作品に極東学園天国、プラスチック解体高、短編集にバシズムがあります。現在(2007/10)イブニングで、少女ファイトを連載中。
現在感想とレビューを掲載している作品

・少女ファイト

・G戦場ヘブンズドア

少女ファイト

作者
日本橋ヨヲコ
ジャンル
バレーボール
掲載誌
イブニング
出版社
講談社
刊行
1〜3巻
オススメ度
★★★☆☆
少女ファイト 1 (1)
感想とレビュー
この作者の「G戦場ヘブンズドア」は、今まで読んだ漫画の中で3本の指に入るくらい好きな漫画です。その面白さは、暗さと熱さで形作られた異様な執念のような物を、キャラクター達が持っていたことにあるように思います。それに比べ本作「少女ファイト」は、主人公、練の持つ熱が弱いような気がして、今の所少し物足りない感があります。

練は2つのトラウマを抱えています。一つは、バレーの天才であった姉の事故死に責任を感じていること。もう一つは、中学校進学の際チームメイトに裏切られた事です。小学校の頃"狂犬"と呼ばれていた練は、バレーで強くなる事、試合に勝つことだけが目的で、チームメイトの気持ちを慮ることができず、その性格と才能の差をチームメイトに疎まれてしまいます。白雲山中学という名門から、その時のレギュラー全員にスカウトが来て全員が面接を受けると約束するのですが、面接会場に現れたのは練だけ。チームメイトは、もう練と一緒にバレーをやりたくないから約束を裏切ったのだと後から聞かされます。姉への後ろめたさと、本気を出したらまた仲間を失うのではないかという恐怖から、練はずっと実力を隠してバレーを続けています。

白雲山中学から高等部への進学という道から離別することになった練が、黒曜谷高校という新天地でバレーを始める2巻から本格的に物語が動き始める感じです。

暗くて重いトラウマを抱えながらそれでもバレーをやめられないという執着や、本性が出そうになるのを必死で抑えるという場面は良いのですが、やはり本気を出したくても出せないという部分に少しもどかしさを感じてしまいます。G戦場では、良い悪い関係なく、キャラクター達が自分の信念に本気で全力を尽くしていてそこが良かった。設定上しかたないのですが本作はそういう部分が少し弱いような気がします。練がトラウマを乗り越え十分に実力を発揮するところを早く見てみたい。それは連載が終わる時になるかもしれませんが。

練以外のキャラクタでは、練の幼なじみのミチルとシゲルという2人の兄弟、練を尊敬していて高校から黒曜谷でバレーを始める小田切等が物語の中心になります。練とシゲルはお互いに好意を寄せていて、弟のミチルも練を想っているが兄に遠慮している。そして、ミチルと小田切が段々仲良くなっていくというのがこの4人の大体の関係。練とシゲルの2人は、ちょっと何考えてるか分からないというか感情移入しにくいところがありますね。G戦場で第一印象がそんな感じだった久美子というキャラは、最終的にとても魅力的なキャラになっていたのでまだどうなるか分かりませんが。

ミチルと小田切の2人は対照的に感情移入しやすいような気がします。作者がそういう風に書いているのかもしれません。この2人はキャラも立っていて魅力的で、特に3巻のラストにあるシーンは良いです。ミチルの独白にある
―小田切 全部わかってるくせにお前は正しい言葉で誰も追い詰めないのな
というセリフのニュアンスというか雰囲気というかが個人的に好きです。

最新の3巻では、練が仲間に裏切られた後も、ただ一人”友達”と呼んでいる、唯隆子というキャラが登場してきて、だけど実はその本性は・・・といった感じで今後の展開が面白くなりそうで楽しみ。

そういえば、G戦場のルミコが練のチームメイトとして出て来ますね。こういうクロスオーバーも好きです。


G戦場ヘブンズドア

作者
日本橋ヨヲコ
ジャンル
人間ドラマ
掲載誌
IKKI
出版社
小学館
刊行
全3巻
オススメ度
★★★★★
G戦場ヘヴンズドア 3 (3)
感想とレビュー
漫画家を目指す新人達を中心に、漫画業界を描いたお話です。

主人公の一人、堺田町蔵は、人気漫画家である坂井大蔵の息子だけど、自分の描く絵にコンプレックスがあり、漫画ではなく小説を書いている。もう一人の主人公、長谷川鉄男は漫画の才能を持ちながら、過去のトラウマが原因でストーリーを書けなくなっている。そういう状況の2人が出会い、原作:町蔵、作画:鉄男で漫画の新人賞を目指す所から物語は始まります。

序盤、雨の中、漫画業界で鉄男と共に戦うことを決意した町蔵が、鉄男にこう言います。
「もしお前がもう一度オレを震えさせてくれるのなら、
この世界で、一緒に汚れてやる。」(1巻p.63,64より)
この名シーンで読者の心を惹きつけてから、だれることなく、最後まで一気に読者を引っ張って行く。そういう強いエネルギーを持った漫画です。

新人賞の後、町蔵と鉄男は個人個人で漫画を描くことになり、本格的に漫画業界に足を踏み入れていくことになります。作中で、漫画業界は、かなり厳しい戦場として描かれていて、漫画に関わる人はみんな、もがき苦しんで、悩んだり傷付いたりしながらも、それでも漫画を作ることに関わろうとしていきます。とにかく、熱くて生々しい彼らの意志が作中に溢れています。

よくわかりませんが、実際には漫画業界というのはそこまで厳しい世界でも無いような気がします。絵が上手いというだけで、漫画家になれている人とかも結構いるような気がしますし、情熱はなくなって小手先で描いても著作がそこそこ売れるベテラン作家とかも多い気がします。

ですが、この漫画の作者は、作中の漫画家像にかなり近い人物なのではないかと想像させられてしまいます。3巻のあとがきで、作者は、”自分には絵の才能は多分ないが、この世のほんの一部の実存と構造がわかる瞬間があって、それを切り落として描かずにはいられなくなる"というようなこと(かなり端折ってますが)を言っています。考え出すのではなく、作りたいものがあってそれを形にしようとする。というのは、物作りのの姿勢として理想的な気がします。この漫画からは作者の"これを描きたい"という情熱が確かに伝わってくるような気がします。

僕は、本当は暑苦しい漫画は好きではないはずなのですが、この漫画は特別でした。熱さが圧倒的でリアルというか、登場人物と作者の本気が伝わってくるような漫画です。何回読んでも、感動させられて、無理矢理やる気まで出させられるような、大好きな漫画です。